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学園一美少女な俺の妹が突然男装女子になった件。  作者: Kazuchi
咲かせてはいけない花

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見知らぬ人でなく

 俺達、歴史研究会、最大の目標である大会優勝、

 その為の合宿場所、天照寺に到着した、

 立派な石作りの門構えには、宗派と寺院名が刻まれ、

 厳かな雰囲気がこちらまで伝わってくる、

 気のせいではなく、空気感が違うのが感じられる……

 そこから緩やかなスロープの道が駐車場まで続いていた。


 俺達はバスを降り、車体後部にある収納場所から荷物を取り出す、

 連泊の予定なので、他の女の子達も結構荷物が多い、

 女装男子化した俺も同じく、まるで海外旅行に行くような

 キャスター付きハードケースの旅行鞄だ、

 これも合宿に供え、天音と一緒に選んだ一品で、

 価格の安さで選ぼうとする俺に対して、天音はいつもの呆れた表情を見せ、

 子供を諭すようにこう言ったんだ……


「お兄ちゃんはいつも安物買いの銭失いなんだから、

 趣味の物だけで無く、日常の物もそれじゃあ、駄目なんだよ……」

 うっ、耳が痛い事を的確に指摘する、伊達に俺の妹を長年していないな、

 正にその通り、何も高い物を買えと言う事ではなく、

 リーズナブルな価格でも、機能性や定番の物を購入した方が結果的にはお得だ。

 俺はいつも安物を買って、気に入らなくて手放すを繰り替えすからな、

 鞄も可愛い装飾のシェルの外観や、小ぶりだが収納性の高い物を選んでくれた、

 女装男子の沙織ちゃんになってから、とにかく服が多い、

 それでも全部収納出来たのには驚いた、さすが天音。

 そんな事を思いつつ、駐車場での点呼確認に向かう、


 八代先生が点呼を取るが、花井姉妹がテンションの低い反応を見せた、

 その事に気付いた天音が声を掛ける。


「二人とも大丈夫? 八代先生が住職の話をしてから様子が変だけど、

 住職って花井さん達のお父様でしょ……」


「あ、まあ…… 一応、親ですけど」


「う、うん、そうだよね…… 生物学的には当てはまるかな?」


 二人が歯切れが悪い言葉を口にする……


「はあっ……」

 溜息までユニゾンで揃うのは、二人が本気で落ち込んでいる証拠だ……


「良かったら、聞かせてくれませんか? 

 何か問題があるなら、歴史研究会のみんなで共有しましょう」

 部長の真菜さんが、二人に優しく声を掛ける、


「真菜先輩…… 本当にありがとうございます、

 でも、今は何も言えないんです、理由は聞かないでくれませんか?」

 紗菜ちゃんが沈痛な面持ちで答える、その横でいつも明るい香菜ちゃんも

 終始無言のままだ……


 八代先生の点呼も終わり、大荷物を引きながらお寺までのスロープを上がる。

 次第に見えてきた本堂の大きさに圧倒される一同、その脇にこれまた立派な

 平屋の住宅がある、ここは花井姉妹の住居なんだろう。


「天照寺にようこそ、皆様のご案内を勤めさせて頂く、智光と申します、

 お疲れでしょうから荷物はここでお預かりします」

 本堂前で、作務衣姿の若い僧侶さんが案内してくれた、

 歳は俺達より少し上だろうか? 切れ長の目元が優しそうに見える、


「顧問の八代です、今回は短い間ですがお世話になります、

 ところで住職はどちらにいらっしゃいますか?」

 八代先生が挨拶がてら、辺りを見渡す。


「和尚様は席を外しております、申し訳ございません……」

 智光さんは深く合掌低頭をした、その動作に思わず見とれてしまった、

 さすがお坊さんだ、歳は俺達とあまり変わらないのに所作が違う。


「お茶をご用意しておりますので、こちらにどうぞ……」

 案内される歴史研究会の面々だったが、俺はお茶と聞いて心配になった、

 お茶を頂く前にトイレに行きたくなってしまった……


 智光さんにトイレの場所を教えて貰い、一人席を外した、

 女装男子のめんどくさい所は、用を足すのも単独行動でないと、

 男バレするリスクがある、今回も部員全員にはカミングアウトしていないので、

 充分注意しなければいけない。


 トイレは本堂を出て住居の離れにあるそうだ、玉砂利のひかれた道を歩いて行く、

 檀家のお墓が多数立ち並んでいる、その脇で掃き掃除をしている男性が居た、

 手ぬぐいを頭に巻き、汚れた作業着、掃除のおじさんだろうか?


 すれ違う際に軽く会釈をする、突然掃除のおじさんに声を掛けられた、

 その言葉に心臓が止まるかと思った……


「まがい物の器には正しい心は宿らない、

 そうだろ、猪野宣人君……」


 何故、俺が男だと見破られたんだ?

 この男性は一体、誰なんだ……





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