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赤き覇王 ~底辺人生の俺だけど、覇王になって女も国も手に入れてやる~  作者: 書く猫
第3章.ただの怒りではなく、それ以上の何かを
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第25話.小さな始まりだが、いつかは……

 交渉の後、ロベルトは俺と格闘場の選手たちに食事をおごってくれた。


「皆さんの活躍を祝うための小さな誠意です。どうか楽しんでください」


 豪華なレストランを貸し切って、豪勢な料理を注文した上での発言だ。流石組織のボスは太っ腹だ。


「レッドさん、ワインも頼みましょうか?」


「いや、俺はジュースでいい」


「なるほど、禁欲的なお方だ」


 ロベルトが頷いた。


 シチューとステーキ、丸焼きとサラダ、ケーキとチョコレート……全部最高の味だ。アイリンもこの場にいればよかった。


「……ロベルトさん」


「何でしょうか」


「このケーキとチョコレート、少し持ち帰ることはできるかな?」


「もちろんです。シェフに頼んで、持ち帰る分を別に用意させましょう」


「ありがとう」


 俺は頷いてから、隣のテーブルに座っている格闘場の選手たちを眺めた。そこまで大怪我をした人もいなく、みんな明るい顔で食事をしている。あの数を相手にしたのに大したもんだ。まあ、俺も人のことは言えないけど。


 食事の後、俺はロベルトから大きな布の袋をもらった。袋の中には紙の箱が入っていた。ケーキとチョコレートだ。俺はロベルトに礼を言って、選手たちの方を振り向いた。


「お前たち」


「はい」


 レイモンが選手たちを代表して答えた。


「話したいことがある。ついてこい」


「はい」


 俺が先に歩くと、レイモンと5人の男たちが俺の後ろについてきた。そして数分後、俺たちは人気のない路地裏についた。


「……まずお前たちに一つ聞きたい」


 俺は選手たちの顔を一つ一つ見つめながら口を開いた。


「何故俺に加勢したんだ?」


 少しの沈黙の後、レイモンが口を開く。


「僕たちは……普段からレッドさんに憧れていました」


「……俺に?」


「はい」


 レイモンが頷く。


「僕たちは生まれも育ちも違いますが、みんな強者に憧れて格闘技を鍛錬してきました。そんな僕たちだからこそ、レッドさんの強さが分かります」


 純粋な力に対する憧れか。分からんでもないな。


「そのレッドさんが、格闘場の選手たちのために裏組織と戦っていると聞いて……僕たちも一緒に戦いたいと思いました」


「なるほど」


 俺はもう1度みんなの顔を見渡した。


「ありがとう。お前たちには本当に助けてもらった」


「いいえ」


「助けてもらった以上、俺にも責任が生じた。いざという時、お前たちを助ける責任が。だから……お前たちと一緒に組織を作りたい」


 俺の言葉に選手たちが驚く。


「その……レッドさん」


 レイモンがみんなを代表して口を開く。


「組織ということは、ロベルト組みたいな組織ですか?」


「いや、裏組織とはちょっと違う。俺たちが一緒に強くなり、一緒に戦うための組織だ」


「一緒に強くなり、一緒に戦うための組織……」


 格闘場の選手たちは戸惑いながらも、期待のこもった目で俺を見つめる。


「レッドさん」


 レイモンがまた口を開いた。


「組織にはボスが必要です。レッドさんが……僕たちのボスになってくれるのですか?」


「そうだな。俺が提案したことだし、俺が責任を取るべきだ」


 俺がそう答えると、選手たちの顔が明るくなる。


「賛成です!」


 レイモンが真っ先に答えると、他の選手たちも賛成の声を上げた。これで決まりだ。


「何しろ、俺たちは犯罪組織のやつらとぶつかったばかりだ。ロベルトと手を組んだから無暗に手を出してくることはないはずだが……それでも行動に注意してくれ」


「分かりました!」


 選手たちが口を揃えて答えた。


「今日は休んで体の回復を優先してくれ。明日格闘場で会おう」


「はい!」


 何か胸が騒いだ。名前も本拠地もないけど……『俺の組織』の誕生の瞬間だったのだ。


---


 俺は格闘場の選手たちと別れて、小屋に戻った。そして鼠の爺に今日の出来事を話した。


「組織ね」


 爺が苦笑する。


「お前、実は権力が欲しいのか?」


「違う」


 俺は首を横に振った。


「俺は人に指示を出すより、直接動く方が性に合う。だが……俺の力を試すいい機会だと思う」


「そうかい」


 俺と爺は、アイリンが幸せな顔でケーキを食べるところを一緒に見つめた。


「爺が言っただろう? 『格闘場で1年以上生き残れ』と。その課題……俺のやり方で完遂する」


「へっ」


 爺が面白そうに笑った。


「……本当になるつもりか、『覇王』に?」


 俺はその質問に答えなかった。だが俺の胸の奥からは……何か熱いものが燃え上がっていた。

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