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エルフの森へようこそ  作者: やゃや
3章「ラビ-LA-DI・ラビ-LA-DA」
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5話「不思議の国よ、永遠に 中編」


 エルフの国の上空、オゾン層を抜けた高度80000m。

 雲すら見下ろす遥か高空を、エロ本屋目指してロケットは進む。

 ロケットの中は、上昇のGに耐えられず気絶する者と、Gなどそよ風同然に耐え、目の前にある未知の領域に胸膨らませはしゃぐ者とに二分されていた。


 Gに耐える訓練も、Gに対抗する魔法も知らない俺は、当然前者。

 意識はとうにブラックアウトし、俺は昔の懐かしい夢を見ていた。


 この世界に生まれる前の夢。

 歪な天使の夢、人の手で造られた天使の夢。

 役割に殉じ、己を殺し、共感や慈悲の心など忘れていた自分。


 そんな自分に、人生を変えるような"音楽"を伝えた、とある女の夢。

 思えばあの時の自分と女の関係は、どこか今のウサ耳さんと俺に境遇が似て……


「……ゃんッ! ……ねえ……リちゃんッ!!」

「うぇぇ……歩くだけで……気持ち悪……っす……」


 夢の中のはずなのに、クリスとルチアさんの声がよく響く。

 もうあと五分待って欲しいな、今回はそこまで悪い夢じゃないんだ。


「……リちゃん! エリちゃん!! 起きて! エロ本屋だよ! エロ本屋についたんだよ!!」


 もうちょっと待ってって言……うん!?

 エロ本!!?


「目が覚めて最初のセリフがそれ!?」

「相変わらずねー」

「うぇぇ吐き気がひどいっす……」


 エロ本という単語が聞こえ、反射的に飛び起きるとそこには、星と月が広がる夜空と大きな城があった。

 伝説のエロ本屋と思われる、大きな建造物がそこにあった。

 巨大な城壁に囲まれたその建造物は、まさしく中世のお城そのもの。

 そして、入り口らしき大きな門は硬く閉ざされている。


「ホントにあったのよ伝説のエロ本屋、アホみたいな名前なのに……」

「まだ本物かどうか分からないよ! ちゃんと中にはいって確認しないと!」

「いや、思いっきり看板に書いてあるから……伝説のエロ本屋って……」

「通称とかじゃなくて本当にそういう名前なんすね!?」


 とりあえず写真とってウサ耳さんに送っとこう。


「そういうとこマメよねアンタ……」

「ねえねえ、みんな何モタモタしてるの? 早く中に入ろうよ! 探検しよう探検!!」


 ちょっと待てよ、ここは警察から逃れるために作られた場所だよ?

 迂闊に動いたら何が起こるか……


"不正な侵入者を発見しました、迎撃システム作動しまス"


 ほら、いわんこっちゃない!!


"あーあー、こちらは警備員、侵入者に警告する! 招待券の提示をしろ! 持っていないなら目的を提示した上で警察でないことを証明しろ! 三度目の警告までに行われない場合、攻撃を行うのであしからず!"


 城壁の一面から、銃口らしきものが複数覗いている。

 "いつでも撃てるぞ"ということなのだろうか。

 

「招待券あれば攻撃しないんだ?」

「ロケットに乗ってる間に攻撃されなかったのはこういうことなのね」

「どうするんすか!? 戦闘っすか!?」


 目的を提示してもいいって言ってたし、まずは話し合おう。


「そうね! じゃあアリエルちゃん! 服、脱いで?」


 ……

 ……

 ……は? この状況で何いってんの前髪さん!?


「私達がここに来た理由は何? エロ本でしょ!?」

「なるほど、摘発に来た警察とかとは違うことをまずは示すんだね?」

 

 だからって服脱ぐのはおかしくないかな!?


「でも警察は下着姿で交渉なんて自分からは絶対しないわよ?」


 そうだけど! そうだけど!


「アンタいっつも自分から裸見せにいってるじゃないの、我が美しい肢体を見よ! とか言って」

「適役だね!」

「今更カマトトぶってるんじゃないっすよ!!」


 違うんだよ! 自分から脱ぐのと無理矢理脱がせられるのは別物で!!


