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放課後、屋上で待ってます

「PS 明日の放課後、屋上で待っています」


 その夜は何だか中々寝付けなくて、夜中に何回も目が覚めてしまった……

 寝不足気味で朝を迎える。


 天音はどうやら、先に登校してしまったらしい。

 普段なら、何で起こしてくれなかったのかと文句を言う所だが、

 今回は逆にありがたい。


 挙動不審な所を悟られないで済むからだ。


 いつもの最寄り駅に到着すると、突然声を掛けられた。


「おはようございます……」

 同じ高校の制服を着た女の子が立っていた。


 天音と同じ学年を示す、えんじ色のブレザー、赤基調のチェックスカート、

 ナチュラルなショートカットの髪の毛、健康的な小麦色の肌をした

 ボーイッシュな娘だ。


「本多さよりです、昨日はありがとうございました……」

 昨日、電車で天音が助けた女の子だ。


「おはよう、もう大丈夫?」

「はい! 猪野先輩」

「あれっ、どうして俺の名前を知ってるの?」

「学校の有名人ですから、お二人は」


 そうだろうな……

 あれだけの事件を起こせば有名になるよな。


「何だか。待っててくれたみたいだけど……」

「はい! これ母がどうぞって」


 さよりちゃんが、手に持っていた紙袋を差し出す。


「ほんの気持ちです」

 どうやら昨日のお礼のようだ。

 紙袋は有名なお菓子の名前が書かれている。


「えっ? 気を使わせちゃってゴメンね」

「いいんです、すごく嬉しかったから……」 

 さよりちゃんが明るい笑顔で答える


「じゃあ、遠慮無く……」

 紙袋を受け取る。


「今日は弟さんは一緒じゃないんですね」

 へっ? 弟。


「昨日のお礼もしたかっんですが……」

 さよりちゃんが、残念そうにうつむく。


「ああ、あいつは先に登校したんだよ」


「そうなんですか、弟さんにもどうぞよろしくとお伝えください」

 すこし、はにかんだ様な表情で。

 さよりちゃんは、会釈をしつつ、その場を立ち去っていった。


 何か、根本的に勘違いしているようだ。

 俺たち兄妹を、どうやら兄弟と思っているようだ。

 あれだけの事件を起こしていた為、

 すでに天音が男装女子だと知っていると思ってしまった。


 教室に着き、一限目の授業を受けていると横から紙辺が飛んできた。

 お麻理こと及川麻理恵だ。

 投げ込まれた紙辺を見てみると、折りたたまれた手紙になっており、

 そこにはこう書かれていた。

(何、朝からニヤニヤしているの? 結構キモいんだけど……)


 お麻理が、珍獣を眺めるような顔でこちらを見ている。


「何でも無いよ……」と小声で言い、慌てて誤魔化す。


 そうだ、放課後の事を思い浮かべていると顔がニヤけちまう。

 早く放課後にならないかな。

 時間の経過が妙に長く感じられた……


 長い一日が終わり、終業のチャイムが鳴る。

 急いで帰り支度をして、屋上に向かう。


 長い渡り廊下を過ぎて、南校舎側から屋上に向かう階段を登る。

 屋上に続くドアの前に立つ。


 昼休みはお昼ご飯を食べる場所として、人が多い場所だが、

 放課後には殆ど、立ち寄る者は居ない。


 緊張しながら重いドアを開ける。

 風が一気に通り抜けるのが分かる

 屋上を見回すと

 そこには一年生の制服を着た女生徒が、

 後ろ向きに佇んでいるのが見えた。


 校舎の向こうに傾き掛けた夕日の反射で、

 こちらからはまぶしくて良く見えない……


「あの……」

 声を掛けると、女生徒がゆっくりとこちらに振り向く。


 夕陽の反射だけでは無い、赤く染まった頬、

 困った子供のような微妙な表情、

 小柄な体に合わない、大きめな制服の

 手の甲まで隠れてしまう袖口、

 ショートボブの先端が儚げに揺れるのが見えた。


「……弥生ちゃん?」


「猪野、先輩……」

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