Ⅳ 毒と蜘蛛
魔王幹部と魔王討伐する事になったんですが!?
Ⅳ 毒と蜘蛛
『な。』
ガンムデルに着いたユウ達は驚愕していた。街にいたのは王国兵でも活気ある市民でもなく魔族兵達だった。
『嘘、』
ユウは驚愕していた。街は崩壊。だが死体はなかった。
『レヴィ』
ペルセポネがレヴィアタンに問いかける
『ええ。蜘蛛の糸に毒の障気、間違いなさそうです』
レヴィアタンもまじまじと呟いた
『死体が無いって事は反転世界ですね。今の魔王は厄介な事をしますね』
ヘルはまたまた悔しそうに言う。
『反転世界?』
ユウは不思議そうにヘルに呟いた
『ええ。ここはガンムデルではありません。正確にはガンムデルの姿を表した世界ですね。上位魔法。反転によりそのまま生き写しになった世界です。ここはつまり裏の世界表の世界では人々は普通に生活しています』
ユウはヘルが何を言っているのか理解するのに時間がかかった。
『それにこの街の後。どう考えても私達が来るのを見計らっていたとしか思えない。魔王に私とレヴィが裏切ったのがバレたようね』
どうやら魔王サタンにペルセポネ。レヴィアタンの二人が裏切ったのが知られたらしい
そしてこの惨状の奥の城には二人の魔族の影が見えた
『そして、恐らくここに出向いてきたのは蜘蛛の糸の後と毒の障気からしてアラクネとセルケトの姉妹ですね』
レヴィアタンはそう語る。そしてユウが質問をすると続けてペルセポネが語る
『アラクネとセルケト?』
『ええ。姉のアラクネ妹のセルケト。姉のアラクネは糸を操る悪魔。妹のセルケトは毒を操る悪魔、二人とも魔軍12将の若手悪魔筆頭よ』
そう。ここに出向いてきたのはアラクネ。セルケトの二人。勿論狙いはユウの暗殺だ。
『随分とややこしい魔力と技のようですね』
ヘルは微かに見える魔族を見てそう呟いた
『元々はレヴィの部下だったんでしょ?』
ペルセポネがレヴィアタンにそう問いかける
『ええ。正直に言いますと一人ならともかく二人揃うは面倒です。魔王も我々を逃がすつもりはないようですね。』
レヴィアタンがそう語ると徐々に視界が晴れていき、魔族の二人が話し出す
『姉様。見つけましたよ。魔軍総括官ペルセポネ。魔軍12将総括レヴィアタン。勇者の血族ユウ・ファロン。そして見たこと無い女が一人』
どうやら見たこと無い女とはヘルの事のようだ。
『あれがセルケトとアラクネ。ヘルの事はしらないのか?』
ユウはヘルの方を見ながら質問した
『ヘルを知らないのも無理はないです。何せ私が魔王だった時には彼女らは生まれてなかったでしょうから』
ヘルはそう坦々と話していた。そして魔族の二人、アラクネとセルケトが口を開く
『どうもお久しぶりです。元総括官のお二人。まったく。裏切るなんてあり得なませんね』
『どうも。』
アラクネは長々と騙りセルケトは一言だけ話した。
『お久し振りね。毒蜘蛛姉妹。』
ペルセポネは皮肉混じりにそう言う。
『お久し振りですね。それで?私とペルセポネ二人相手に勝てるとでもお思いですか?』
レヴィアタンも挑発じみた言い方をする。
『まさか。さすがの私達でも貴方達の相手はやりかねますわ。ですから』
そう言うとアラクネはパチンと手を叩いた。すると空間が歪みそこから一体の巨大な魔物が現れた。
『グゴゴゴゴゴ』
『これは』
『魔神スルト』
ペルセポネとレヴィアタンは驚愕の表情を見せた
『ユウ様。さすがにこいつはヤバイですよ』
ヘルは冷や汗をつつ。と頬に垂らした
『魔神スルトそんなにヤバイの?』
ユウは戸惑いながらそうヘルに聞き返す。
『ええ。全盛期の私でも勝てるかどうかは定かではありません。まったくつくづく今の魔王は常識はずれな事をしますね』
どうやら元魔王ですら驚愕するほどの化け物らしい。とそれがわかったユウも恐怖を感じていた
『さあ、では参りましょうか。スルト、ペルセポネとレヴィアタンを撃ち取りなさい』
そう言うとその魔神はペルセポネとレヴィアタンに目を向けた。
『ユウ、ヘル様逃げて。』
『あの魔神とそれプラス毒蜘蛛姉妹ですか。まったく勘弁してほしいです。』
