第5話.これが……最初の反撃だ
勉強、鍛錬、練習、爺との対決……それだけの日々が流れた。
そしてある春の日のことだった。対決の途中、俺の拳が爺の鋼のような体にかすった。
「ほぉ」
直撃したわけではない。あくまでもかすっただけだ。しかし爺は少し驚いたようだった。
「いいぞ、レッド」
爺が笑顔を見せた。
「もっと強くなれ。私を超えるんだ……!」
言葉と同時に、爺はまるで疾風の如く動いて……俺の全身に無数の打撃を与えた。
「がはっ……!」
俺は一瞬でボロボロになって倒れた。爺はそんな俺に見向きもせず去った。
「……何が『いいぞ』だ。このクソ爺が……」
綺麗な空を見上げながら、俺は苦笑した。別に悪い気持ちではなかった。自分でも……自分が少しは強くなったと実感できるからだ。
必死に頑張って、少し強くなって、少し認められる……それがとても気持ちいい。そう、これが……初めて味わう『充実感』というやつだ。
俺は充実感など感じたことがなかった。その日その日を生き残ることだけで精一杯で、自分を高めることなど想像すらできなかったのだ。しかし爺に会って何もかも変わった。俺自身が歩くべき道が見えてきた。
俺はこれからも強くなる。全身全霊を集中して強くなる。そしていつかは必ず手に入れる。これは単なる望みではなく……確信だ。
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4年という年月が経った。
17歳になった俺は、もう体格なら大人たちを軽く超えていた。そして俺の全身には鋼のような筋肉がついていた。この4年の間、全身全霊を集中して得た成果だ。
変わったのは肉体だけじゃない。俺は鼠の爺の言っていた『知識』という力を手に入れた。格闘技、武器術、戦術と戦略……この王国を破壊するための力を手に入れたのだ。
そして4年ぶりに……俺は町に戻った。
「……ここは相変わらずだな」
フードを被って顔を隠した俺は町の中を歩いた。灰色の風景、虚ろな目をしている大人たち、飢えている子供たち、ゴミ溜め、潰れた教会……ここは俺が小さかった時と何も変わっていない。
「おい、喋ってみろってんだ!」
若い男の声が聞こえてきた。路地裏の方からだ。俺は懐かしい気持ちになってそこに向かった。
「喋れないのか!? このガキ!」
俺は目の前の光景に思わず笑ってしまった。4人の不良たちが一人の子供を囲んで殴っていた。本当に懐かしい光景だ。
「お前らも相変わらずだな」
俺が言うと、不良たちがこっちを振り向いた。
「あ? 何だ、お前?」
その質問に俺はフードを脱ぐことで答えた。
「こいつ……レッド?」
時間が経っても俺の赤い肌はそのままだ。不良たちは早速俺のことを思い出した。
「こいつ、確か変な老人と一緒に住んでいるとか聞いたけど」
「おい、レッド。頭が高いぞ。ちょっとでかくなったからって……」
そいつはそれ以上言えなかった。面倒くさくなった俺の拳がそいつの顔面を強打したからだ。やつは鼻の骨が砕けて、血を流しながら倒れた。二度殴る必要もない。
「こ、この野郎……!」
「面倒くさいからまとめてかかってこい」
俺の挑発に不良たちは一斉に動いた。昔のように俺を囲んでタコ殴りにするつもりだろう。しかし……爺に比べるとこいつらはあまりにも遅くて、あまりにも貧弱だ。
俺はまず一番前のやつの膝を蹴ってやった。そいつは足があり得ない方向に曲がって、悲鳴を上げた。そしてその悲鳴が終わる前に、俺は次のやつのみぞおちを正拳で殴った。するとやつは衝撃でそのまま倒れた。まあ、その痛みは俺もよく知っている。
最後のやつの顔は恐怖に満ちていた。瞬く間に3人の仲間が倒れたんだから当然なことだ。そして当然俺には容赦がない。俺は最後のやつの股間を蹴って、男として生きられない身にしてやった。
「おい、レッド。やりすぎて殺すなよ」
後ろから声が聞こえてきた。いつの間にか鼠の爺が俺の後ろに立っていた。本当に予測不可能な老人だ。
「いくらゴミ共でも、殺したら殺人事件になるぞ」
「分かっている。それに俺も鬼じゃない。ただ二度と歩けないようにしてやるだけだ」
「そりゃ優しいな」
俺は倒れている不良たちに近づいて、やつらの足を一本一本踏みにじった。凄まじい悲鳴が路地裏の中に響き渡り、4人の廃人が作り出された。
「どうだい? 最初の復讐の味は」
「気持ちいい」
俺は笑顔で答えた。しかしその笑顔は長く続かなかった。
「しかし俺は……この程度では満足できない」
「当然だ。お前の本当の復讐の対象はこんなゴミ共ではない」
「分かっている」
「ならさっさと行くぞ。こんなところで時間の無駄遣いをしている暇はない」
「ああ」
俺は廃人共を置き去りにしてその場を去ろうとした。しかしその時、視線を感じた。ついさっきまで不良たちに殴られていた子供が……俺を見上げていた。