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学園一美少女な俺の妹が突然男装女子になった件。  作者: Kazuchi
春を呼べ

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少年

 あの思い出の場所を後にして、俺は帰路を急いでいた。


 国道をしばらく走り、市民運動公園のある交差点を右に曲がった時、

 バイクのライトに照らし出されて、道路脇に自転車と屈み込んだ人影が見えた。

 とっさにバイクを停め、人影に声を掛ける。


「どうかしましたか?」

「えっ?」

 バイクのライトにまぶしそうに目を細めながら、男の子が顔をこちらに向けた。

 近隣の進学校のジャージだから、多分高校生だろう。

 


 ゆるいウェーブの掛かった栗色の髪色、

 背丈は俺と比べて、やや小柄に感じるが

 手足がすらりと長く、口元を覆っている

 細めの指先が、妙に印象に残った。


「自転車がパンクしてしまって……」

 そういう彼の頬が何故か、黒く汚れている、

 自転車の後輪を直そうと触ったのだろう。

 チェーンの油汚れが顔に付いてしまったようだ。

 両手を見るとやはり油汚れが付着している。


「貸してみな」

「えっ?」

「バイクと一緒で、多少は直せるから」

「あっ、ありがとうございます」


 彼が安堵の表情をみせる。

 バイクのフロントトランクにトラブルに備えて

 工具一式が入っている、パンク修理剤もあったはずだ。

 しゃがみこんで自転車の後輪タイヤを確認する。

 タイヤが大きく裂けて、インナーチューブがはみ出てしまっている。

 ここら辺はダンプ街道なので道路脇に釘やガラス片が多い、

 それを踏んでしまったのだろう。

 厄介なことにチェーンも噛みこんでペダルが回らない。


「直りそうですか?」

「結構、重症だ、応急措置では直りそうも無いな」

「そうなんだ……」

 暗い表情になり、手で額の汗をぬぐう彼。


 横の車道を行きかう車のライトに照らされて

 お互いの顔がはっきり見える。

「ぷっ……」

 思わず吹き出してしまう。


「えっ、何?」

「顔、顔!、バイクのミラーで見てごらん」

 俺のバイクのミラーを覗き込む彼、

 ミラーの中にはチェーンの油で片側だけ太眉になった

 顔が写っていた。

「何、この顔、恥ずかしい……」

 黒い汚れを落とそうと必死で手で拭うが、

 更に油汚れが広がってしまう……


「もう~!」

「ごめん、ごめん、思わず笑ってしまって」

 鞄からタオルを差し出す。

 受け取るのを一瞬躊躇する彼、


「タオル、汚れちゃうよ……」

「大丈夫、使いなよ」

「ありがと」

 タオルで顔の油を拭き取るが、全ては落ちない。

「でも、どうしよう自転車、これじゃあ帰れないよ。」

「そうだな、家の人に連絡してみたら。」

「今晩、誰も居ないんだ」

 困った表情になる彼、


「そっか……君の家ってどこら辺?」

「ここから自転車で20分ぐらいだけど」

「自転車はここに置いて、俺がバイクで送ってやるよ。」

「えっ、悪いよ……」

 遠慮する彼。

「大丈夫、同じ方向だし、ヘルメットもあるから、遠慮するなよ」

「でも……」

 少し考えこむ。


「乗れよ、歩いて帰れる距離じゃねーぞ」

「うん、お願いしてもいい?」

 彼の鞄を積んで、ヘルメットを被らせる。


「あれ、これってどうやるの?」

 ヘルメットの顎紐の締め方がわからないらしい。


「どれ、貸してごらん」

 ヘルメットの顎紐を締めてあげようと顔を近ずける。

 彼が目を瞑り、顎を上げてくる

 彼の首筋に俺の指先が触れる。


 ドクン!

 何故か指先に電流が走った気がした。

 あれ?、おかしいだろ、コイツは男だぞ。

 俺にはそっちの趣味はないって……


 顎紐を締めこんでやってから、

 ポンポンとヘルメットの頭頂部を軽く叩く。


「大丈夫だろ」

「うん!」

 にっこりと彼が微笑んだ。

 バイクの後部シートに跨らせ、声を掛ける。


「俺の腰にしっかり掴まって!」

 バイクに初めて二人乗りする人は、何故か後ろのキャリアや、

 シート後方にあるバーを掴もうとするが、

 バイクの加速は結構鋭いので、前の人間にしっかり掴まらないと

 後方に振り落とされることもあるので注意が必要だ。


「こ、こう?」

 彼が遠慮がちに俺の腰に両手を廻してくる。

「もっと、しっかりと!」

「わっ、わかりました」ギュッと腕の力が強くなるのが分かる。

 何故か敬語になる彼を、可笑しいなと思いつつ、

 ミラーで後方確認をしながら、バイクを発進させた。

 しばらく走った時、ふと思い出した……


 あれっ? さっき彼がミラーで顔の汚れを確認した時、

「何、この顔、恥ずかしい……」

 って言ってなかったっけ。

 なんだ、その女の子みたいなリアクションは?


 謎な少年だ……



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