表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/601

第5話.これが……最初の反撃だ

 勉強、鍛錬、練習、爺との対決……それだけの日々が流れた。


 そしてある春の日のことだった。対決の途中、俺の拳が爺の鋼のような体にかすった。


「ほぉ」


 直撃したわけではない。あくまでもかすっただけだ。しかし爺は少し驚いたようだった。


「いいぞ、レッド」


 爺が笑顔を見せた。


「もっと強くなれ。私を超えるんだ……!」


 言葉と同時に、爺はまるで疾風の如く動いて……俺の全身に無数の打撃を与えた。


「がはっ……!」


 俺は一瞬でボロボロになって倒れた。爺はそんな俺に見向きもせず去った。


「……何が『いいぞ』だ。このクソ爺が……」


 綺麗な空を見上げながら、俺は苦笑した。別に悪い気持ちではなかった。自分でも……自分が少しは強くなったと実感できるからだ。


 必死に頑張って、少し強くなって、少し認められる……それがとても気持ちいい。そう、これが……初めて味わう『充実感』というやつだ。


 俺は充実感など感じたことがなかった。その日その日を生き残ることだけで精一杯で、自分を高めることなど想像すらできなかったのだ。しかし爺に会って何もかも変わった。俺自身が歩くべき道が見えてきた。


 俺はこれからも強くなる。全身全霊を集中して強くなる。そしていつかは必ず手に入れる。これは単なる望みではなく……確信だ。


---


 4年という年月が経った。


 17歳になった俺は、もう体格なら大人たちを軽く超えていた。そして俺の全身には鋼のような筋肉がついていた。この4年の間、全身全霊を集中して得た成果だ。


 変わったのは肉体だけじゃない。俺は鼠の爺の言っていた『知識』という力を手に入れた。格闘技、武器術、戦術と戦略……この王国を破壊するための力を手に入れたのだ。


 そして4年ぶりに……俺は町に戻った。


「……ここは相変わらずだな」


 フードを被って顔を隠した俺は町の中を歩いた。灰色の風景、虚ろな目をしている大人たち、飢えている子供たち、ゴミ溜め、潰れた教会……ここは俺が小さかった時と何も変わっていない。


「おい、喋ってみろってんだ!」


 若い男の声が聞こえてきた。路地裏の方からだ。俺は懐かしい気持ちになってそこに向かった。


「喋れないのか!? このガキ!」


 俺は目の前の光景に思わず笑ってしまった。4人の不良たちが一人の子供を囲んで殴っていた。本当に懐かしい光景だ。


「お前らも相変わらずだな」


 俺が言うと、不良たちがこっちを振り向いた。


「あ? 何だ、お前?」


 その質問に俺はフードを脱ぐことで答えた。


「こいつ……レッド?」


 時間が経っても俺の赤い肌はそのままだ。不良たちは早速俺のことを思い出した。


「こいつ、確か変な老人と一緒に住んでいるとか聞いたけど」


「おい、レッド。頭が高いぞ。ちょっとでかくなったからって……」


 そいつはそれ以上言えなかった。面倒くさくなった俺の拳がそいつの顔面を強打したからだ。やつは鼻の骨が砕けて、血を流しながら倒れた。二度殴る必要もない。


「こ、この野郎……!」


「面倒くさいからまとめてかかってこい」


 俺の挑発に不良たちは一斉に動いた。昔のように俺を囲んでタコ殴りにするつもりだろう。しかし……爺に比べるとこいつらはあまりにも遅くて、あまりにも貧弱だ。


 俺はまず一番前のやつの膝を蹴ってやった。そいつは足があり得ない方向に曲がって、悲鳴を上げた。そしてその悲鳴が終わる前に、俺は次のやつのみぞおちを正拳で殴った。するとやつは衝撃でそのまま倒れた。まあ、その痛みは俺もよく知っている。


 最後のやつの顔は恐怖に満ちていた。瞬く間に3人の仲間が倒れたんだから当然なことだ。そして当然俺には容赦がない。俺は最後のやつの股間を蹴って、男として生きられない身にしてやった。


「おい、レッド。やりすぎて殺すなよ」


 後ろから声が聞こえてきた。いつの間にか鼠の爺が俺の後ろに立っていた。本当に予測不可能な老人だ。


「いくらゴミ共でも、殺したら殺人事件になるぞ」


「分かっている。それに俺も鬼じゃない。ただ二度と歩けないようにしてやるだけだ」


「そりゃ優しいな」


 俺は倒れている不良たちに近づいて、やつらの足を一本一本踏みにじった。凄まじい悲鳴が路地裏の中に響き渡り、4人の廃人が作り出された。


「どうだい? 最初の復讐の味は」


「気持ちいい」


 俺は笑顔で答えた。しかしその笑顔は長く続かなかった。


「しかし俺は……この程度では満足できない」


「当然だ。お前の本当の復讐の対象はこんなゴミ共ではない」


「分かっている」


「ならさっさと行くぞ。こんなところで時間の無駄遣いをしている暇はない」


「ああ」


 俺は廃人共を置き去りにしてその場を去ろうとした。しかしその時、視線を感じた。ついさっきまで不良たちに殴られていた子供が……俺を見上げていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 不良達に、復讐を成し遂げてしまいましたね……(>_<)!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