職人ウル・メイク
感想でのご指摘があり
作者自信も見直したところ書きたかったことと少しずれて表現してしまっていたので
内容を少し変更させていただきました。(7/24)
晩御飯を食べて再びログインする。
さてさて、冒険者ギルドでヤツルギと別れて俺はまた、ベンチに座って居る。
「なんかギルドとベンチを行き来してるだけな気がするな」
自分自身の行動に苦笑しながら、これからの事を考える。
「先ずは空いたスキルの獲得と装備の更新だな」
独り言を呟きながら自分のやりたいことを決めていく。
「どうせなら魔法も1つくらいは覚えたいよなぁ」
そういえばヤツルギも魔法は覚えていなかった。まぁあいつの場合【剣】しかなかったが。
「やっぱり技術巻物で覚えるのかなぁ、よしっ、先ずは装備と巻物探しに出掛けるとしますか」
魔法が使いたい気持ちが強かったので技術巻物を探すことを最優先にする。
「手持ちのお金で足りるかは不安だけどな。まぁ、足りなかったらクエスト受けるしかないよな」
因みに、今の俺の手持ちは基礎クエストのクリア報酬の3,000jのみである。
「確か南の道が商店道だったよな、取り敢えずいってみよう」
俺は、商店道をぶらぶら歩きながら目的の巻物屋を探す。
「おい、兄ちゃん、その服装天生者だね?良い剣が入ってるんだけど見ていかないかい?」
「マジで?それ8振りある?」
「おうよ、打ち立てホヤホヤの試作品だ。丁度8振りで2,400jたぜ?」
「買った、それ、買った!!」
……なんか聞いたことのある声が聞こえたような気がするが、気のせいだなきっと。さらっと試作品とか言ってるし買うやつはバカだよな?うん銀髪なんて見えないぞ。
そんな、一幕もあったが、俺は目的の巻物屋らしきところを見つけた。らしきと言うのは看板に、巻物とオーブの絵が書いてあるだけだからだ。
「ここだよな……多分」
店の前に立っていてもらちが明かないので、入ってみる。
「いらっしゃい、なにか用かい?」
店に入ると、お婆さんのNPCが声をかけてきた。
「技術巻物を探しているんだが、この店でも売ってますか?」
「あぁ、あるよ。むしろこの街ではここしか売ってないよ」
どうやら当たりだったらしい。
「魔法の技術巻物が欲しいんだけど見せてもらっても良いですか?」
「はいよ。ここには【火魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】がおいてるよ。生憎闇と光は無いけどね」
「1ついくらなんですか?」
「魔法の巻物は、作るのに少し手間が掛かるから1つ1,000jだよ」
意外と高いな、所持金の三分の一持ってかれるのか。
「魔法のと言うことは他はもう少し安いんですか?」
「あぁ、【剣】や【斧】何かの装備系は100j、【ATKup】何かの能力上昇系は(小)しかないけど200jだね」
いや魔法高すぎないか?装備系の10倍とかどうなのよ?聞かなきゃよかったな、これは買うのをためらうレベルだ。
「ちょっと思った以上に、魔法の巻物が高いので今日は止めておきます。冷やかしになってしまってすみませんでした」
「あぁ、気にしなさんな、最近は天生者とか言うのが増えて見てくだけの客も増えたからね。元々そんなに繁盛する店でもないから大丈夫だよ」
「ありがとうございます。またお金ができたら来ますね」
「いつでもおいで」
そう言いながら俺は店を後にするのだった。
さて技術巻物を買うことを諦めて店を出た俺は、次に自身の武器となる盾を見て回る事にした。
「あれ?そういえば盾は、武器なのか?それとも防具なのか?」
探し始めようとしてから、そんな疑問が浮かんできた。
巻物店を探している間に、看板に剣や斧が描かれた武器屋や、鎧兜が描かれた防具屋らしき店は数件発見しているが果たして盾はどちらにおいてあるのだろうか?
