新盾
誤字脱字報告、大変感謝しています。
感想も気付かされたり、励みになったりすることばかりです。
お昼ご飯を食べて、腹休めに宿題を終わらせ、水分補給とトイレを済ませて、ログアウトしてから3時間後くらいに、再びSCOにログインする。
ログインすると同時にメール受信の知らせが3通届いていた。
届いたメールのうち、1つは、運営からのお知らせメール、2つは、ヤツルギとウルさんからのフレンドメールだった。
先ずは運営からのメールを見てみる。
『この度はSCOをご購入いただきありがとうございます。初期ロットの完売を記念しまして、プレイヤーの皆様に、スキルクリエイトチケットを配布させていただきます。また、明日より新たなエリアを解放いたします。これからもSCOの世界をお楽しみください』
となっていた。配布されたスキルクリエイトチケットとは、1度のみ、スキルクリエイトを行えるチケットのようだ。これが、ミラードがほのめかしていた、Lvup以外でのスキルクリエイトの方法だろう。
チケットを使って、どんなミックスキルを作ろうかと、とてもワクワクするが、今は続きの確認をしていこう。
2つ目の新エリア解放は、第2の街トゥールースと、その周辺エリアの解放だそうだ。ハナディウムの街から東平原の先にある、森エリア、ハナトゥー森林のエリアボスを倒すと、行けるようになるらしい。
……あれ?南平原の先はどうなっているんだ?たしか南平原から見えていたのは山だった気がするのだが、まだ実装されていないのだろうか?まぁいいか、そのうち解るだろうしな。
スキルクリエイトチケットの配布となると、ヤツルギのメールは、なんとなくわかるような気がするが、開けてみるか。
『おいっエージュ。俺はついに八刀流に届いたぜ。厳密に言えば【八剣流】だが、細かいことは関係ない。俺は強さを手に入れたんだぁ』
強さは手にいれたが、もう少し賢さを手に入れてくれ、我がライバルよ。
そして最後に、ウルさんのメールを確認する。
『エージュさん。頼まれていた盾が完成しました。受け取りを御願いします。私は、今日中であれば、何時でもハラスティ武具店に居ますので、御願いします』
おぉ、頼んでいた盾が完成したらしい。思ったよりも早く出来上がったな、もっとかかるものかと思っていた。
まぁ、できたというのなら、受け取りに行こうじゃないか。俺は、新しい自分の盾に、期待を膨らませて、少し早足になりながら、ハラスティ武具店へ向けて、足を進めるのであった。
「いらっしゃい。あぁ、ウルさんだね?少し待っていておくれ」
ハラスティ武具店に入って早々、いつもの店員にそう言われた。
「短いスパンで、通いつめていれば、顔くらい覚えられるか」
カウンターのそばで待っていると、奥からウルさんが出てきた。その手には、2つの盾が抱えられている。
「お待たせしましたエージュさん。こちらが、ご注文いただいていた、ハン・アングリーラビットの素材を使った盾になります。確認を御願いしますね?」
そう言いながら、カウンターに置かれた盾に、目を移す。
その盾はハン・アングリーラビットの素材を使っているからなのか、片方は、全体的に灰色で、縁の方が黒く、もう片方は、逆に縁の方が灰色で、全体的に黒くなっていた。裏側を見れば、太めの骨で骨組みが出来ていた。
出来上がった盾を眺めていると、ステータスが表示される。
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【空立腹の双盾】(耐久各300)
ハン・アングリーラビットの素材を使った骨盾
空腹の盾と立腹の盾の1対で成り立っている
製作者はウル・メイク
ATK+10 DEF+30 【立腹】
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このSCOで、俺が初めて見た双盾だ。それぞれのステータスもあるようで、確認をしてみる。
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【空腹の盾】(耐久300)
ハン・アングリーラビットの素材を使った骨盾
対となる立腹の盾と合わせて使うことを基本としている
製作者はウル・メイク
DEF+20
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【立腹の盾】(耐久300)
ハン・アングリーラビットの素材を使った骨盾
対となる空腹の盾と合わせて使うことを基本としている
製作者はウル・メイク
ATK+10 DEF+10
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「あれ?どっちかの盾に、【立腹】のスキルが、ついているわけじゃないんだ?」
「はい。【立腹】のスキルはセットスキルと言って、双盾として、2つの盾を装備しているときに、発動するスキルですね」
なるほど、空腹の盾と、立腹の盾どちらかしか使っていない時には、【立腹】のスキルは発動しないらしい。
ちなみに、【立腹】のスキルは、
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【立腹】
自身のHPが、半減することをトリガーに発動する
スキル発動後HPが1減る度にATKが1上昇する
HPが半分より多くなった時点で、上昇したATKは元に戻る
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……HPにも少し振らないとなぁ。いや、今の時点のHPでも良いのか?今の俺のHPから見れば、HPが150を下回った時点で、【立腹】が発動して、最大ATKが149上昇すると。なにこの壊れ性能。
「なかなか、素敵な子が出来上がりました。この子の事を大切に使ってあげてくださいね?」
「はい、それは勿論。こんな素晴らしい盾をありがとうございます」
ウルさんの問いに、俺は即答する。こんな良い盾を作ってもらって、大切に扱わないはずがないだろう。
「ふふふっ、エージュさんに気に入ってもらえて良かったです」
「はい、滅茶苦茶気に入りました。それで、この盾の値段なんですが、いくらになりますか?」
これだけ良い盾なのだ、もしかしたら持ち合わせでは足りないかもしれない。そうなれば、またウサギ狩りをしなければならないかもしれない。そう思いながらウルさんに値段を聞く。
「はい、大変申し上げ難いのですが、かなりの物が出来てしまったので、5,000j程でどうでしょうか?」
「あっ、……今持ち合わせがないので、またお金を用意したら来ますね?」
いや、ウルさんの本気を侮っていた。手持ちは3,500jだから、1,500j足りない。
「そうなんですね。……でしたら、エージュさん、私とマイスター契約をしていただけないですか?」
「マイスター契約?なんですかそれは?」
なんだか、ウルさんから、聞きなれない言葉が、飛び出してきた。




