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赤き覇王 ~底辺人生の俺だけど、覇王になって女も国も手に入れてやる~  作者: 書く猫
第14章.俺がお前を許さない理由は……
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第119話.勝利への準備は整った

 野戦にて騎兵の破壊力は絶対的だ。よく訓練された騎兵が敵の側背面を襲撃すれば、それだけで戦闘が終わることも少なくない。それに騎兵は機動力において他の追随を許さなく、陽動や遊撃などの任務でも優秀だ。昔の武将の中には『騎兵さえ上手く使えば勝てる』と言った人もいたようだ。


 人間を圧倒する体格の軍馬に馬鎧を装着させ、完全武装した騎兵がそれに乗る。そんな重騎兵が一斉突撃すると、敵歩兵たちはもう神に祈るしかない。


 しかし騎兵にもいくつか短所があり……特に困難な点は、育成に多くの時間とお金がかかるということだ。大事に育ててきた騎兵隊が損傷を受けると、そう簡単には復旧できない。


 前回の戦闘で、ケント伯爵の主力騎兵隊は大打撃を受けた。だからやつは大金を支払って『騎兵中心のシャルシア傭兵団』を雇ったのだ。どうしても俺を野戦で倒したいんだろう。


 つまり今回の戦闘は『如何にしてシャルシア傭兵団の騎兵を阻止できるか』がポイントだ。そのために俺は戦略的撤退をして『騎兵に不利な戦場』を目指した。具体的に言えば、平原の多いケント伯爵領から離れて、山や森に敵を引き込むつもりだった。しかし……撤退の途中、激しい雨が降ってきて考えが変わった。


「豪雨……」


 豪雨は2日も続いた。そして3日目、俺は西への撤退を中止にして北に進軍した。降伏してきたケント伯爵の兵士たちによると、北にはこの近くで1番大きい湖があるらしい。


 広い平原を何時間も進むと、想像していたよりも大きい湖が見えた。しかも豪雨のせいで水位が上がっている。煉瓦の堤防がギリギリ耐えているところだ。もしこの堤防が決壊したら……周りの平原は水没するだろう。


 俺の軍隊は湖から少し離れたところに陣を構えた。後2、3日すれば敵が現れる。それまでに全ての準備を終えなければならない。


---


 湖の近くで陣を構えてから、2日後の朝のことだった。指揮官用の天幕で作戦会議をしていると、偵察兵が入ってきて報告を上げた。


「ずいぶん速いじゃないか」


 偵察兵の報告によると、敵軍がもうすぐ近くまで来ているらしい。このままだと正午には戦闘に入るだろう。


「敵軍は……勝負を急いでいるんでしょうか?」


 傍から副官のトムが疑問を口にした。


「もちろんだ。何しろケント伯爵は大規模の傭兵団を雇っているからな。戦争が長引けば、やつは傭兵の給料で破産するかもしれない」


「なるほど……」


「そうじゃなくても、ケント伯爵は長期戦など選ばない。俺のことを一刻も早く殺したくて仕方ないだろうからな」


 俺の説明に周りのみんなが頷く。


「プライドが傷ついて、冷静さを失っているんですね」


 エミルがそう言った。俺は彼に向かって頷いた。


「その通りだ。やつは自分の武に絶対的な自信があり、周りの人間を見下してきた。しかし俺に敗れてプライドが傷つき……もう憎しみと怒りで盲目になっているはずだ」


「まるでイノシシですね」


 カレンが笑顔で的確な評価を下した。


「よし、作戦開始だ。みんな持ち場に戻って俺の指示を待っていろ。今日はイノシシに……人間の恐ろしさを教える日だ」


 俺の命令にみんな「はっ」と答えて天幕を出る。たった1人……シェラを除いて。


「レッド……」


 シェラが俺を見つめた。その眼差しにはいろんな感情がこもっている。


「シェラ、お前は後方部隊だ。ちゃんと鎧を着て、安全なところにいろ」


「何よ、その父さんみたいな言い方」


 シェラが口を尖らせる。可愛い。


「お前が怪我でもしたら、俺が困るんだ」


「……本当に困る?」


「もちろんだ」


「えへへ」


 シェラは嬉しそうに笑った。


「レッドも怪我しないでね。私が困るから」


「我が軍の中で、俺が怪我するかもしれないと心配するのはたぶんお前だけだ」


「いいじゃん、1人くらいは心配しても」


「まあ、そうだな」


 俺は手を伸ばしてシェラの頭を撫でてから、天幕を出た。

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