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第43話.これで決まりだな

 険悪な顔をしている、中年の男が部屋に入ってきた。

 俺はその男を知っていた。格闘場の選手たちを脅迫し、そのせいで俺と正面から衝突した犯罪組織のボス……ビットリオだ。


「化け物、お前もいたのか……」


 ビットリオが俺を睨んでくる。


「まあ、いい。もうお前には用がない」


 ビットリオは俺を無視してロベルトに近づいた。


「いきなり何ですか、ビットリオさん。組織員たちまで連れてきて……」

「お前が薬物のことを調べていると聞いた」

「薬物? 何のことでしょうか」

「とぼけるな」


 ビットリオの険悪な顔が更に険悪になる。


「私はこの化け物と戦って以来、お前たちの挙動を調べてきた。弱みを握るためにな」

「それはビットリオさんらしいですね」


 ロベルトが冷たく笑った。


「それで知ったんだ。ロベルト、お前の部下たちが薬物について調べているってことを」


 ビットリオはロベルトの座っている机を拳で叩いた。


「もう忘れたのか? 薬物に関する情報は、まず私に報告しないと許さないぞ」


 俺はビットリオに一歩近づいた。


「おい、ビットリオ。あんたと薬物に何の関係があるんだ?」

「まだ化け物は知らないのか」


 ビットリオが俺を振り向く。


「私には……息子がいたんだ」

「息子?」

「ああ」


 ビットリオは唇を噛んだ。


「私は悪党だが、私の息子は……純粋で正義感の強いやつだった。私のやることにいつも反対して……ある日、家を出てそのまま警備隊になった」


 犯罪組織のボスの息子が警備隊か……。


「しかし昨年、あいつは……遺体となって発見された。薬物による中毒死だった」


 ビットリオはもう一度机を拳で叩いた。


「あいつが薬物なんかに手を出したわけがない。誰かに無理矢理飲まされたに違いない」


 ビットリオの声が少し震えていた。


「私はその時からずっと薬物について調べてきた。そしてついこの間、警備隊隊長のラズロが密かに薬物を流通させているという噂を聞いて……今度こそ息子の復讐ができると思っていた」


 ビットリオがロベルトを睨みつける。


「何か薬物に関する情報を掴んだのなら……今ここで言え。でなければ戦争だぞ」


 ロベルトは俺を見つめた。俺は軽く頷いた。


「……いいでしょう。ビットリオさんとは協力し合えそうですから」


 ロベルトは今まで俺たちが調べてきた情報をビットリオに話した。


「じゃ、やっぱりラズロのやろうが……!」

「そう簡単な話ではありません」


 顔が真っ赤になったビットリオに向かって、ロベルトが冷たく言った。


「今までの情報から推論すれば、ラズロとは別の黒幕がいると見た方が合理的です」

「それなら何を迷っているんだ!?」


 ビットリオが声を上げる。


「ラズロのやろうを拉致して、何もかも白状させればいい!」

「ビットリオさん、流石にそれは……」

「いや、ビットリオの言うことも正しい」


 俺が口を挟んだ。


「俺たちが薬物を調べているってことは、もうすぐラズロの耳にも入る。やつが反撃に出る前に、こちらから先手を打って……一気に撃滅した方がいい」

「流石化け物、戦いを知っているな」


 ビットリオが俺に向かって笑顔を見せた。だがロベルトはまだ迷っているようだった。


「ロベルトさん、俺たちが迷っている間にも……やつらは動いているぞ」

「……分かりました」


 ロベルトが席から立った。


「私も一緒にします。また新たな犠牲者が出る前に……仕留めましょう」


 ロベルトの答えにビットリオの顔が少し明るくなった。


「よし、そうと決まれば今夜実行する」

「何かいい計画でもあるのか?」


 俺が聞くと、ビットリオが「もちろんだ」と答えた。


「ここ最近、ラズロのやろうは毎晩と言ってもいいほど娼館に出入りしている。やつが女に抱き着いている間に襲撃すれば間違いない」

「護衛は?」

「5、6人くらいだ。そいつらを迅速に制圧する必要があるけど……」

「問題ない、俺がやる」


 俺が名乗り出ると、ロベルトとビットリオが頷いた。


「あんたたちは拉致と陽動を担当してくれ」

「分かった」

「分かりました」


 それで大体の計画が決まった。今夜……俺たちは警備隊隊長を拉致するのだ。

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