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赤き覇王 ~底辺人生の俺だけど、覇王になって女も国も手に入れてやる~  作者: 書く猫
第3章.ただの怒りではなく、それ以上の何かを
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第24話.まずは都市からか

 俺たちはロベルトの格闘場に入った。

 まだ午前だから、格闘場は静かだった。ロベルトはまず医者を呼んで、俺と一緒に戦った選手たちを治療させた。


「レッドさん、これから……」

「分かった」


 俺は選手たちの状態を確認してから、ロベルトと一緒に彼の事務室に向かった。


「……レッドさんの力には本当に感服しました」


 事務室で二人っきりになると、ロベルトが真面目な顔で褒めてくる。


「あの数を相手に正面から叩き潰すとは……もう人間業とは思えません」

「本論に入ってくれ」

「分かりました」


 ロベルトの顔に笑みが浮かぶ。


「……レッドさんは、さっき私が戦いの仲裁に入った理由をご存知でしょうか」

「もう勝負ついたと思ったからだろう?」

「左様です」


 ロベルトが頷く。


「レッドさんは一人でビットリオさんの組織を壊滅状態に追い込みました。誰がどう見てもレッドさんの勝ちです。まあ、ビットリオさんは最後に負け惜しみを言いましたけど……あれは部下たちの前だから空威張りをしただけです」


 ロベルトが苦笑する。


「彼は現実的な人間ですからね。レッドさんと張り合うのは自殺行為だと分かった以上、もう手出ししてこないでしょう。力を示して黙らせる……レッドさんも最初からそれが目的だったんでしょう?」

「ああ、そうだ。ただ……」


 俺は自分の拳を見下ろした。


「あのビットリオというやつの顔に一発入れたかったな」

「それは困りますね。レッドさんに一発殴られたら彼は死んでしまいます。険悪そうな顔しているけど見掛け倒しですからね」


 俺とロベルトは一緒に笑った。


「……レッドさん」

「何だ」

「私と手を組みませんか?」


 やっぱりそう来たか。


「あんたの組織に入れ、ということか?」

「いいえ、流石にそれは無理だと存じています」


 ロベルトが俺を凝視する。


「私はあくまでもレッドさんと対等な関係を築きたいです」

「組織のボスであるあんたが、小屋に住んでいる貧民と対等な関係になりたいと?」

「左様です」


 ロベルトは真面目な顔だった。


「失礼ですが……私は最初、レッドさんがただ怒りで暴力を振るうだけの人だと思っていました。しかしその認識はだんだん変わりました」

「そうかい」

「はい。レッドさんからは……特別な意志が感じられます」


 特別な意志か……。


「ただ暴力を振るうだけの人間は大事を成せない。しかしレッドさんは怒りや暴力以上の何かを……言わば無数の人々を受け入れられる器を持っていらっしゃる。私はそう思っています」

「買いかぶりすぎだな」

「いいえ、私は人を見る目には少し自信がありましてね」


 ロベルトが優雅な笑顔を見せた。


「だからこそぜひレッドさんと手を組みたいと思っています」

「なるほど」


 俺はゆっくりと頷いた。


「あんたは最初からそれが狙いだったんだな」


 俺とロベルトの視線がぶつかった。


「あんたが俺に『10連勝のジンクス』について教えてくれたのは、俺にあのビットリオというやつの組織を潰させるため……そして俺の力を確認するためだったんだろう?」

「……流石です」


 少しの沈黙の後、ロベルトは体の向きを変えて窓の外に視線を投げる。


「私はいつも思っています。この都市にはもう少し安定した秩序が必要だと」

「秩序か」

「その願い……レッドさんが私の傍にいてくれれば、叶えると思いますが」


 ロベルトはいとも真面目な態度だった。


「……まあ、分かった」


 俺は頷いた。


「あんたと組めば、いろいろ便利そうだからな」

「誠にありがとうございます」


 ロベルトの顔が明るくなる。


「それでは一緒に食事でも……」

「待って。その前に、俺と一緒に戦ったやつらのことだけど」

「ご心配要りません。彼らの安全は私が保証します」

「ありがとう」


 そもそも俺がロベルトと組むことにしたのは、あいつらの安全のためだ。ロベルトが後ろにいれば他の組織は動けないだろう。しかしそれだけが理由ではない。

 俺も興味が湧いてきたのだ。犯罪組織が乱立するこの都市を……俺の力で鎮めるかどうか、興味が湧いてきた。

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