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即物的だからすぐに結果が知りたい21世紀の堪え性のない大人たち






※「巨神計画」の内容にかなりふれています










三部作かよ!しっかかり続く系の! なら言えよ!


「嶋井さん怒ってます?」

「怒ってます、怒りのデスロードです」

「『巨神計画』つまんなかったですか? まあ面白かったけど、ロボットバトル、かと思ったらロボットの所有における政治の話になって、戦争活用の話になって……想像してたものとどんどん違っていって、結局どういう話なのかわかんなかったですけどね、地球外生命体からの」

「逆にさ、そうやってこれは◯◯の話だってジャンル先入観で読んじゃって矮小化してしまわなくて、すごく良かった。退場したマッドサイエンティストが結局わからない、なんかやらかすだろうという時限爆弾のドキドキが良い。結末を知らないってそういうことだと思うんですよ」

「続き気になりますねー」

「そこ! 三部作なら三部作と最初からいえ! あんだけ面白さ煽っておあずけくらう読者の気持ちを考えろ! 心の準備させろ!」


あおった焼酎で胃が熱くなる。

読了のパーセンテージと物語の結末への向かい方に差があるのが気にはなっていたが、まさかまさかあんなに「つづく」の形で終わるとは。三部作とは……。


「『全滅領域』も『氷』もとりあえずは、謎が残ってるのはあるけどさ、とりあえずは終わりになったんだよ。でも、もう完全に続くじゃん。めっちゃ気になる引きじゃん! しかも次の刊行予定とかないじゃん。インタビュアーの正体はたぶん当分明かされないとは思うけどさ、あのラストってないよ!」


酒が、酒がしょっぱい。

大将、こんなあたいにおかわりをおくれよ、え? やめときなって。あたいのことなんてどうでもいいんだよ。優しくなんてしないでおくれ。みたいな中島みゆきの気持ち。

酒に溺れてみせたふりをしたところで次作が現れるわけでもなし、佐野さんがまあまあと勧めるタコわさをちびちびとつまんで一息いれる。わ、タコかと思ったらわさびのほうだった。


「エヴァ以降はやっぱ人造人間系ロボットが私の中では主流だったけど、この金属みっしり系ロボットの時代が来た。どう動くかなんて細かいことはいいんだよ。重いことはいいことだ! 大艦巨砲主義!」

「配線でうじゃっとしてるほうがロマン感じませんか」

「あー、それね、それもあり。血管のようにじゃらっとした配線引きずる壊れ掛けロボット……そう言うのが好きな時代もありましたねぇ」


たっぷり出汁の厚焼き卵を頬張って配線好きな若かりし頃を思い出す。当時と今の私、言動にさほど変化ないな。


「そういうロボット、なんでしたっけ? アニメか漫画で……」

「いや、めちゃめちゃいろいろありますよ。そもそもロボットがロマンですよ」


焼酎(寒いのでお湯割)をまた一口飲んで噛みしめる。そう、ロボットはロマン、インザスカイ!

早くイングラムが配備される警察こい、レイバー犯罪が活発化しろ!


「この表紙、かっこいいですよね、これ三部作全部で1枚になる絵だったりするんですかね、下半身も見たいですよ」


佐野さんはカバンから上巻を取り出した。


「え、本で買ったんですか?」

「嶋井さん買ってないんですか?」

「だって電子書籍化してるもん、Kindleで買いますよ」

「……本が好きな人は紙でないとダメなのかと」

「紙で買ってたら置いとく場所なくなっちゃいますよ、 無理無理。ひょっとして佐野さん、これまでの本、全部紙で買ってるんですか?」


そう、もう漫画や小説を大量に部屋に置いとけないのだ。紙しか出さない作家は私たちの本棚事情を知っているのだろうか? 本のための広い部屋を借りる家賃補助をしてくれるのだろうか? 答えはノーだ。なら、私たちに選択肢を与えてくれ。

それからハヤカワ文庫は背が高くなってからというもの本棚が揃わずイライラするから買えない心の病気なんだけど、これどこで治療できますかね。


「紙じゃなくていいんですか?」

「まあ近未来に脊髄あたりからプラグ差し込んで直接書籍をダウンロードするって未来ではあえて紙で読むをやりたいんで、そういう未来のために基子はその前段階の電子書籍化を応援します!」

「結局紙じゃないですか」


ハーモニーのミァハやPSYCHO-PASSの槙島って紙の本派だったけど、いや、結局文字情報おんなじように目から得ているんなら紙でもデータでも変わんなくね? それよりも攻殻機動隊の電脳化っていうか、あのバーコードで読むってのになったら「紙の本を読みなよ」ってドヤりたいわぁ。