「痴女の理屈なんか知らねえっすよ!!」

「もう力づくで脱がせましょうよ」

「無理矢理はダメよレイチェルちゃん」


"二度目の警告だ! 目的か招待券の提示を!"


「でもここのままだと蜂の巣っすよ!?」

「そうね、私達の命はアリエルちゃんの選択にかかっているわね」

「あれ? これ誘導尋問じゃない?」


 ……うう、分かったよ! 脱ぐよ! 脱げばいいんだろ!!


"最後の警告だ、俺が言葉を終えるまでに何も無ければ……"


「あーはいはい! 今行くわ! 今交渉役が行くわ!」


"招待券は持ってないとういうことだな?それではまず目的を話して…………"


 ……。


"……え、何してんのお前"


 ……み、見ての通りエロが目的で来ました……。


"聞きたいのはそっちじゃねえよ! お前はなんで服脱いで外に出てんだって聞いてんだよ!?"


 わかってるよ! 俺だってこんなの変だってわかってるよ!!

 機械なんぞが俺の美しい肢体を理解できないことなんてわかってるよ!!


"いやこれ遠隔操作だから! 操作してるのは生身の人間だから!"


「二人ともツッコミどころはそこじゃないと思うよ!?」

「頑張って下さい警備さん! ちゃんとツッコんでその人をまともに矯正してやって下さいっす!」


"あんたら俺に何させようとしてるわけ!?"


 殺せーー!! こんな辱めを受けて生きていられるか!!! もういっそ殺せーーー!!!


"お前は騒ぐんじゃねえよ! 服着ろよ! 他の客に迷惑だろうが!!!"


「あのーアタシら見ての通り警察じゃないんで、店の中はいってもいいですかね?」


"いや、わかるよ!? こんなのが警察なわけないのは十分わかるよ!? でもさ! こんな変態を店の中に入れて下さいってのもおかしい主張だと思わねぇのかな!?"


「すみません……店の中では服を着るようちゃんといいつけますので……」


 ねえ待って! なんか俺が好きで裸見せてるみたいになってない!?


「いや、いつも自分から裸を見せてくる変態なのは本当じゃないっすか」


 無差別じゃないから! テンション上がった時だけだか、痛ッ!?


「いだいっす!?」

「ごめんなさい警備の人! この通りアタシが責任もってちゃんと止めますから!」


"ああもう、わかったよ! しっかり見張ってろよ!? ここは婬行する場所じゃねえんだからな! 買い物と読書をしに来る場所なんだからな!?"


「通していいんだ!?」


"なんでこの店に来るのはこんな頭のイカれた奴ばっかりなんだよ……"


「茶飯事みたいね……」

「おつかれさまっす……」


"いいか、中には入れるが絶対問題は起こすなよ! いいか、絶対だぞ! 特にこの城の創始者を怒らせるんじゃねえぞ! 絶対だからな!"


「ネタ振りかな!」

「止めなさいクリス、これ以上面倒増やさないで」

「……え? どう聞いても今のネタ振りじゃないっすか?」

「ルチア! アンタもか!!」


 ねえさっき殴られた頭超痛いんですけど!

 これ絶対、脳細胞たくさん死んでるんですけど!


 "お前らいいからもう黙れ! 今開けるから! 門開けてやるから静かにしてくれ! 他の客の迷惑なんだよ! とっとと中に入れ!"


「ほんとごめんなさい! アタシ達すぐ入りますから!!」

「レイチェルちゃんお母さんみたいねー」

「やめて!! 私そんなに年齢言ってないから!! まだ身を固める年じゃないから!!!」


"いいから中に入れっつってんだろうがボケ!!!"




 警備の人の罵声を背に浴びながら、城門を潜ると、そこは巨大なエントランスホールであった。

 入ってすぐには案内の看板があり、ホールから伸びる通路の先には、たくさんの本棚が並ぶ書庫が幾千幾万も連なっていた。


「"伝説のエロ本屋"なんていうからもっと俗っぽい場所を予想してたんだけど……」

「なんか図書館みたいだね?」


 確かにお堅い感じで息がつまりそうだ。


"当然です、ここは本来エロ本屋などではないのですから"


「!?」


 我々の背後から、突然女性の声が響いた。

 背後を振り帰ると、そこには眼鏡をかけたスーツ姿の女性が。


「ここは"エロ本屋"などではありません、禁忌の魔術書庫"ジェフティ"なのです!!」

「誰?」

「なんすかそのダサい名前……」

「"エロ本屋"等というのは禁忌魔術の保管をカモフラージュするための、いわば囮なのですよ」

「無視!?」


 こいつも話を聞かないタイプの人か!!


