ライバル登場!?
さて、基礎クエストも終わって一旦冒険者ギルドを出る。
「次は何をするかなぁ、普通ならクエスト受けるか、装備を整えれる部分だけでも購入するかなんだろうけどなぁ」
そんなことを呟きながら噴水広場のベンチに腰かける。
「それと、なぁんか忘れてるような気がしてならないんだよなぁ。なんだったかなぁ?」
自分の中にある引っ掛かりが気になるが、何が引っ掛かっているのかが思い出せない。
「まぁ、思い出せないってことは大したことじゃないだろぅ、取り敢えず装備の店でも探してみるか」
思い出せないことをぐずぐずと考えても仕方がないと言う結論にいたり、ハナディウムの町の散策にいこうと決心をして立ち上がる。
『PiPiPiPi』
いざ歩きだそうとしたその時、呼び出し音のような音が、脳内に聞こえてくる。
「なんだ?」
足を止めて音の正体を探すと目の前にウィンドウが現れる。
『ユーザーネーム、ヤツルギからフレンドコールが来ています応答なさいますか?』
「思い出したっ!!剣児の事すっかり忘れてた」
多分このヤツルギってやつが剣児なんだろう。俺は慌ててフレンドコールに出る。
「やっと出たか?おいまも……じゃなかった、エージュだったないつまで待たせる気だよ?」
「いやぁすまんすまん、すっかり忘れてたよえーっと、ヤツルギだな」
「いや、すまんじゃねぇから。お前今何処に居るんだ?」
「ハナディウムの噴水広場にいるぞ?」
「わかったそこを動くな、直ぐに向かうからな、因みに外見の特徴があったら教えてくれ、探すのに助かるからな」
外見の特徴か、そういえば俺って白梟だから翼があったよな。
「そうだなぁ、あぁ白い翼の生えたキャラクターだな」
「えっ?翼?まぁいいや、行くから待ってろよな」
そうヤツルギはいって、フレンドコールは切られた。俺は、待ってろと言われたので、さっきまで座っていたベンチにもう一度腰かけて待っていることにする。
暫くすると、銀髪で軽装のキャラクターがこちらに一直線に向かってくる。プレイヤーかどうかは頭上の三角のアイコンの色で判別できる。青がプレイヤー、緑がNPCが基本だ、悪質プレイヤーに運営から認定されるとアイコンが赤くなるらしい。
こっちに向かってくるのは、青いアイコンだからプレイヤーだな、多分ヤツルギだろう。
「お前エージュか?」
「そうだが、お前ヤツルギか?」
「そうだよ、全くマジでいつまで待たせるんだよ。直ぐにフレンドコールしてくれって言っただろ?」
お互いの確認を終えて、ヤツルギもベンチに座ってくる。何が楽しくて同じベンチに男二人で座らないかんのか。そう思いながらも、仕方ないから受け入れる。
「わりぃわりぃ、しっかり忘れてたぜ」
「そんな事だろうとは思ってたけどな。基礎クエストは終わったのか?」
やれやれとオーバーリアクションをしながらも、ある程度予想はしていたようで、ヤツルギは話を続ける。
「あぁ、さっき終わったぞ」
「ってことはスキルクリエイトもやったんだな。少し込み入った話がしたいから、ギルドに行くぞ」
「ギルドに?あぁ会議個室か?」
「そうだよ、スキルの話とかがしたいからな。他にも色々聞きたいことはあるし、時間は大丈夫か?」
まだ夕飯までは時間があるし問題ないだろう
「問題ないよ。行こうか」
俺とヤツルギはベンチから立って、ギルドへと向かっていった。
「ようこそ冒険者ギルドへ、ご用件をお伺いいたします」
受付の人のテンプレートな対応を聞きつつ、ヤツルギが用件を告げる。
「会議個室を使いたいんだが空いている部屋はありますか?」
「会議個室のご利用ですね。しばらくお待ちください」
受付の人が、ささっと書類を確認する。
「6番のお部屋が空いていますのでお使いいただけます。ギルドカードの提示をお願いします」
ヤツルギがカードを提示して手続きを行う。どうやらギルドカードがそのまま鍵になるようだ。防音にオートロック、カードキーとか現代の技術の成せることを簡単にやってのける魔法って便利だなと思ってしまう。
「奥の通路から6番のお部屋にお願いします」
「わかった、ありがとう」
「いえ、退室の際はもう一度カウンターまでお願いします」
「よし、部屋も借りれたし行こうぜエージュ」
「あぁ」
俺達は通路を進み6番個室の中へと入る。ルシードと使った部屋と全く一緒の作りになっていた。まぁ変わっていても困るのだが、これが会議個室のスタンダードなのだろう。
「まぁ色々と言いたいことはあるが、取り敢えず合流できてよかったよ」
部屋に入るなり椅子にドカッと腰を下ろしたヤツルギが告げる。
「そうだな」
俺も空いている椅子に腰かける。
「なぁ、スキル云々の話の前に、お前種族なんなんだよ?天使とか選択肢になかっただろ?」
「ん?天使?違うぞ俺は獣人族だよ、ランダムで選んで白梟が当たってな」
「あっ梟なのねそれ、白い翼といったら天使かと思ったんだが、そういえば、光輪はついてねぇしな」
俺の頭上を見ながらヤツルギが納得する。
