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第6話 仲良しと憂いとお話

リド=カロスが私の傍に配置されるようになりました。

特別扱いはいたしません。むしろ少し敬遠気味です。当たり前です、普段には侍女がいてくれるのですから。


あの話し合いから数日たって、ヒェイル様は私に神妙な顔つきで花束を持って帰ってきてくださいました。

私も神妙な顔つきで受け取ります。


あら。私の好きな小さな花がたくさん。単純なのでやっぱり顔が緩んでしまいます。

ヒェイル様が私の様子に安堵されたようです。


普段のように食事を共にし、それからは部屋を移り、ヒェイル様は書籍を読まれますし、私は今は編み物をしております。刺繍はしてきたのですが、侍女に教えてもらって編み物も楽しみだしたところです。


贈り物があった日は、いつもより仲良く一緒に寝ることが多いです。

「近頃はどうだ」

と話しかけてこられます。

「普段通りですわ。ヒェイル様も、お仕事のほうなどいかがですか」

「普段通りだな」

とため息をつかれます。きっと色々考えることがおありなのでしょう。


「リドとは、どうだ」

慎重に聞こうとして、声が硬くなっておられます。


私は仰向けでしたが、ヒェイル様の方を向きました。

「それですが、酷いですわ。ヒェイル様のお願いを聞いて差し上げましたが、私に他の男性を紹介しようとなさるなんて」

「すまない」

「いくらお約束だからと」

「・・・すまない」

声が小さくなっていくので少し可哀想に思ってしまいました。


そして、少し心配になりました。私には、エミリと別れた苦く辛い思い出があります。

ヒェイル様も、リドの要求を断つことができなくなっておられるのではないでしょうか。


「思い出話を、しても宜しいでしょうか?」

「なんだ」

ヒェイル様が興味を引かれたご様子で、ゴロリとこちらを向かれました。


「私・・・その、牢に助けに行った少女、エミリという名前の町民でした」

「あぁ」

「色々嫌気がさしていて、変装して町に降りていた時に知り合ったのです。私を不細工だからとか貴族だからとかで線引きせず、純粋にお友達になれたのです。とても嬉しかったのです」

「・・・あぁ」

ヒェイル様が聞いてくださっています。


「ある日、エミリは盗みをして捕まえられていました。貧しくて仕方なくしたのだと思います。私は驚いて牢にまで入って、ご存知かもしれませんが、私とエミリは二人で酷く泣いてしまいました。護衛がエミリを釈放するよう取り計らってくれて、そのまま屋敷に連れて帰ることができましたの」

「あぁ」


私の気分は沈んでいきます。

「だけど、そこからおかしくなりました。ドレスを着たいと言っていたエミリに、私はドレスを贈り、お友達として一緒にご飯も食べました。靴もアクセサリーもプレゼントいたしました。初めは驚いて遠慮していたけれど、嬉しそうにしてくれて。私も嬉しくて楽しかった。だけど、どんどん欲しがるようになりました。私のもの、私よりもエミリの方が似合うと言って・・・お気に入りのものも返してくれなくなりました」

「・・・」

ヒェイル様は気を遣われたのでしょう、片手で私を宥めるように肩を叩くようにしてくださいます。


「でも、断ることができませんでした。エミリに嫌われることが怖かったんですの。私、お友達がいませんの。お恥かしい話ですけれど・・・」

少しヒェイル様が抱き寄せてくださいました。


「ヒェイル様にはご友人はおられますか?」

と聞いてみます。

「まぁな。とはいえ、親しいのは数人だ。私は付き合いが悪いからな」

「まぁ。数人おられるのですね・・・」

と少し残念そうに言ってしまったのを、おかしそうに笑われました。


「私に似たような人間ばかりだ。そのような人間が集まっているところで仕事をしているからな。いつも仕事の話ばかりをしている。食事をしても何をしてもだ」

「そうですか・・・」

「それほど羨ましがることでは無いはずだ」

「羨ましいです」

「きみはこんなに可愛いのに、他の者が見る目がない。それだけだ」

言われた言葉に驚いて顔を上げます。

可愛いなんて言ってくださったのは初めてです。


「屋敷の者もきみを慕っている」

「・・・ヒェイル様のお屋敷の方々ですから、みな、見る目があると・・・?」

可愛いと言われた動揺を抑えるため、少し可愛くない事を言ってしまいます。

「そうだ」

ヒェイル様は楽しそうに笑われます。

また子どもを宥めるように、肩を優しく叩いてくださいます。

「安心すれば良い。親しくなれる者と親しくなれば良い」

「・・・はい」

ありがとうございます、と呟きます。


ヒェイル様が肩を柔らかく叩き続けてくださっています。とても優しい目で見ていてくださいます。

私は、途切れさせた思い出話を続ける事にしました。


「エミリの話ですけれど・・・。結局、お父様とお兄様が私たちの関係に気づいて・・・私がエミリにものをどんどん強請られて、私が断れなくなっている状況に気がついて・・・私には告げず、エミリを町に返しました。お金は持たせたと聞いています」

「そうか」

「二度と会ってはいけないと言われました」

「ふむ」

「驚きましたけど・・・悲しかったのですけれど・・・私は安堵を覚えたのです。エミリが純粋なお友達ではなくなっていると、気づいていたのです。エミリは私をお友達ではなく、いくらでもお金やものを与える貴族だとしか見ていないと。・・・初めはお友達だったのです。だけど・・・連れてきたのが間違いだったのだと思います。私の・・・」

「それは・・・」

ヒェイル様は私の肩を優しく叩いてくれながら、少し思案したようです。

「その話を聞かせたという事は、リドと私の関係をそのように心配しているという事か」


ウッと言葉に一瞬詰まりましたが、正直に

「そうですわ」

と答えました。

「そうか」

「はい。だって・・・」

肩を叩く手が止まってしまいました。


ヒェイル様は考えたようにまた仰向けに戻られました。

私はヒェイル様の方を向いたままじっと様子を見つめます。


「私にも、よく分からない。レイチェル」

とおっしゃいました。

「リドに恩義を感じているのは本当だ。私は彼の忠誠に報いたい。それにきみと結婚したのは彼がいたからで、リドがいなければきみのことなど知る事もなかったはずだ」

「・・・はい」

事情は、分かっておりますのよ。

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