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第243話.大剣と戦棍

「多数の騎兵隊がこの村に向かってきています!」


 その報告を聞いて、俺とウェンデル公爵は互いの顔を見合わせた。異変が起きたのだ。


「やつらの所属は? 識別できるか?」


 公爵が聞くと、白髪のハーヴィーは「残念ながら、職別できないようです!」と答えた。


「所属不明か……」


 ウェンデル公爵の顔が暗くなる。


 俺の知っている限り、この『スウェントン』の村は一種の中立地帯だ。どの公爵も、まだこの村を勢力圏に取り込んでいない。だからウェンデル公爵はこっそりこの村に来て、俺との秘密会談を行ったわけだ。


 しかし正確すぎるタイミングで所属不明の騎兵隊が現れた。たぶん俺と公爵の命を狙っているんだろう。どこかで情報が漏れているに違いない。


「ウェンデル公爵」


 俺は考え込んでいる公爵を呼んだ。


「早くこの村から出るべきだ。村人たちが戦闘に巻き込まれるかもしれないぜ」


「……そうだな、君の言う通りだ」


 ウェンデル公爵は頷いてから、ハーヴィーを見つめた。


「やつらはどの方向から来ている?」


「東南からです!」


「じゃ、我々は北西に向かう。馬を用意せよ」


「はっ!」


 ハーヴィーが小屋から出ると、ウェンデル公爵は俺の方を振り向く。


「君も一緒に行こう」


「ああ、分かった」


 俺は素直に頷いた。今は公爵と共に行動した方が良さそうだ。


 公爵と一緒に小屋を出てから、俺は急いで村の西に向かった。そこにはトムと白猫、そしてオリバーが俺を待っていた。


「総大将!」


 トムが急ぎ足で俺に近寄る。緊張した空気から、異変を感じ取ったんだろう。


「何かあったんでしょうか!?」


「敵部隊が近づいている」


 俺はそう答えてから、オリバーの方を見つめた。


「オリバーさん」


「はい、領主様!」


「馬車を捨てて村から出る。革袋に大事な物だけ入れて、馬に乗ってくれ」


「かしこまりました!」


 オリバーが素早く馬車の荷台に向かう。


 俺は布に包まれた大剣『リバイブ』を背負い、黒い軍馬ケールに乗った。トムと白猫も各々の武器を持って馬に乗った。


 最後にオリバーが2頭の馬車馬を馬車から外して、手綱を握った。これで準備完了だ。


「『赤い総大将』」


 その直後、重低音の声が俺を呼んだ。ウェンデル公爵だ。彼と彼の部下たちは立派な軍馬に乗って、俺に近づいた。


「準備はできたかね?」


「もちろんだ。早く村から出よう」


 俺とウェンデル公爵は各々の部下たちを連れて、一緒に村を出た。そして北西に向かう道路を走り出した。青空の下で馬の足音が響き渡り……砂埃が巻き上がる。


「総大将!」


 トムが緊迫した声を出した。後方から所属不明の騎兵隊が現れ、こっちに向かって全力疾走し始めたのだ。明らかに俺たちを狙っている。


 俺はちらっと後ろを見て、騎兵隊の数を確認した。約50くらいだ。そんなに大部隊ではないけど……よく訓練された軽騎兵たちだ。


 このまま走っても、いずれ追いつかれるだろう。そう判断した俺は大剣『リバイブ』を手にした。


「トム、白猫。お前たちはオリバーと一緒に道を進め」


 部下たちに命令してから、俺は馬首をめぐらして……後方の敵騎兵隊に向かって突進した。


「ぐおおおお!」


 俺が雄叫びを上げて突進すると、先頭の敵騎兵が驚いた表情を浮かべる。俺はその表情を直視しながら大剣を振るって……やつの体を一瞬で両断した。両断された敵騎兵の体から血が噴出し、周りを真っ赤に染める。


「こいつ……!」


 次の敵騎兵が短槍たんそうで俺を攻撃する。だが俺の大剣が先に届いて、敵の両腕を切断する。敵騎兵は悲鳴も上げずに落馬する。


「うおおおお!」


 俺は次々と敵を斬り捨てた。大剣『リバイブ』の切れ味は恐ろしいほどだ。軽騎兵の革鎧くらいなら、まるで粘土を斬るように切断できる。


「やつを包囲しろ!」


 敵騎兵隊は俺を包囲しようとするが、ケールが速すぎてままならない。俺は前方の敵の首を跳ね飛ばして、包囲網が完成する前に抜け出した。


「おのれぇ!」


 いきなり野太い声が聞こえてきた。これは……ウェンデル公爵の部下、白髪の巨漢『ハーヴィー』の声だ。


 後ろを振り向くと、ハーヴィーが大きな戦棍メイスで敵騎兵の頭を叩き割る光景が見えた。


「ほぉ」


 俺は感嘆した。予想通り、ハーヴィーの武力はケント伯爵やカレンと同格……いや、たぶんそれ以上だ。流石公爵の護衛を任されるほどの強者だ。並大抵の兵士なんて、彼の相手にならない。


「赤い化け物!」


 乱戦の途中、ハーヴィーが大声で俺を呼んだ。


「加勢に来たぞ! 喜べ!」


「へっ」


 俺はつい笑ってしまった。まあ……嫌いではない。


 俺たちは縦横無尽に戦い、殺戮を続けた。俺が大剣で敵を両断すると、ハーヴィーも戦棍で敵の頭を叩き潰す。どっちがもっと多くの敵を殺すか、競争でもしているようだ。


「退却……退却だ!」


 やがて敵騎兵隊は戦意を失い、退却を始める。


「貴様らぁ! 逃げるんじゃない!」


 ハーヴィーは敵を追跡しようとした。しかし俺は彼を制止した。


「敵の後続が来るかもしれない。仲間と合流するのが先だ」


「ワシに指図するな、若造」


 ハーヴィーは無愛想な態度で答えたが、素直に追跡を止める。俺は内心苦笑した。


 俺とハーヴィーは一緒に馬を走らせ、道を進んだ。敵を蹴散らしたのはいいけど……公爵たちと結構離れてしまった。急いで合流しなければならない。

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