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水の底からこんにちは

「さっ! そろそろ泳ごうよ」

 お茶会も終わり、天音がみんなを誘う、

 このスパリゾートの特徴は温泉とプールが自由に行き来出来る事だ、

 普通は混浴で無ければ、男女が同時には温泉エリアには入れないが、

 水着を着用しているので、それが可能になる。

 俺達のいるプールサイドは周りをぐるりと流れるプールに囲まれている。


 天音が着ていたパーカーを勢いよく脱ぎさった……

 男装女子の天音は一体、どんな水着を着用しているんだろう?

 今日の天音もいつもの男装状態だ、待てよ、よく考えたら、

 女子更衣室で問題が起きなかったんだろうか。

 学校での女子トイレ事件が脳裏をよぎった……


「天音!?」

 パーカーを脱いだ天音はトップにラッシュガードを着用し、

 ボトムには同色のトランクスタイプの水着を穿いていた。

 問題は以前、天音の部屋で男装女子への変身を見せて貰った時より、

 胸が完璧に平らになっているのに驚いた、


「お兄ちゃん、何、天音の胸ばかり見て驚いているの?」

「だって、完璧に胸が無いから……」

「天音の男装も進化するんだよ、ほら見て!」

 天音がラッシュガードをおもむろに下からまくり始めた……


「わっ! やめろ、公衆の面前だぞ」

「ふふっ、大丈夫だよ、よく見てよ!」

 慌てふためく俺を尻目に天音は涼しい顔だ、

 半分ぐらいまくったラッシュガードの下には一瞬何も着けていないように

 見えたから俺は慌ててしまったんだ……

 よく見ると、肌色のインナーを着けている、

「これ、新兵器のBホルダーって言うんだよ、普段の物より

 厚みが出ないから完璧に胸を隠せるんだ、

 そこに水にも落ちないボディーファンデで完璧カバーなんだ」

 天音が得意げに解説し始める、


「お前、女子更衣室で着替えて、大丈夫だったの?」

「うん、公共の施設ではマズいけど、今日は貸し切りだから問題なかったよ、

 真一郎君とさよりちゃんのお陰だね……


 あの肖像画の一件以来、天音は本多会長の事を親しみを込めて、

 下の名前で呼ぶようになった、

 本多会長も天音の事を、孫娘がもう一人出来たかの様に

 可愛がってくれているみたいだ。


「皆さん、転ぶと危ないので、プールサイドは走っては駄目ですよ」

 真菜先輩が心配して声を掛けてくれる……


 各人、めいめいに浮き輪や複数人で乗れるフロートマットをプールに浮かべるが、

 結構流れが速いので、先に入った花井姉妹がバランスを崩して

 いきなり二人ともフロートマットから水に落ちてしまう、

「あ~ん、耳に水が入っちゃったよ……」

「こっちはゴーグルしておけば良かったかも」

 女の子が多いので、キャッキャッとあちこちから嬌声が上がる、


 天音はさよりちゃんや、お麻理と一緒のフロートマットに乗り込んだようだ。

 俺は特に浮力体は持たずに、プールの流れに身を任せてみた……


 ファミリー向けのレジャープールと侮っていたが、

 結構、強い水流で身体を持って行かれてしまう……

 お茶会の時にさよりちゃんが言っていた事を思い出す、

 今日は本多会長が、特別サービスでプールの水流を最大にしてあるんだと、

 そんな部分をサービスしなくてもいいんじゃないか?


「!!」

 次の瞬間、俺はいきなり何者かに足を引っ張られ、

 プールの底に引きずり込まれてしまった……


「がはっ!」

 俺を水中に引き込んだ何者かが、俺の身体の自由を奪う……




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