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赤き覇王 ~底辺人生の俺だけど、覇王になって女も国も手に入れてやる~  作者: 書く猫
第2章.焦らずに、少しずつ俺のものにする
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第11話.俺の拳で黙らせてやるさ

 俺が『試合場』に一歩入ると、観客たちが野次を飛ばしてきた。


「何だ、あいつ!? 肌が赤いぞ!」


「おい、ここは化け物が出陣してもいいのかよ!」


「気持ち悪いな! 早くくたばれ!」


 俺は鼻で笑った。これくらいの罵倒ならもう聞きなれている。


「皆さん、この試合にご注目ください!」


 試合場の真ん中に立っている男が叫んだ。こいつが試合の進行係なんだろう。


「今まで3戦3勝した『マックス』様に、今日新しく登場した『レッド』様が挑戦します!」


 俺の反対側にはもう一人の男が立っていた。こいつが『マックス』だろう。俺より背は低いが筋肉のついた体をしていて、結構強面の男だ。


「皆さんも噂くらいは聞いたことあるでしょう! そう、このレッド様こそが噂の『赤い肌の少年』です! あの少年がここまで成長したんです!」


 こいつ、余計なこと言いやがって……。


「さあ! この試合、生き延びるのは果たしてどちらでしょうか! 皆さん! 思い切って賭けてください!」


 進行係が言い終えると、人々がまるで狂ったかのように騒ぎ始めた。


「マックスに50だ!」


「赤い野郎に100! いや、200だ!」


「マックスに80!」


 まるで俺自身が商品になった気持ちだ。なるほど、だから『体を売る仕事』なのか。


 ロベルトの部下たちが急ぎ足で動き回って、観客たちから集金した。それが終わるとまた進行係が叫び始める。


「皆さんの熱気に感謝いたします! それじゃ、マックス様とレッド様の試合を開始します!」


 進行係は素早く試合場から抜け出した。もう俺とマックスというやつの戦いを止められるものは何もない。


「マックス、あんなやつは早く殺してしまえ!」


「赤いやろう! お前の方がでかいから先に打って出ろ!」


「殺せ! 殺せ!」


 観客たちが狂ったような歓声を上げた。しかしその狂気じみた空気とは裏腹に、俺とマックスは静かに互いを睨んだ。


 なるほど、このマックスというやつはただの喧嘩好きではない。ちゃんと相手の戦力を見極めて動こうとしている。俺も同じことを考えているから理解できる。


 力なら俺の方が上、素早さならマックスの方が上だ。そしてこの鉄網に囲まれた空間……どんな戦いになるかはもう予想済みだ。


「お前ら、いつまで見つめ合うつもりだ!? 恋にでも落ちたのか!? 早く戦え!」


 観客の煽りと共にマックスが動き出し、俺の頭を狙って拳を振るった。俺は腕を上げてそれを防ぎ、反撃しようとしたけど……もうマックスは俺の距離から離れている。


「いいぞ、マックス! そのまま殴り倒せ!」


 瞬時に接近して攻撃、そして俺が反撃する前に素早く離脱……いわゆる『一撃離脱』だ。マックスは一撃離脱を何度も繰り返し、俺は何度も攻撃を食らった。口の中から血の味がする。この痛み……全て予想通りだ。


「赤いやろう! 何やってんだ! お前も殴れ!」


 焦るな……俺は自分にそう言い聞かせた。ここで焦ってマックスを追いかけたところで、やつの素早さに弄ばれるだけだ。勝つためには……焦らずに待たなければならない。『絶好の機会』を。


「この馬鹿野郎が! 何故反撃しないんだ!?」


 他のやつらがどう吠えたって関係ない。俺は俺のやり方で戦う。俺のやり方で勝つ。


「マックス! マックス!」


 観客たちはもうマックスの勝利を確信していた。いや、観客たちだけではない。マックス本人も勝利を確信して笑っている。しかし……お前の『勝ったと思って油断した時』こそが……俺の『反撃の時』だ!


「あ!?」


 観客たちが驚愕の悲鳴を上げた。マックスが再び一撃を放った瞬間……俺の拳がマックスの顔面を強打した。美しいほどの直撃だ。


 人間は誰でも、頭に衝撃を受けると動きが止まる。もちろんマックスのやつも例外ではない。俺はやつが気を取り戻す前に接近し、もう一度顔面に拳を放った。血が飛び上がり、拳から相手の鼻と顎が砕ける感触がした。


 マックスは無様な姿で地面に倒れた。もう殴る必要もない。早く医者に見せないとマックスの人生はここで終わりだ。


「そんな……」


「マックスが……」


 観客たちは言葉を失った。この静けさ……実に気持ちいい。どれだけ罵倒されようが、どれだけ侮辱されようが……最後は俺が勝つ。俺の拳で黙らせる。


「……よくやったぞ! レッド!」


 観客の一人が叫んだ。それをきっかけに、あちこちで歓声が上がる。


「お前のおかげで大儲けした!」


「素晴らしい戦いだった!」


「かっこよかったよ!」


 ふ……まさかこの俺を褒めるのか。まあ、俺にお金をかけたやつらは嬉しいだろう。俺は観客たちの歓声を後ろにして、試合場から退場した。

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