契約成立
「マイスター契約とは、職人と冒険者……これはプレイヤーでも、NPCでも良いんですが……が、専属の契約を結び、冒険者は素材を、職人は自分の持てる技術を、提供し合うことです」
「いまいちピンと来ないんですけど?今までのプレイヤークエストとどう違うんですか?」
「冒険者側のメリットは、素材のみでjの取引は行わないこと。職人側のメリットは、普段よりも良い作品ができることですかね」
「メリットが有るってことはデメリットも?」
「はいっ、勿論あります。冒険者側のデメリットは、契約した職人以外の職人の作った物を装備すると能力減退します。職人側のデメリットは、契約者のため以外に作製をすると必要素材が倍かかるのと、出来上がった装備が品質が悪くなることですかね」
「ウルさんよく知ってますね?」
「えっと……ヘルプメニューに書いてあったので」
「あっ、そうなんですね」
あぁ、ヘルプとかあったんだ、このゲーム。まぁ、当然と言えば当然か。
「それで、どうしますか?」
さらっと自分でもヘルプを確認して、気になる1文を見つけた。
「いや、ヘルプ見ましたけど、マイスター契約は"今のところ"ひとりの冒険者としか契約できないんですよね?良いんですか俺で?」
そう、ヘルプを見ると、マイスター契約は個人もしくはクランとの契約となっている。クランシステムがまだ実装されていない今は実質個人との契約しかない。つまり、ウルさんは俺と契約すれば、他の冒険者への装備は、作りづらくなってしまう。
「うーん、大丈夫ですよ?一応契約は破棄もできますし、手続きは大変ですけど」
ウルさんは、やけにあっさりしていた。
「あっそうなんですね、じゃぁお願いします」
あっ、勢いにのまれてお願いしてしまった。その答えを聞いて、ウルさんが申請を飛ばしてくる。それと同時に目の前に紙が出てくる。どうやら契約書のようだ。
「これにサインを入れて、マイスター契約をするんですね?演出がこってるなぁ」
もう、こうなったら乗り掛かった船だし、俺には願ったりかなったりだし、契約書にサインをする。
『プレイヤーエージュと、プレイヤーウル・メイクのマイスター契約を承認しました。これにより現在発行されている、プレイヤークエストを破棄いたします』
どうやら正式に認定されたらしい。
『おめでとうございます。ゲーム内で初めてのマイスター契約者となったために称号を贈ります。ステータス画面で確認してください』
んっ?アナウンスに続きがあったぞ?称号をもらったみたいだけど、ウルさんを見ると、ウルさんもこっちを見ている。どうやらウルさんにもアナウンスがあったようだ。
「ウルさんにもアナウンスがあったんですか?」
「はい、称号をもらったようなんですが……」
「とりあえず、ステータスを確認しましょう」
そう言いながら、ステータス画面をだす。
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名前:エージュ
種族:獣人族
ランク:F
Lv:5
HP:300
MP:150
ATK:20(+35)
DEF:46
INT:15
MND:15
AGL:68
スキル:【回避】【索敵】【格闘】【採取】【観察眼】
ミックスキル:【双盾】【両手剣】
常駐スキル:【DAミラー】
称号:【ミラードの祝福】【専属冒険者】
残りSTp:5
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【専属冒険者】が増えてるな。確認をしてみる。
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【専属冒険者】
初めてマイスター契約をした冒険者に贈られた称号。
【専属職人】を持っているプレイヤーと契約している間、素材ドロップ率を微増する。
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説明を読む限り、ウルさんは、【専属職人】を取得したんだろう。
「ウルさんも確認しましたか?俺は、【専属冒険者】でした」
「私は、【専属職人】ですね。エージュさんに作る子達が、良い子になりやすいみたいです」
