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マイボーイフレンド

「さよりの結婚相手を見つけてくれないか?」


 えっ? さよりちゃんの結婚相手……

 俺は突然の申し出にとまどいを隠せなかった。


「さよりちゃんの結婚相手って、彼女はまだ高校一年ですよ、

 いくら何でも早すぎませんか?」


「まあ、話は最後まで聞け、確かに今すぐ結婚と言う訳では無いが、


 ゆくゆくはさよりに、本多グループの跡目を継いで貰おうと考えておる、

 それを支えてくれるパートナーをお前に探して欲しい……」


「なんでそんな大事な事を俺なんかに頼むんですか?」


「男と男の話があると言っただろう、お前を男と見込んでの事だ、

 それに、儂は前回の一件で、孫娘を無理矢理押さえ込んでも

 駄目なことに気がついた……」

 本多会長が普段の厳しい経営者の顔から、孫を想う普通のお祖父さんの

 表情を覗かせた。


 以前、天音から聞いた事がある、さよりちゃんは本多グループの

 後継者として本来ならば、共学の中総高校ではなく、

 経営者としての帝王学を学べる高校に進学予定だった所を、

 さよりちゃんの強い希望で地元の中総高校に入学したそうだ、

 本多会長の母校だったのも幸いした。


「でも、さよりちゃんのお父さんが後を継いでいるんじゃないですか?」


「もちろん、倅も良くやってくれて感謝しておる、

 だが、我が本多グループは巨大になりすぎた……」


「親の欲目かもしれないが、倅は真面目でビジネスの才覚もある、

 早めに会社を任せて本当に良かったと思っておる」


「ただし……」

 本多会長が言いよどんだ、


「倅は優しすぎるんだ、会社のトップとして、その優しさが命取りになる時もある」


「儂はこの会社を大きくする為に、何でもやった、人に恨まれる事もな、

 小僧、お前もいずれ学生から社会人になるだろう、

 ビジネスの世界は食うか食われるか、そんな厳しい競争原理が渦巻いている」


 本多会長の言いたい意味が理解出来た、息子さんを想って口には出さないが、

 会長に退いたとは言え、今でも強力なカリスマ性を持って会社の顔となっているのは

 本多会長だ……

 一代で成功を遂げた会社を、継ぐと言うプレッシャーは並大抵の物ではないだろう。

 常に前の社長と比較されてしまう……

 本多会長はそれを良く知っているからこそ、さよりちゃんを強力にサポート

 出来る結婚相手を今から探して欲しいんだ……


「小僧、お前が知る限り、さよりには今、ボーイフレンドはいるのか?」


 急に本多会長が質問してきた、

 さよりちゃんにボーイフレンド?

 何故が天音の顔が真っ先に浮かんだ……


「あっ、居ますよ、天……」

 言いかけて大事なことに気がついた、

 天音は男装女子だ!


 本多会長はその言葉を聞き逃さなかった、

 キラリと目の奥が鋭く光った……

「なんじゃと、あ、天?」


 ここで天音がボーイフレンドと言ったらややこしい事になる……

 どうする俺?



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