「"エロ本屋"ってのは! カモフラージュだったのですよ! カモフラージュだったのですよ……」

「二回も言わなくていいっすよ……?」

「でもね!? 禁忌魔術なんてものは誰も求めていないんですよ! 需要ないんですよ! エロ本の方がはるかに需要高いんですよ! わかります!?」


 そりゃまあ実生活で使えない魔法より、そっちのほうが売れるよね。


「経営だ維持費だなんていってるうちに、気が付けば禁術の書庫は隅に追いやられ! エロ本が占めるスペースが9割を超え! あっという間にBLだのGLだのの特殊性癖がこの図書館を牛耳っているんですよ分かります!?」

「いや、あの……ウチら時間ないんでお話するなら別の機会に……」

「私ね! "禁断の魔術の管理人"なんてかっこいい職業に憧れてこのお城作ったんですよ! でもね? 今ではエロ本屋の店長! すごいでしょ! おかしいでしょ! 笑えるわよね!」

「作ったって……つまりお姉さん、ここの創始者!?」

「それもこれもエロ本も取り入れようなんて言った別の仲間のせいなんだけどね!! 特殊性癖の受け入れをすれば伝説になれるなんて甘言をしたアホのせいなんだけどね!! あなた方には何の関係も責任もないんですけどね!!」


 あの……それでなんで俺達に構うんです? 俺達にどうしてほしいんです? 


「ふふふ、決まってるでしょう? 貴方達に、エロ目的の客に、正しい認識を植え付けるためよ!」

「正しい認識って……?」


 もう嫌な予感しかしない……


「貴方達の体に! 一生消え無い記憶を植え付けるのよ!! ここはエロ本屋じゃなくて禁術の保管所だと!! 一生消えない恐怖で正しい認識を覚えさせるのよ!!」


 結局そうなるのかよ!!


「つまりどういうこと?」


"ククカカカ!! 我が禁術は、イギッ……肉体を次なる次元に、ガッ! 進める魔法!!"


 メガネのお姉さんの体が、見る見るうちに変貌していく。

 スポンジみたいな海綿体の翼に、ブドウの茎みたいな針金じみた異形の姿、どこかで一度見かけたような異形の姿に。

 時計塔の守護者と同じような姿に!


"ジェフティの名を汚さぬタめ! 本来の意義を忘れヌため! 貴様らには程ほどに痛い目にあってもラう!!"


「割とやることぬるいんすね!?」

「ていうかさっきからやたら説明的だし、それに創始者が直々に動くのもおかしくないかしら?」

「もしかしてこれ歓迎のアトラクションの一環だったりするのかしら!?」


"け、決してそういうものではないが! ききき、貴様らには痛い目にあってもらうぞ!!"


 アドリブ弱いな創始者!!?


"やかまシい!! せっかく新たな客へのもてなしを考えてヤったのに! 余計な横やりを入れるなど!"


「ね、ねえエリちゃん、私思ったんだけどさ」


 急になんだクリス!? 今この状況で何!?


「さっきの警備のおじさんが言ってた"創始者の人を怒らせるな"ってさ……」

「……あ、適当に話しを合わせておけってこと……なの!?」


 ……あー……あー、あー! そういう! そう言う事か!!


「……つまり、どういう事っすか?」


"貴様ら無礼者に、我が城にいる資格など無い!! 力尽くで追い出してやる!!"


 に、逃げろおおおお!!!

 とりあえず逃げろおおおおお!!!


 時刻19;00、ウサ耳さんの船が出港するまであと1時間。

 命がけの追いかけっこをしながら、時間以内にウサ耳さんの宝物と同じ本を購入する等という、不可能に近いミッションがここから始まった。



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