微増というのが、どれくらいかわからないが、役に立つ称号だろう。
「あぁ、ウルさん。商談は終わりましたか?」
称号の確認が終わった頃、奥から何時もカウンターに居た男性が出てくる。
「あっ、ハラスティさん。まだ終わってないというか、少し事情が変わったというか……」
「どうかしましたか?」
どうやら、何時もカウンターに居た男性は、ここの店主のだったようだ、ウルさんがカウンターの男性、もといハラスティさんに、俺とマイスター契約をした事を伝えている。
「そうなんですね。う~んどうしましょうかねぇ?」
「なにか問題があったんですか?」
ウルさんの話を聞いて、困った顔をし出すハラスティさんを見て、俺は声を掛ける。
「いやね、マイスター契約をしたってことは、うちの店にはもうウルさんの作品は置けないってことだから、店の利益のためにも、ここの炉をウルさんに、使ってもらうわけにはいかなくなるって言うか」
あぁ、そうだよな。これからウルさんの作る装備は、俺用以外にしようと思うと、素材が倍かかったり、質が悪くなったりするから、店の利益にならないのか。
「ウルさんごめんなさい、俺のせいで」
「いえ、エージュさんのせいではないですよ。私は後悔していないですし」
ウルさんが滅茶苦茶男前に見える。……止めてください睨まないでっ。
「まぁ、マイスター契約は立派な職人としての第一歩ではあるから、祝福はさせてもらうよ。……よしっ、ウルさんここの炉を貸してあげよう、その代わりに有料だよ?」
「本当ですか、ありがとうございます」
ハラスティさんは、かなりいい人だな。有料とはいえ専用の炉を借りれるのはありがたいだろう。
「良かったですね、ウルさん」
「はい」
ウルさんかなり喜んでるな、さっきからぴょんぴょん跳び跳ねてる。うん、かわいい。
「それと君、君は頑張ってね?」
「というと?」
ハラスティさんが、今度は、俺に話しかけてくる。
「だって、ウルさんは実質収入がなくなったんだから。君がウルさんの分も稼がないでどうするよ?」
「なんだってぇ~」
そうか、そう言われればそうだよな、ウルさんは俺専用の装備を基本的に作るしかなくて、そこにjのやり取りはないってことは、稼げないとイコールである。
「あの、不束者ですが、よろしくお願いします」
やめて、ウルさんかわい過ぎるから、破壊力がすごいから。
……じゃなくて、これは色々頑張らなくては。
「がっ、頑張りますね」
「はい、それと、お渡しし忘れていた双盾です」
そう言って、渡された双盾をなんとなく見てみると。
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【空立腹の双盾】(耐久各450)
ハン・アングリーラビットの素材を使った骨盾
空腹の盾と立腹の盾の1対で成り立っている
製作者はウル・メイク
エージュ専用装備
ATK+15 DEF+45 【立腹】
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……さっきより強くなってませんか?
「あのぉ、ウルさんこの盾、さっきより強くなってるんですが?」
「えっ?その子もマイスター契約の効果を受けるんですか?」
ウルさんもビックリしているようだ。
記憶を便りに比べてみたところ、1.5倍の性能になっているみたいだった。いやいや強すぎるって。
「ヤバイほど強いなぁ」
「まぁまぁ、良いじゃないですか、強くなったんですから」
「確かにそうですね」
よし、もう考えないでおこう。
「じゃぁ、行きましょうかエージュさん」
「行くってどこに?」
「うーん、とりあえず宿屋ですかね?ログアウトのためにも」
「あっ、そうですね行きますか」
俺が出ていこうとする後を、ついてくるウルさんは、入り口で振り返って、ハラスティさんに話しかける。
「はい、それではハラスティさん、お世話になりました」
「いやいや、また炉を使いにおいでよ?」
「はい、失礼します」
別れの挨拶交わし、俺たちは宿屋で部屋を取り、ログアウトした。
勿論部屋は別々だったよ?
エージュ結婚まがいの契約を結ぶ
これでこの章はおしまいです。
掲示板を挟んで次の章へ行きます。
次は、またあいつが出てくる予定です。




