エピローグ
幽霊ババアと変態4人衆の騒ぎから数時間後。
「あっはははは!!!!」
嘘つき! 嘘つき! 笑わないっていったじゃん!! 笑わないって言ったじゃん!!
「だって! "†火星に降りたった熾天使†"て!! こんなん笑うしかないじゃないっすか!!!」
「背中に羽根生やすって悪趣味極まりないでしょう!?」
俺がやりたくてやってたわけじゃないし!! 火星の奴らがやれっていったんだし!!!!
「でも、いくらなんでもこれは……ッ! あはははは!!!」
前髪さん家の実家、本宅の大豪邸。
その中の一室にて、俺の黒歴史の観賞会が行われていた。
前髪さんの両親によって詳細に調べ上げまとめられた俺の前世のアルバムは、それはもう様々なものが写真に取られていた。
「あー!! みてみて!! これもしかしてこれ子供の頃じゃないの!!? やー!! かわいいじゃないの!!」
「おー、こっちはなんかパイプに繋がれてるっすね!」
「これ培養液に浸かってるけどどうやって息してるのかしら?」
「ちんちん! ちんちん生えてるよ! ちっちゃい! こどもちんちん!」
「この辺からはついてないわね」
ああああああ!!!! やめろー!! 見るな! 見るなあああ!!!
「見て欲しいっていったり見るなっていったりどっちなんすかエリちゃんさん」
だって! だって! こんなとこまで載ってるとは思わないじゃん!!
「おーおーやってるねぇ」
「みんな、アリエルちゃん涙目になっちゃってるからほどほどにねぇ?」
ななな、泣いてねーし! 冬の寒さが目に染みただけだし!!!
「あ、パパ! ママ!」
「この家は好きに使っていいから、みんなと一緒にたくさん楽しみなさいミシェルちゃん」
「うん!」
我々五人は前髪さんの両親の計らいにて、しばらくこの豪邸に泊まる事となった。
各々の保護者に連絡も済み、今は全員が客間でだらだらしている。
壊れた遺跡や森は修復がすでに半分以上終了しており、アーマードケルベロスは相変わらず構ってほしそうにあちこちうろちょろしている。
あの実に馬鹿馬鹿しい騒ぎは、無事平和的な終結を迎えたのだ。
「ああ、そうそう! 屋敷の西に温泉があるの! よかったら使って?」
「え!? そんなんあるんすか!?」
「遺跡を改造してテーマパークにするって言ってたでしょう?」
ってことは周辺に色々と娯楽施設あってもおかしくはないな。
「まじっすか!?」
「あー、でも水着持ってきてないわよ」
「用意してるに決まってるでしょう!? 全員分、サイズもばっちりよ!」
「準備いいねミシェルさん! それじゃみんなで入ろう!」
え? 俺も入るの……?
「おやおや~?もしかして裸みせ合うの怖くなったんすか~?」
「あれれー? エリちゃん普段自分のこと超絶美少女だなんだ言ってるくせにそういうとこでビビるんだ?」
あ? 誰がビビってるって!?
おまえらの貧相な胸に誰がビビるって!?
「この野郎言ってはいけないことをいったっすね!?」
「戦争だよ!! 風呂場で白黒はっきりつけるよ!!」
上等だこの野郎!!
水着においてもこの俺は超絶美少女だ!
てめえらなんざこの俺の色気でぶち殺してやらあ!!
「うおおおお!! 一番乗りはいただきっす!」
「うぇえ!? ルーちゃんこの場で水着に!?」
「ふふん! 最も先に戦場にたどり着くことで! ウチはアドバンテージを得るっすよ!」
ああ! 抜け駆けは許さんぞ! 俺も同じ手でいかせてもらう!
「ああ! パクリだ! パクリだ!」
「ちょっと二人とも!! 服脱ぎ散らしていかないでよ!!」
「待ってエリちゃん! 私も行くから! 一緒に行くから!」
「赤毛さんまで……あらあらまぁまぁ……」
うおおおお! 一番はこの俺だああ!!
「もう、どいつもこいつも……あーあー服がぐっちゃぐちゃ……」
「とりあえず片づけてから私達も行きましょうか、あらあらパンツまで脱ぎ散らかしちゃって…………ふふっ……」
「ほんとだらしないったらありゃしな…………え? ミシェル?」
「な、ななな?! 何!? レイチェルちゃん!? 私がどうかした!?」
「え、だって今、そのパンツ……頭に……」
「ち、ちがっ……これは!その……っ!」
「みんな!! 大変よ!!!! ミシェルが! ミシェルがパンツ被ったの!!」
え? ミシェルさんがパンツ被った!?
「マジすか」
「なんで戻ってきてるの!!?」
いや、よく考えたらこのまま風呂に入ると上がったあと着替えがないからさ?
「馬鹿じゃないの!? みんな馬鹿じゃないの!?」
「でもミシェルさんがパンツ被る歴史的瞬間を見れるから! 私達馬鹿でいいと思うよ!」
「いやまだ被ってないから! 被ってないからね!?」
”まだ”?
「あ!? いや、ちがっ! そうじゃなくて! ううぅ……もういやあああ!!! おうちかえるうう!!」
「何いってるのミシェル!? ここあなたの家でしょ!?」
いかんミシェルさんが逃げた!
「じゃあ4人で包囲を作ってじわじわ囲っていこう!」
「了解っす! さあ姉御も手伝うっすよ」
「え? ……はぁ、ああもうしょうがないわね!」
「ねえなんであなた達さっきまで喧嘩してたくせにこういう時だけ息ぴったりなの!?」
パンツ被ればわかるんじゃないかな!
「なんでパンツなの!? ねえなんでパンツなの!? もっと他のでもいいじゃない! もういやああ!!!」
機械で出来た冬の森、馬鹿達の叫びは変わらず響く。
その声の輪はどこまでも楽しそうで、嬉しそうで、遠くに遠くに響いていた。
機械でできた冬の森、そこには馬鹿しかいなかった。