そう言いながらペルセポネとレヴィアタンはスルトに向かって戦闘態勢に入った
『行くわよ。』
『ええ。』
そうは言っているが状況が最悪なのは変わりない
『ならこちらはこちらでセルケト向かいますよ。』
『はい姉様』
そう言うとアラクネとセルケトはユウとヘルのもとへと向かっていった。
『ユウ様お任せを』
そう言うとヘルは鎌を出した。
『へえ。中々の魔力ね』
『驚きです』
ヘルが二人の攻撃を防ぐ
『ユウ様に手出しはさせない。』
そう言うとヘルは二人の攻撃を弾いた
『ならいくわよ。』
そう言うとアラクネの手から糸が出された
『炎鎌』
ヘルの鎌から炎が出現した。
しかし
『な』
炎で糸が切れるはずがまったく切れない
『私の糸は耐熱性なのよ。セルケト、そこの勇者の血族をやりなさい』
アラクネは冷たい表情でそうセルケトに指示を出す
『姉様。かしこまりました。』
そう言うとセルケトはユウに向かってきた
『不味いです。こうなれば、十字転移』
そうヘルが唱えるとユウから十字の影が現れた。そしてユウとセルケトはその影の中に消えてしまった。
『な。セルケトをどこにやった』
アラクネは驚愕しながら呟いた
『さあ。教える義理はありません』
十字転移。対象から十字に縦横10㍍の場所にいる生命を強制的に無空間に転移させる。
ヘルはユウの好感度メーターにセルケトが表示されることを祈りそれに懸けた。もし表示されれば少なくともセルケトに殺される可能性は限りなく低くなる。後はヘルがアラクネさえ倒せば。そう考えた
『そちらは頼みましたよ。ユウ様』
そう言うとヘルは再び敵にアラクネに視線を向けた
『さあ、行きますよ。抜鎌』
糸から鎌が抜ける
『ふふ、まあどこに飛ばされたかは知らないけどセルケトが殺ってくれるでしょう。』
そう言うとアラクネもヘルに視線を戻し戦闘態勢に入った
そしてユウとセルケトが飛ばされた無空間
『な、ここは?』
ユウは見たことのない場所に戸惑っていた。すると目の前の魔族がこっちを見ていた
ヤバイ。殺されると思ったユウは咄嗟に距離を取った。しかし
『殺しませんよ。というか殺せません』
セルケトは表情を強張らせながらそう言う
『殺せない?』
ユウは違和感を覚えた。殺しませんならそれはセルケト自身の意思だが殺せませんとはどう言うことかと
『姉様の指示がありませんから』
セルケトはそう呟いた
『姉様って。』
ユウは驚愕した。この子は目の前にいる魔族はどうやら姉の指示が無いと行動にうつせないらしい
『何か、話してください』
セルケトは泣きそうな声と顔をしながらそうユウに呟いた
どうやら姉のアラクネとはなれると弱気になるらしい
『何かって。』
ユウは思った。殺そうと思えば今無抵抗のこの子を殺せるんじゃないか。とそしてヘルに護身用と渡されていた短刀を握るがすぐに手を離した。
セルケトには何かの面影を感じいていた。
『なんですか?人の顔をじろじろ見て』
そう、その面影とはユウの正真正銘の妹のユラの昔の面影だった。ユラにも物心付くまでは良く警戒されていたな。とユウは少し懐かしく感じていた
『いや。君が、俺の妹に少し似ていて』
ユウがそう呟くとセルケトは顔を再び強張らせた
『私と、人間を一緒にしないでください』
ユウがごめんと言うとセルケトは再び俯いて口を開く
『似ている。と言うのは侵害ですが、勇者にも妹がいるんですね』
セルケトはそう呟いた
『顔は似てないんだけど雰囲気が少し。っていうか俺は勇者じゃないよ』
ユウがそう告げるとセルケトは嘘と言わんばかりの表情でユウの顔を見ていた、
『勇者じゃ、ないんですか?』
セルケトはそう言う
『正確には妹が勇者で俺は選ばれなかった落ちこぼれだよ』
ユウは、あははと苦笑いをしながらそう呟いた。するとセルケトがズイっと寄ってきた
『貴方に少し興味がわきました。勇者で無いのに魔王討伐するという貴方に。少し話を聞かせて下さい』
とセルケトは微かに微笑んだ。
その頃ガンムデル反転世界
『んーーもう。どうしたら倒せるのよ』
