表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/230

人生が二度あれば

放課後、俺は高校近くの石坂文化堂に立ち寄った、

ここは書店とバイク屋さんが併設されていて子供の頃からおなじみの場所だ。

俺や天音の歴代の自転車も、ここで購入している。

最近はホームセンターやネット購入のほうが価格が安いが、

親父の考えで、近くのこの店で購入している。


一度、親父に聞いたことがある、もっと安い所もあるんじゃない? と、

親父は何、馬鹿なことを聞いてるんだと言わんばかりの顔で、


「価格じゃないんだよ、物を買うって事は…… 特に命を乗せて走る物は

購入店選びが大事なんだ、車もオートバイも、そして自転車もそうだ、

ブレーキの調整一つ、ギヤの変速フィーリング一つ、

整備する人の熟練度合いで、同じように組み上げても全然違う、

それが安心を買うと言う事なんだよ……」


その時は親父の言っている意味が分からなかったが、

俺もバイクを乗るようになって、気が付いた事がある、

親父のベスパもどきを借りていた時だ、

出先でクラッチワイヤーが切れて、その場でスペアで持っていた部品で、

修理を試みた時、何とか自分で組み付け、インナーケーブルを交換した。

だけどクラッチが繋がるフィーリングがしっくりこない、

何度調整しても同じだ……


そこでなじみの文化堂に持ち込んでバイクを見て貰った。

店主の親父さんは、猪野さん家の坊主もバイクに乗る歳になったかと、

感慨深げに笑いながら、物の数分で修理完了してくれた、


「一回りしてきな」と親父さんに言われ、バイクの調子を見るため、

近所を試乗してみる、先程と全然違う、いや壊れる前以上に変速が、

スムーズになっている、これが親父の言っていた事か……

プロに払う対価はケチってはいけない、通販等で安く買えたと喜んでも、

アフターサービスも含めれば最終的には損をすると。


数年前にキレイにリニューアルされた店内に入る、


「宣人君、いらっしゃい」

書店の奥さんに声を掛けられる、夫婦で店を切り盛りしている。

親父さんはバイク屋、奥さんは書店担当だ、

店内は入り口は別だが、奥で繋がっている。


「今日は何か捜し物?」


「内藤純一の本ありますか?」


「若いのによく知っているわね、もちろんあるわよ」

奥さんが案内してくれた一角には、何と特設スペースまで作られていた。

内藤純一 ニッポンのKAWAIIカワイイカルチャーの元祖と

POPに大きく紹介されていた。


「最近、CMで内藤純一の絵が使われてから、再評価されてブームなのよ」

奥さんが教えてくれた、知らなかった…… こんなに有名な人だったんだ。

その中で、一番手前に平積みされていた「内藤純一 美の世界」

という本を購入し、石坂文化堂を後にした。


その足で、今日はどうしても一人で行ってみたい場所があった、


書店の並びにある、あの店だ、


「我楽多 具無理」

相変わらず、雑多な店先に置かれた狸のボードには営業中の文字、

良かった、開いているようだ。


意を決して引き戸を開けようとしたその時、

ガラガラという音と共に、先に引き戸が開き、誰か出て来た。


「!!」

思わず自分の目を疑った……

具無理から出て来た人物は、あの本多真一郎その人だった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