「映画化する前に三部作全部読めるのかな。完結前に映画しちゃって矛盾はじめましたなそんなことにならないかな。心配だなあ」

「面白かったけど、完結してないから最終ジャッジはできないですよね、これ」

「あ、佐野さんもそっち派!? 私も私も! やっぱラストで全部台無しってあるよね。どんなに最初が面白くてもラストがダメなのは『素晴らしい』とは言い難いよね。」

「さすがに映画化決定した会社? エージェントはレジュメもらってて完結までの道筋的なものは知ってての映画化だとは思いますけどね」

「いやー、あくまでドリフトですらない箇条書きでしょ? 不確定要素多すぎない?」

「でも、このロボット組立つところ、映像で見たいですね」

「確かに。冒頭の手の中にすっぽり収まる女の子のビジュアル、最高に見たい。あと掘り出すところの作戦見たいし、海底に沈むロボット見たい」

「結局全部じゃないですか」


てへぺろ☆

なんかビジュアル的にかっこよすぎて、ワクワクしちゃうんだいな。これ。それも全てこの表紙が最高にかっこよく、期待させるんだよな。この表紙は今年のベストだわ。


「Kindleで読んだ順に並べてるから、下巻読んだら上巻も開いて、ライブラリに表紙が綺麗に並ぶよう常に気を配ってかっこよさを保つようにしているんです」


美は1日してならず、常にダウンロード済みの画面に気をくばるのです。ひかええおろう!と、佐野さんにスマホを見せつける。


「これが嶋井さんの本棚か」

「あ、だめ!見ないデェ!恥ずかしい!」


私のスマホを手に佐野さんはいった。

本棚やCD棚、娯楽のものが集まっている棚というのはその人の全てがさらけ出されているようで、見られて恥ずかしいし、すごくゲスい目で舐めるように上から下から見てしまう。

そこに本当にその人のパーソナリティがあるのかどうかなんて本当にわからないが。だが、恥ずかしい。


「えー、減るもんじゃないしいいじゃないですかー」

「やめて! これ以上心を侵さないで!」


スマホを取り返そうにも長い腕に阻まれうまくいかない。

0円になってる時に気になって買ってみたもののあんまり面白くなくてそのまま買ってないものとかあるからやめてー! 買ったからには最新刊まで揃ってないとなんかだめじゃないですか? あと懐かしくてうっかり買ったミラクルガールズとか恥ずかしいからみないで! ミラクルガールズはセーラームーンとともにあの頃の仲良しを支えていたんだから、もっと再評価しなさいよ。セーラームーンの次はカードキャプターさくらって風潮、ダメ、絶対!


「あ、この表紙かっこいいですね」

「だろぉ?」

「清々しいまでにドヤ顔ですね。尊敬の域です。はい。スマホ返しますね」


ニヤニヤ笑いながら佐野さんは私にスマホを返してくれたんだけど、そのニヤ二ヤがなんかムカつく……。

戻ってきたスマホでなんとなくKindleストアを覗く。


「電子書籍は売れないけどセールがあるからなあ、あ、ギブソンのニューロマンサーが電子書籍になってる!?」


飯食ってる場合じゃねえ!

「巨神計画」シルヴァン・ヌーヴェル……地球上に眠るロボットのパーツあつめ!6000年前に誰かが残したロボット! 大きな権限を持つ謎のインタビュアー!マッドサイエンティスト!プロット段階で映画化決定! かっこいい表紙! と買わない理由がないその新作はなんと三部作であった……。つらい。


「全滅領域」ジェフ・ヴァンダミア……謎の境界で分断されたエリアXに向かう調査隊。はたしてエリアXとはなんなのか! 三部作全部読んでもエリアXがなんなのかピンとこなかったんですが、一作目全滅領域は面白かったですよ。ほんと。ナタリー・ポートマンで映画化。


「氷」ウラジミール・ソローキン……氷のハンマーで胸を殴られることにより八割くらい死んじゃうけど金髪碧眼の一部の人間だけが目覚めて「原初の光」の再生を目指す23000のメンバーとなる。刊行された順番が第2部、第1部、第3部なのでその通りに読んでほしい。え、金髪碧眼じゃない人はどうなるって、わたしらみんな肉機械だよ。


下半身も見たい……ネタバレ?になるからか表紙はロボットの上半身のみ。かっこいい、めちゃかっこいい。


広い部屋を借りる家賃補助……ほんと、本って場所取るんですよ。そりゃ図書館みたいな家って憧れですけど、現実問題無理ですわ。


ジャックインで読む……攻殻機動隊みたいにプラグある系の近未来を待っています。


基子は◯◯を応援します……バーチャルネットアイドルちゆ12歳のキメ言葉「ちゆは◯◯を応援します」まさかちゆがYouTuberになるとは……。このままいくと侍魂もYouTubeでお目にかかれる時代になるのかネェ。だとしたらウガニクとかクリラバとか……。おいおい今は20世紀かよ。あ、ヘキサゴンはもう見れないんだ。


ハーモニーのミァハやPSYCHO-PASSの槙島……「紙の本を読みなよ」のお二人。まあ読書に雰囲気も重要だねってことはわかる。


完結してないから最終ジャッジはできない……完結していないのに名作と讃える風潮がどうにも馴染めない。この理由から「このマンガがすごい」はなんか不思議な感じがしている。


Kindle……作者順の場合、冊数の都合で行がまたぐ場合はわざわざ一冊買って調整するくらいのオタだわ。そう思うととっても変な気分。→アプデで漫画はまとめるようになってしまったが小説でもこれやったら殺す!


本棚精神分析……なぜなのか、丸裸にさらされているような気持ちになるのは! しかし他人の視線を気にして読書なんかするな! でも気になっちゃうの! そう、本棚は人生。


「やめて! 心を侵さないで」……新世紀エヴァンゲリオン弐拾壱話、アスカの精神汚染中のセリフ。日常会話にセリフ折り込みがちなオタ。


ミラクルガールズ……秋元奈美作。実は第3部ディアマス公国編しか覚えていないのですが、ディアマス公国編が大好きすぎて、ミラクルガールはもっと評価されてもいいんじゃないかと思っている。ほんと、あの頃のなかよしを支えていたんだぞ!宝塚に改革が起こって娘役主役のミュージカルもできるようになってあのころのなかよしが宝塚化されますように。

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