『知りませんよ。そんなの』
崩れた瓦礫の中からペルセポネとレヴィアタンが出てきた
『何してもびくともしないわよ』
『さすが伝説の魔神と言うべきですかね』
そう。先程からペルセポネによる魔力弾とレヴィアタンによる召喚魔獣による攻撃を食らってびくともしないのである
『もう一度行くわよ。レヴィ。』
『はあ。行きましょうか』
そう言うとペルセポネとレヴィアタンの二人は再び空中へと向かった。そしてヘルは
『三日月鎌』
『トライアルネット』
アラクネとの勝負はまだ終わっていなかった。
『さすが魔王軍幹部なだけありますね。』
ヘルは称賛を称えながらそう言う
『貴方もね。一体何者なのよ』
まさかアラクネはまさかここまで苦戦するとは思ってもみなかったようだ
『さあ、誰でしょうね』
そう言うとヘルは一気に間合いを詰めもう一度鎌を振るう
しかしアラクネはそれを軽々と避ける
『まあ、私達の任務は勇者の血族の暗殺よ。ひょっとしたらもう死んでるかもよ』
アラクネはヘルから同様を誘おうとした。しかし、
『ユウ様は死んでいませんよ。私にはわかります』
そう。ヘルはユウが生きていると確信していた。何故ならユウが死ねばヘルも消滅してしまうためである。
『貴方こそ、妹さんの方が死んでるかもしませんよ』
そう言いながらヘルは鎌を振るう。
『あり得ないわね。セルケトの実力は私が知っているもの、』
アラクネは自信満々にそう言うと糸を放った
『ふ』
ヘルがそれを避ける
『ユウ様。そろそろ効果が切れます。どうか』
ヘルはまじまじと小さな声でそう呟いた
その頃異空間
ユウはセルケトに話を聞かせていた。祖父アーサーの話。ユラの話。デュランダルの話。ヘルの話。ペルセポネやレヴィアタンの話をセルケトに聞かせていた。セルケトは純粋に頷いたり驚いたりしていた。正直ユウはとても愛らしく思っていた。目の前にいるのは只の女の子。ユウはそう錯覚していた。
『へ~。ユウは好きな食べ物とかないの?』
『ブルークラブの身を一度だけ食べたことがあって美味しかったよ』
そう。普通の、ただただ普通の会話であった、しかし
空間に再び亀裂が入る
『これは?』
セルケトがそう言う。ユウは気付いた。それが出口だと
『まだ、好感度メーターには出てないのに』
ユウはぼそっと呟いた。そう。ヘルの作戦は気付いていた。しかし話し込みすぎて相手を人間だと錯覚したためそっちの方に意識がいかなかった。
『セルケト待っ』
そう言いかけた瞬間には反転世界ガンムデルへと戻らされていた。
『ユウ様』
ヘルが駆け寄ってくる。ちなみに結構ボロボロだった。
『セルケト』
同じくアラクネがセルケトに近寄る。アラクネもボロボロだった。
『どうで、ございましたか?』
ヘルが恐る恐る訪ねる。
『っ。ごめん』
ユウが頭を下げた
『ユウ様が悪いわけではありません』
ヘルは頭を下げるユウをすぐさまに宥めた。すると向こう側にいるアラクネが声をあげた
『セルケト。殺るわよ』
セルケトがコクッと頷くと二人は戦闘態勢に入った。
『ユウ様。来ますよ。』
ヘルも戦闘態勢に入った
『う、うん』
本当にもうダメなのか。と思った。だがセルケトの目は本気だった。本当に姉の指示が無くて暇だったから相手をしてただけとユウはそう現実に叩きつけられた
『終わりよ。勇者の血族。死になさい』
アラクネがものすごいスピードの束ねた糸で作った槍のような物を投げてきた。
『しまった。』
ヘルは対応に遅れた。ユウも考え事をしていたためか逃げ遅れた。そしてユウの首筋に刺さる直前に槍が溶けた。
『な。』
ユウもヘルもアラクネですら目の前の光景に信じられないと言いたげな表情を見せた。ユウの前には、セルケトが立っていた
『なんのつもりよ。セルケト』
アラクネはいきり立ってそう言いながらセルケトをにらんだ
『たくありません』
『は?』
『殺したくありませんっ!』
セルケトは涙しながらそう叫んだ
『どうしてよ。こいつは勇者の一族で』
アラクネそう言いかけたところでセルケトがまた叫ぶ
