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学園一美少女な俺の妹が突然男装女子になった件。  作者: Kazuchi
春を呼べ

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村一番の柿の木

 キスをねだる彼女を受け入れようとしたその瞬間、


 急に彼女の表情が曇るのが見て取れた……


「ごめんなさい!」

 彼女が不意に頭を下げた。


「ど、どうしたの?」

 意味が分からず、彼女に思わず、問いただしてしまう……


「やっぱり、宣人お兄ちゃんは昔から変わっていない」

 彼女が嬉しそうに微笑み返す。

「小学生のあの時のまま、馬鹿正直な位、真っ直ぐなんだね」


「あのお月見の日も、私を助けてくれた……」

 俺はすぐには理解出来なかったが、彼女は深い悲しみの中、

 今まで救いを求めていた事が後で分かったんだ。

 彼女が何故、俺達の前から姿を消したのか?

 今の彼女が何故、男の子のような容姿をしているのか、


 そして再会した事が運命と言うには、これからの俺達に

 あまりにも過酷な未来が待っていることも……

 その時の俺にはまったく予想出来なかった。


「お兄ちゃんは僕に何もしていないよ。」

 えっ、激しかったんじゃないの?


「ごめんなさい…… 試したくなったんだ。

 宣人お兄ちゃんが、昔と変わらない事を」


 俺は自分で分からなかった……

 今の俺と何が違ったんだろう、

 確かに子供の頃の俺は、今と正反対だった。

 俺、天音、お麻理、そして彼、いや彼女、柚希。

 俺はみんなのリーダーだった。

 いつも俺を中心に廻っていた事を思い出した。


 お月見の夜だけではなく、小学校の放課後はいつもあの場所に、

 集まっていたっけ……


 村一番の柿の木、その高さは対岸にある小学校の校舎を、

 全て見下ろせる位、高い枝振りだった。


 その木に俺は一番高く、登れる事に優越感を感じていた。

 そうだ、小学生の優劣は勉強が出来るとか、家が裕福だとかでは

 決まらない、大人になったら取るに足らない事が、

 小学生の頃は一番になる条件だった。

 その頃の俺は無敵だった、

 今思えば、お山の大将だったのかもしれない……


 あの日もそうだった。

 俺はいつもの様に村一番の柿の木の前で集合を掛けた。


 早めに着いた俺は柿の木を、身軽にするするとピークまで登った。

 天辺からみえる風景は格別だった。

 普段、俺達が通っている小学校の校舎が目線の下に見えた。


 その時、俺を呼ぶ声が聞こえた。


 遙か下にはあの女の子が居たんだ……

 憂いを含んだ長い睫、肩まである長い髪、

 お人形のような白い肌、

 何故、俺は記憶を黒塗りにしていたんだろう?


 こんなにも女の子らしい彼女を、記憶から消してしまうなんて……

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