Aphex Twinの曲名はID、パスワード向き
「氷と炎の歌」を読むときは人物一覧とか地図とか見なくちゃいけないからページがあっちこっちして、ほんと電子書籍に不向き。こうなんか、ワイプで表示されるみたいな、画期的UIが生まれたら電子書籍の勝ちだよなあ。絶対的紙媒体信者ではないけど、こういう巻末の注を頻繁に読まないといけないものに関しては、紙に軍配が上がるなあ。あと「スキゾ・エヴァンゲリオン」「パラノ・エヴァンゲリオン」の電子書籍化は非常に嬉しかったんだけど、紙ほどの読みやすさ感、クイックジャパン的情報量を感じられなかったんだよなあ。
と、電子書籍を堪能し電池をガンガン減らしている最中にlLINEの通知が入った。
「火星の人、面白かった!」
ダイレクトすぎるスパムかと思いきや、居酒屋の星を継ぐノヴァ急報イケメンだった。アイコンが顔写真でわかりやすくありがたかったけど、顔なんだ。そうですか。
ところでLINE交換したっけ?
「気に入ったようでよかったです」
まあね、面白いに決まってるじゃん。ブログから自費出版で映画化だもん。わかりやすいけどSFっぽい科学的なウンチクもあって、でも難しさを感じさせないさじ加減、最高だろ。
「火星にひとりで農業ってTOKIOかよって(笑)」
「映画のとき『火星DASH村』って言われてましたね」
笑う猫のスタンプ。可愛いスタンプだ。
「宇宙で液晶凍るって当たり前だし、笑ったけど、たぶん俺も宇宙でたら同じ失敗しそう。つーかやらかす」
「NASAは凍らない液晶の開発をするけど、ソ連ではノートパソコンの持ち出しを禁止するパターンだ」
大爆笑のパンダのスタンプ。
スタンプかわいいな。
「よくわからない超科学じゃなくて今ある科学の延長にあるの面白い!超高速ロケットとかで救出じゃなくて」
「この話はいつなんだろ、年代書いてないけど」
「急なトラブルは降ってくるし、炎上して徹夜デスロードはどの国でも同じという主題」
「え? そこ? 人類愛とか助け合いの精神の話じゃないの!?」
「サプライの打ち上げの突貫作業からの失敗、さらなる作業のシーンを読んで俺は泣いたよ……。NASAの下請けする名もない作業員たちの苦労……」
「いや、ワトニーの命かかってるからね……」
「ディスコ聴いてジャガイモ育てて寝てるだけじゃん」
「それが地球ならいいけど、火星だからね」
てへぺろのスタンプ。
「これ、映画だと『オデッセイ』ってタイトル、なんで?」
「やっぱ「2001年宇宙の旅」リスペクトだと思う。宇宙服のデザインとか」
「映画も見てみよう」
「映画は映画で面白いよー。マット・デイモンだから死にそうにないからハラハラしない」
「マット・デイモンは死なない(笑)周りが死にそうになっても助けてくれる」
頷くウサギのスタンプ。
私より女子力高いな。
「SFって宇宙船で大戦争的なそういうのかと思ってました、というかスターウォーズ」
「そういうのもありますが、スタートレックとか。こう現実と地続きなSFとか、まあいろいろありますよ、なんでもあり」
「こういう現代っぽいので他にあります?」
「藤井大洋の『オービタルクラウド』は2020年の地続きなSFですよ」
地続きすぎてもなんか恥ずかしい感じになるのは私だけだろうか。テレビで2ちゃん語が出てくるような照れくささ。
「嶋井さんいつも木曜日に飲んでるのはなんでなんですか? 金曜じゃなくて」
急に話題変わったな。
「私、仕事が木曜日たてこむんでつい帰りに飲みたくなるんですよ、金曜はどの店も混むし」
なるほどのクマのスタンプ。いちいちスタンプ可愛いな。
「なるほどー、仕事って何関係ですか?」
「人材派遣会社系です。私の仕事が木曜ピークな感じで」
「そうなんだ、あの辺飲み屋は多いけど会社も多いから金曜は確かにね」
混んでる店にはいいことないしね。
「穴場あるんですよ。次の金曜、飲みに行きませんか? 」
え?
「課題図書はオービタルクラウドで」
なんか読書会みたいになってきたな。
「私はもう読了してるんで課題なの……」
ここまで打ち込んで名前を思い出す。えっと、佐野、だっけ? あ、LINEの名前も本名で入ってる。すごいな。IDに本名使う発想がない。ちなみに私はvordhosbnをベースにアレンジしてIDにしている。ここ10年はこれ。それ以前はうぅ、頭が、頭がいたいよ兄さん……。
「私はもう読了してるんで課題なの佐野さんだけですよ」
「読み返しておいてくださいよ(笑)バルなんですけど、食べ物美味しいですよ」
「座れる?」
「椅子席ありです」
「じゃあいいです。今週?」
「19時に駅でどうでしょう?」
無難な楽天パンダのオッケーのスタンプ。
可愛いペンギンがよろこぶスタンプが帰ってきた。
あれ、なんか一緒に飲む流れになってる? まあいいか。美味しい店紹介してもらえるのもありがたいし。
「待ち合わせとかはおいおい、LINEで連絡します」
私が持っている精一杯のスタンプ、LINEのデフォルトのクマのスタンプのいいねで返す。
「みてみてー!おっぱい!(・Y・)」
それ、呟きたくなるよね、わかる。
氷と炎の歌……ジョージ・R・R・マーティン著。ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の原作。ドラマから入ると原作の登場人物の多さにびっくりして、登場人物多い系苦手な人を泣かせにかかる。あとこの作品の問題点は完結しておらず作者も高齢だということ。
「スキゾ・エヴァンゲリオン」「パラノ・エヴァンゲリオン」……エヴァンゲリオンの副読本。いや、あの世紀末の副読本。
火星の人……アンディー・ウィアー著。火星に一人ぼっちにされたマット・デイモンが水作ったりジャガイモ育てたり古い通信機修理して地球と再交信できるようになってトラック野郎で火星を横断して地球に帰ろうと頑張る話。元々はブログで掲載し、人気が出てkindleで販売となる。作者アンディー・ウィアーは飛び級で大学進学し、15歳でもう国立研究所でプログラマーとして働いていたチートという、なろう的な半生である。
火星DASH村……え、脱出のためのロケットないの? じゃあロケット作るか。作るってどこから? 鉄から?
下請けのデスマ……NASAの下請けもやっぱりきつそう
頭がいたいよ兄さん……「ナイトヘッド」本編では一度も武田真治はこう言っていないらしいよ!?
みてみてー!おっぱい!(・Y・)……NASAから「全世界に中継されている交信なので発言には気をつけるように」と言われた直後の主人公の発言。無意味に呟きたくなるツイート。実際に映画ではカット。わたしも大好きなシーンだっただけに残念。