『私は。人間という生き物が嫌いです。しかし姉様。私は、この人達とは、戦いたくありませんっ』
セルケトは涙しながら叫んでいた
『私は異空間でいろいろな話を聞きました。私が姉様の指示が無いと行動できないと言うことも明かしました。でもこの人はユウは私を殺しませんでした。最大のチャンスなのに、落ち込んでる私を楽しませようと必死に頑張ってくれました!』
『そ、そんなこと、』
『姉様。もう、やめましょう。私はもう、この人達とは戦えません』
ユウは膝を落とし泣いた。するとアラクネも準備していた槍を糸に戻した
『セルケト。あんたが意見してきたの初めてよね。』
そう言うとアラクネはセルケトに近付き抱擁をした
『姉、さま』
セルケトはまた泣きそうな顔をした
『嬉しかったよ。初めて私に反抗して。今回は貴方の意思を尊重するわ』
そう言うとアラクネは立ち上がりヘルに頭を下げた。
『私の、敗けです』
アラクネがそう静かに呟いた
『本当に?いいのですか?』
ヘルはそう問いかけた
『それにあのまま続けていても私の敗けは明らかでした』
ヘルはわかりました。と言うと鎌を何処かにしまった。
『ユウ。また、話してね』
そうセルケトがニコッと笑った
『任せてよ。』
ユウはそう高らかに呟いた
その時上から声がして二人の魔族が降りてきた
『そっちは済んだの?』
ペルセポネがそう早々と問いかけた
『あ、まあ!』
ユウがそう告げるとレヴィアタンが話し出した
『どういうこと?スルト暴走し始めましたたわよ』
そういわれて魔神を見ると魔神は四方八方に攻撃していた
『このままじゃ反転世界が壊されて私たちは死亡。そしてあっちの元の世界にスルトが召喚されるわね』
ペルセポネがそう呟く
『ユウ様。どういたします?』
全員が一斉にこちらを見た。作戦が無いわけでもなかったがこれをするのはと戸惑っていた
『ユウ様。なるべくお早く決断をください』
ヘルがそう言う。
『もう、あれに懸けるしかない。』
そう言うとユウはヘルに口付けをした。
唇が離れるとヘルはなるほどと言う顔をした。そして次にペルセポネに口付けをする。
『ん』
ペルセポネと唇が離れるとレヴィアタンに口付けをした
『ん、んーー』
レヴィアタンは最初は戸惑っていたがユウの背中に腕を回した。
そしてユウはセルケトの方を向いた
『どういうこと?』
セルケトとアラクネはきょとんとしている
『今はみんなと同じように』
ユウはそう言うとセルケトに口付けをした。そしてセルケトもそれに応じた
『アラクネさん』
セルケトと唇を離すとアラクネに顔を会わせる
『良くわからないけど何かの作戦なのね』
そう言ったアラクネにユウは口付けをかわした。
『何これ』
『魔力が戻ってる』
二人は驚愕していた。
『説明は後です。今はあの魔神に本気の一撃をぶつけます。それでいいんですよね?ユウ様』
ヘルがユウに訪ねるとユウは黙ってうなずいた。そして
『皆さん。頼みます』
『任せなさい』
『了解です』
『わかりました』
『セルケト行くわよ』
『はい!姉様』
全員が空に飛び立ちスルトの前に立った
『ありったけのパワーをあの魔神にぶつけてください!』
ユウが叫ぶと同時に五人全員が頷き言霊を唱えた
『我此処に有り。氷の龍よ、炎の巨人よ。光の獣の、闇の悪魔よ。我に力を貸しここにその威力を示せ。四属神魔弾』
『召喚獣達よ、我に力を貸し我の矛となれ。暴走せし力を修めるため力を捧げよ獄炎砲』
『我。魔王なり。汝、魔王の配下における魔獣なり。力による抵抗を止め、今そこに平伏せよ。エス・デス』
『蜘蛛の神よ。生き年生ける全ての生命に理を。如雨露の矛先は敵へと向かえ。ここに我の力を示す。鋼鉄連続糸』
『猛毒を持つ生物よ。五月雨の徐行に行き行く先は死と知れ。苦しみ悶え血を吐き、地獄を見よ。獄毒』
五つの攻撃が全てスルトに命中する。そして攻撃が終わるとスルトは耐えていた。しかしスルトはしばらくすると崩れて行く。
『グガガ』
そして完璧に消滅した。
こうして反転世界にて伝説の魔神スルトを見事消滅させることを成功した。