何故2ついるのか?
「まず私から質問したいことがあるのでよろしいですか?」
お仕事モードに入って真面目な顔をして、ウルさんは俺に問いかけてくる。
「はい、何でしょうか?」
このタイミングで聞いてくるのことなので、「彼女居ますか?」何てことでは決してないだろう……残念なことだが。
「まず、エージュさんのビルドタイプといいますか、重点を置いているのはどのステータスなんですか?」
ビルドタイプというのは、ステータスの振り方の特徴だ。高機動なAGL型、堅牢なDEF型、一撃必殺のATK型、万能なバランス型など、どのステータスを伸ばすかである程度の型と呼べるものがある。このSCOの場合種族によって強制される部分もあるがプレイヤーの好みによっての、自分の育成方針といえば良いのだろうか。
「あー、俺の場合は、獣人種だからAGLが高い事と、DEFに振ってるから機動盾型?になるんですかね?」
「動ける盾ですか。だとすると、AGLの下がる重い盾は却下ですね」
俺の答えにフムフムという擬音がピッタリな感じで頷きながらメモを取るウルさん。
「では次に、エージュさんが盾に求めるものはなんですか?」
「盾に求めるもの?どういうことですか?」
俺は、ウルさんの質問の意味が上手く理解できず聞き返す。
「あぁ、すみません。求めるものっていうのは、鉄壁だとか、取り回しやすさだとか、こんな盾だと良いなっていうエージュさんのイメージを聞きたくて」
「あぁ成る程、う~ん……2つの盾の連携ですかね?」
「盾の連携ですか?」
「はい、何て言ったら良いのかな?俺の場合左右に盾を装備するので、片方で防いで、もう片方で攻撃する形が多くて、その為にお互いを邪魔せずに使えるといいなって、取り回しやすさと言っても良いのかもしれないんですが……」
自分でも上手く言葉に出来ないのだが、取り回しやすさとは少し違う感じがするのだ、何処が?と言われると何処だろうとなるのだが。
「なんとなくですが、わかりました。そして今話していただいたことにも繋がるのですが、何故盾を2つ必要となさるのですか?」
「先ほども言いましたが、俺は左右に盾を装備して戦うスタイルですので、盾が2ついるんです」
俺が答えると質問は終わりなのだろう。メモをしていた手を止めて、こっちを見るウルさん。
「質問に答えてくださってありがとうございます。それでは新しい盾のプランを2つほどお話しさせていただきますね」
そう言いながらVサインを出すウルさんの顔は、真剣そのものでとてもきれいだった。