「だろ?一応ミラードの話ではレアらしいぞ?」
「ミラード?誰だそれ?」
「ほら、チュートリアルでいた光の玉、あれこの世界の神様なんだと、名前聞いたら教えてくれたよ」
「えっ?まじか、あれ神様だったのか」
「本人が言ってたから多分そうじゃねぇか?」
「うへぇ、俺も名前聞いときゃよかったな、まぁもう過ぎたことだし仕方ないか」
残念そうにはしていたものの、直ぐに切り替えて話を続ける。
「エージュも基礎クエスト終わったってさっき言ってたし、ステータスの見せ合いと行こうぜ」
なんか自信あり気な顔してるから、良いスキルでも作れたんだろうなぁ、自慢したくて仕方ないんだろう。
「やけに自信あり気だな?まぁ見せ合うのは良いけど」
「決まりだなじゃぁせーので行くぞ」
「「せーのっ!!」」
俺達は互いにステータスを可視化状態にする。
先ずは俺のステータス、
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名前:エージュ
種族:獣人族
ランク:F
Lv:1
HP:200
MP:150
ATK:20(+20)
DEF:20
INT:15
MND:15
AGL:45
スキル:【】【】【格闘】【採取】【観察眼】
ミックスキル:【双盾】
常駐スキル:【DAミラー】
称号:【ミラードの祝福】
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次にヤツルギのステータス、
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名前:ヤツルギ
種族:人間族
ランク:F
Lv:1
HP:230
MP:150
ATK:28
DEF:21
INT:15
MND:20
AGL:28(+20)
スキル:【剣】【剣】【剣】【剣】【AGLup(小)】
ミックスキル:【四剣流】
常駐スキル:なし
称号:なし
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「「・・・なんだよこのステータスは!!」」
二人で見せあって同じことを叫んでいた。
「おいエージュATK40とかどうなってんだよ?ってか常駐スキルとか、称号とか、突っ込みどころありすぎるだろ」
「お前こそ、スキルに剣しかないってアホなの?間違い無くアホなの?」
二人でギャーギャーと言いたいことを騒ぎ立てる。
「……よっよし、ヤツルギ、らちが明かないから一旦落ち着こうか」
「……そっそうだな、落ち着いて話をしようじゃないかエージュ君」
数分騒ぎまくった後、急にお互い冷静になり恥ずかしさが込み上げてきた。
「じゃぁ先ずは、俺から説明するよ」
先にヤツルギから説明してくれるようだ。
「俺はな、八刀流を目指してるんだよ、だからその布石だな。うまいこと最初のスキルクリエイトで【四剣流】が出来たからな。もう一回同じように作って、更にその次で掛け合わせるつもりだ。まぁうまくいくかはわからんがな」
因みに【四剣流】の効果はと言うと、
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【四剣流】
最大四振りの剣を装備できるようになる
種族レベルに応じて様々な[技]を繰り出すことができる
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となっていた。ヤツルギが試したところによると、口や足なんかも装備対象だそうだ、使いづらかったらしいがな。
「次は俺の番か」
俺もヤツルギに常駐スキルや称号について話していく。
「やっぱりチュートリアルの光の玉は超重要ファクターだったんだな、失敗したぁ」
俺の話を聞いてがっくりとうなだれるヤツルギ、しめしめざまぁみろ……おっと本音が出てしまった。
「まぁ、納得はしたよ。けどお前、盾と盾って変態だな」
「いや、全ての指の間に、剣を持とうとしてるやつに、言われたくないな」
「それもそうか、お互い変態って事だな」
「いやいや、それで括られたくもないんだが」
変態コンビだぜイエーイ、みたいな感じだ盛り上がられても困る。
「よーし、お互いの確認も終わったしこれからどうするよエージュ?」
「ん?これからか?考えてなかったな」
「俺としては、お前とはライバルでありたいと思ってるから別々に行動することを希望する」
「ライバルか……良いぜ、じゃぁここを出たら必要なとき以外は連絡もなしだな」
俺とヤツルギは、お互いを見て笑い合う。
「じゃぁ、エージュ俺は行くよ」
「いや、俺も出るからな」
かっこよく決めて、出ていこうとしたヤツルギだが、あいつがカードキー持ってるし俺も同時に出なければならないだろうに、締まらない奴である。
俺達は会議個室からでて、冒険者ギルド前で別れた。
俺は夕飯を食べるために、一旦ログアウトした。
やっと出てきた親友で悪友の八束 剣児君です