此についてはゲームによって様々であろう、手に持つものを全て武器とするか、攻撃力=ATKの上がるものを武器とするかで違うし、盾はそもそもアクセサリーだとするゲームもあったはずだ。このSCOにおいて、盾がどの位置に存在しているのか謎である。
「取り敢えずは【万変の枝葉】から剣も盾も作れたから武器屋に行ってみるか」
取り敢えず近くにある剣と斧の描かれた看板の店に入ってみる。
「いらっしゃぁい、ハラスティ武具店にようこそ。何がご入り用ですか?」
店内に入って早々元気の良い青年NPCが声をかけてくる。どうやらここはハラスティ武具店というようである。
「盾を探しているんだけど、ここには置いてますか?」
「盾ですね。御予算はどれくらいでしょうか?」
予算かまぁ初期の武器だからな片方500j位で聞いてみようか。
「1つ500j位で、2つ欲しいんですよだから1000jですね」
「2つで1000jですか……だとするとこのくらいですかね」
そう言って青年がだしてくれたのは3種類の盾だった。
「手に取っていただければ、ステータスが出ますので確認してください」
そう言われて、それぞれの盾を手にする。
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【木目の盾】(耐久100)
すべてが木材でできている盾
その木目は美しいが耐久度は低い
DEF+10
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【革貼りの盾】(耐久150)
何かの革を使って作られた盾
耐久はソコソコだが少し重い
DEF+15 AGL-5
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【鉄の盾】(耐久300)
質の良くない鉄を使った盾
とにかく重い
DEF+30 AGL-40
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この中からなら、【革貼りの盾】なんだうけど、両手でAGL-10はなぁ。
どうしようかと悩んでいると、ふと店内に飾ってある盾に目が止まった。そこには骨を骨格にして革で被っている盾が置いてあった。
「これは?」
手に取った盾のステータスを見る
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【革の骨盾】(耐久200)
骨盾に革を貼り耐久性を上げたもの
ウル・メイクの作品である。
DEF+10
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これだと思った。値段は700jと少し予算オーバーではあるが、俺のステータスとマッチしていると思う。
「店員さん、この【革の骨盾】は1つしかないんですか?」
「はい、そうなんです。それはここに修行に来ている、天生者の人の作品なんですが、生憎と在庫がなくてですね。」
「この盾はもう入る予定はないんですか?」
「本人に聞いてみないとわかりませんね……多分奥に居ると思いますので呼んできましょうか?」
「えっ良いんですか?」
「本人次第ですけどね、少しお待ちください」
そう言って青年は奥へと引っ込んでいった。
5分ほどだろうか、店内を物色しながら待っていると、後ろから声がかけられる。
「あの~、私の盾を購入したいって言うお客様は、貴方ですか?」
「そうで……す」
振り向いて驚いた。そのプレイヤーは、サラサラの黒髪で額に小さな角が生えていた。瞳は快晴の空のように澄んだ蒼色をしている綺麗な人だった。
「あの~どうかされましたか?」
俺が固まっているのが気になったのだろう。小首をかしげて聞いてくる。
「いっいえ、女性の方が作ってたのだなと驚いてしまって」
と、咄嗟に思ってもいない言い訳が口からでる。
「むー、女がやったらいけないなんて規則は無いんですからね」
ほほを膨らませながら、腰に手を当てて怒ってるアピールをする女性、恥ずかしいからそんなに近くに来ないでほしい。
「すみませんでした」
かろうじてその言葉を口にすると、女性はパッと笑顔になる。
「わかれば良いんです。私は鍛治職人……見習いのウル・メイクといいます。貴方は?」
「あぁ俺は冒険者のエージュです」
「で、エージュさんは、私になんのご用だったのですか?」
「んっ?……そうそう、貴女の作った盾を」
「ウルです。」
「へ?」
「私の名前はウルです」
話を遮って笑っていない笑顔で伝えてくる。
「ウル……さんの作った盾を、もう1つ作ってもらえないかと思って呼んでもらったんです」
「そうなんですね。どの盾でしょうか?この店のなかにもそれなりに作らせてもらってるものがあるので」
名前呼びにしたことで、普通の笑顔に戻ったウルさん、自分の作品が誉められていることもあり上機嫌だ。
「この【革の骨盾】なんだけど、もう1つ同じものがほしいんです」
「その子ですか、ハナディウムラビットの素材でできているので、素材を持ち込んでいただければお作りしますよ?」
「本当ですか?どの素材がどれくらい必要ですか?」
興奮で少し前に出つつ聞く。
「はっはい、素材は[ウサギの骨]が8個[ウサギの革]が5個ですね。素材持ち込みでの作成なので、今店売りしているものと合わせて1,000jでいかがでしょう?」
俺の興奮に若干引きつつも答えてくれるウルさん。しかしこれで予算のなかにも収まるし万々歳だ。
「是非お願いしたいです」
俺が言うと頭のなかにアナウンスが流れてくる。
『プレイヤー、ウル・メイクに対してプレイヤークエストを発注しますか?』
プレイヤー間でもクエストが発生するらしい。イエスにすると、今度は俺向けにクエストが飛んでくる。
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〔プレイヤークエスト〕
【革の骨盾】の素材を入手して、【革の骨盾】を作製してください
プレイヤー〔エージュ〕
内容:[ウサギの骨]×8
[ウサギの革]×5の納品
報酬:【革の骨盾】×2
プレイヤー〔ウル・メイク〕
内容:【革の骨盾】の作製
報酬:1,000j
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俺はそのクエストを受注して東平原へと向かうのだった。