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第54話.手掛かりを探して

 俺は組織員たちを率いて船着場に行った。そこには数十の屈強な男たちが並んでいた。俺が近づくと、その中の1人が俺に話しかけてくる。


「レッドさんでいらっしゃいますか?」

「ああ」

「クレイ船長の命令により、今日からレッドさんに協力することになりました」


 彼らはクレイ船長の部下たちだった。約束通り、俺を手伝ってくれるのだ。

 俺は彼らと俺の組織員たちに調査を命令した。怪しい連中、捨てられた建物、用途不明の場所……この周りを隅々まで把握しておきたい。

 もちろんその中に手掛かりがある可能性は低い。だが『その中に手掛かりはない』ということだけでも確認しなければならない。


「デリック、お前は俺についてこい」

「はい」


 デリックは今にも倒れそうなのに弱音一つも吐かず、俺の後ろを歩いた。


「……大丈夫か?」

「はい」


 デリックの声には揺るぎが無かった。これ以上心配するのは、むしろ彼の覚悟に水を差すことだ。俺はもう何も言わないことにした。

 やがて俺たちは港の隅に位置する建物の前で足を止めた。一見ただの捨てられた倉庫に見える建物だった。


「ここは……」


 デリックが目を見開いた。ここは……デリックが俺に教えてくれた、薬物の売人の隠れ家だ。いや、『隠れ家だった』。


「先日、俺と組織員たちがここを襲撃して……中にいたやつらを全部捕まえた」

「そうですか……」

「だがまだ手掛かりが残っているかもしれない。探してみよう」

「はい」


 俺とデリックは壊れた扉を開いて建物に入った。

 内部は暗かったが、高いところの窓から日差しが入ってきて完全に見えないほどではなかった。


「お前はここで……実験を受けたんだろう?」

「はい、あそこの地下室で……」


 デリックは手を伸ばして、地下室への通路を指さした。


「薬物を飲まされたり、持久力と筋力を試されたりしました」

「それで最後は格闘場で戦わされたのか」

「はい」


 なるほど。


「実験を担当したのは誰だった?」

「売人とその手下たちでした」

「そいつらは全部捕まえたけど……その背後にいる『黒幕』については何か知らないのか?」


 デリックはしばらく考えにふけった。


「あ、そう言えば……」

「何か思い出したのか?」

「はい、たった一度だけ……見知らぬ2人が実験に立ち会ったことがありました」


 見知らぬ2人……?


「1人は中年の男でした。体格がよくて、ちょっと偉そうな態度で……長い口髭が印象的でした」

「もう1人は?」

「もう1人は……フードを被っていて顔が見えませんでしたが、普通の体格の男だったはずです」


 体格のいい中年の男と、顔を隠していた男か。


「今考えてみると、その2人は売人に指示をしているような感じでした。もしかしたら実験の黒幕だったのかもしれません」

「その2人について、他に覚えていることはないのか?」

「はい。一度だけ、しかも遠くから見ただけでして……」


 俺は頷いた。


「ありがとう、いろいろ助けになる情報だった」


 俺がそう言うと、デリックの顔が少し明るくなった。

 二人の男……俺はこの情報についてもっと調べるために、売人の隠れ家を出た。


---


 その後、俺はデリックを休ませて1人で歩き……格闘場に向かった。ロベルトに会うためだ。


「レッドさん」


 事務室に入ると、ロベルトが席から立って俺を迎えてくれた。


「ロベルトさん、ちょっと確認したいことがあるんだ」

「何でしょうか」


 俺は単刀直入に話を進めた。


「死んだラズロのことなんだが……」

「はい」

「彼は口髭を生やしていたのか?」

「はい、確かに彼はちょっと長い口髭を生やしていました」

「やっぱりか」


 俺はデリックから聞いた情報をロベルトに話した。


「長い口髭が印象的な、体格のいい中年の男……確かにラズロの特徴と一致しますね」


 ロベルトと俺の視線が交差した。


「つまり、もう1人が……?」

「ああ……わざと顔を隠したまま実験に立ち会ったところ、そしてラズロと対等な関係に見えたところからして……そいつが『黒幕』である可能性が高い」

「そうですね」


 ロベルトが頷いた。


「デリックは『普通の体格の男に見えた』と証言した」

「普通の体格の男……」

「ロベルトさん、『総会』のメンバーの中に……普通の体格の男がたった1人だけいるような気がするんだが」


 俺がそう言うと、ロベルトは目を見開いた。


「まさか……」


 この都市の裏を牛耳っている『総会』の5人の中で……ロベルトは長身、ビットリオは太った体型、クレイ船長は巨漢、ルアンは小柄だ。たった1人……若手のゼロムだけが普通の体格だ。


「もちろんゼロムが『黒幕』だと確定したわけではない。だが……一番怪しいのも事実だ」

「そうですね……」

「ゼロムのことを詳しく調べてほしい。気付かれても構わない」

「分かりました」


 その時だった。ロベルトの部下が事務室に入ってきた。


「ボス、急な知らせです!」

「何事だ?」

「ビットリオさんが……警備隊隊長殺害の容疑者として逮捕されました!」


 俺とロベルトは驚いて、互いを見つめた。

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