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第30話.やつらの覚悟に、俺も全身全霊で応えるさ

「全員集まったな」

「はい」


 港の近くで、俺は『俺の組織』の組織員たちを眺めた。副リーダー格のレイモン、巨漢のジョージ、無口なカールトン、活発なゲッリト、気長なエイブ、優しいリック……みんなそれぞれだけど、格闘技への熱意だけは同じだ。


「あれが俺たちの本拠地だ」


 海岸に向かって立っている大きな倉庫……俺たちはそれに近づいた。


「レイモン」

「はい」

「これが鍵だ。開けてみろ」

「はい」


 レイモンは俺から鍵を受け取り、倉庫の扉を開く。


「おお……」


 組織員たちが嘆声を漏らした。倉庫の内部はとても広くて、よく掃除されているし……しかもある程度の家具まで揃っている。これはロベルトに感謝しないとな。


「今日からここがお前たちの居所だ」


 俺は本拠地の中に一歩踏み入りながら言った。


「俺たちはここで一緒に生活して、一緒に鍛錬する」


 みんなの視線が俺に集まる。


「そしてこの都市のどんな組織よりも強くなる。それが俺たちの目標だ」

「はい!」


 みんな口を揃えて答えた。


「レイモンとリックは家族と一緒に住んでいるから、無理しなくていい」

「いいえ」


 レイモンが口を開いた。


「僕もリックも……一緒にします」

「そうか」


 俺はリックを見つめた。リックは真面目な顔で「レイモンさんの言う通りです」と言った。どうやら俺は……彼らの覚悟をなめていたようだ。


「分かった。全員で強くなろう」

「はい!」


 それから俺たちは、本拠地の空間の用途について相談した。基本的に2階は生活空間、1階は訓練場にして、各々の部屋や食堂、用具室などを決めた。


「よし……本格的な引っ越しは明日からになるけど、これで一息ついたな」


 俺はみんなを見つめながら頷いた。


「じゃ、これからお前たちの実力を確認する」

「実力を……? ボスがですか?」


 レイモンが目を丸くして聞いた。


「もちろんだ。レイモンは俺と戦ったことがあるけど、他はまだだからな。鍛錬の計画を立てるためにも、みんな実力を確認する必要がある」


 俺の言葉に全員緊張し始める。


「ジョージから前に出ろ」

「は、はい!」


 巨漢のジョージが急いで前に出る。


「もちろんの話だが、全力でかかってこい。それでなきゃ意味がない」

「はい!」


 俺の組織員たちはみんな強い。それは分かっている。しかし個人の差、癖、長所と短所を把握して適切な指導をするべきだ。だから俺もシェラを教える時とは違って、真面目に戦った。


「次、カールトン。前に出ろ」

「はい」


 俺は1対1の対決を5回繰り返した。やっぱりみんな強い。だが改善の余地がある。


「今日はここまでだ。体を洗って食事しよう」

「はい!」


 俺たちは街の風呂屋で一緒に体を洗って、レストランで食事をしてから別れた。みんな明るい顔だった。俺はそんな彼らの姿を見て、覚悟を新たにした。


---


 俺は鼠の爺とアイリンに、これから組織員たちと一緒に生活すると話した。


「……はあ?」


 爺が眉をひそめた。


「やけに真面目だな、お前」

「ああ」


 俺は頷いた。


「俺を信じてくれたやつらの覚悟に、俺も全身全霊で応えるべきだ」


 爺は俺の顔をじっと見つめた。俺の覚悟を見定めているみたいだ。

 無表情の爺とは違って……アイリンは泣き出しそうな顔だった。俺はそんなアイリンの頭を撫でてやった。


「心配するな、アイリン。組織員たちの鍛錬が一息ついたら……またここで一緒に暮らすさ」

「あう……」


 アイリンの顔が少し明るくなる。


「その言葉、果たして信用できるかな?」


 爺が口を挟む。


「こいつ、都市での生活に慣れてこんなボロ小屋は忘れてしまうかもしれないぞ」

「あうあう!」


 アイリンが怒った顔で俺を睨みつけてくる。『そんなことしたら絶対許さない』という意味だ。


「そんなわけがないじゃないか。いい加減にしろよ、爺」

「へっ、それはどうかな」


 俺はふと思った。たとえ豪華な屋敷で暮らすことになっても、俺の家はこの小さな小屋かもしれないと。

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