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嘘はつきたくないけど誤魔化したいとか

・5


現状では集中して炎を発生させるのに2~3秒かかる、といったところか。だが流石にこれでは実戦では使い物にならないだろう。まずは集中しなくても炎を出せるようになろう。


ご主人様に斧を返すとレイピアを貸し与えられたので、その訓練も並行して行う。すでに兎の動きは見切った。


練習のときは右手に炎を発生させたが、武器を持つ関係上魔法は左手で扱ったほうがいいだろう。


相も変わらず兎に包囲をさせ、死角から突撃してくる兎をかわして突く。レイピアは使いよいな。狙い通り首を貫けたので、自分の技量は上がってるのだろうと確信を覚える。そして一瞬だけ左手に意識をさき、炎を発生させる。そして、その炎が手前に飛んでいくようにイメージする。が、思ったよりも速度が出ない。当然ながらそれにおとなしく当たってくれる兎達ではない。さっと散開して死角から突撃を仕掛けてくる。


体勢が悪かったので前に転がるようにして避け、今度は炎が伸びるイメージとともに左手を振るう。だが温度がそれほどでもなかったらしく、兎の群れを一瞬だけ怯ませるに留まった。


速度、形状、温度。それらのイメージを一瞬で魔法にこめるのは一朝一夕でできるものではないか。地道に行こう。


剣で15、斧で5、レイピアで5羽兎をしとめたところで、


「そろそろ打ち合わせして村に向かおっかー。」


と声がかかったので


「わかりました。」


と返事をしてご主人様の元へ向かう。



「今から向かうのはヒトの領域の村だからー、魔族ってばれたらちょっとまずいかもなんだよねー。でー。これからちょっとした設定を言うからー覚えてねー?」


いつもの軽い調子だが、内容は割りと重くないだろうか。否もないので肯いておく。


「えっとねー。ブラック君は記憶喪失ってコトでー。気がついたら森の中にいて、困ってる女性がいたから助けて村まで護衛をしたーって感じー?自分の過去は名前以外一切わからない・・・。って言っておけば大抵どうにかなるでしょー。でー。わたしなんだけどー。大陸の東の方で行動してた回復魔術師ヒーラーってコトにするねー?。事実そうだしー。でー。何かの転移魔法で森に飛ばされてー、運よく小屋を見つけて寝泊りしていたんだけどー、そろそろ手持ちの食料が心許なくなってきたからー、小屋を出ようとしたところでーブラック君を見つけてー。村まで護衛してもらったーって感じでー。大筋としては嘘を言ってないから大丈夫でしょー?」


一気に言われたので全部は覚えられなかったが、俺が記憶を持ってないと説明すればいいことだけはわかった。お約束の嘘発見魔法とか有りそうだし、なるべく嘘にならない言い回しを心がけよう。


「あーそうだー。呼び方も変えなきゃだねー?ご主人様ーじゃなくてミュウハって呼び捨てにするかミュウハさんでどうかなー?でも心の中ではミュウハサマーって呼ぶんだよー?わたしはどうしよっかー。ブラックさんって呼ぶことにしようー。いいかなーブラックさん?」


「わかりましたミュウハさ・・・ん。」


ブラックさんか・・・。ブラックサン?うっ・・・。また頭痛だ・・・。

なにかを・・・おもいだすのか・・・?



圧倒的な量の情報が頭に入ってくる。頭が割れそうだ。


「ぐっ・・・がぁ・・・っ!ノブヒコォォォォォォ!!!!」


「わ!何ー!?大丈夫なのブラックさんー?」


「俺は・・・太陽の・・・欠片・・・。はっ!いやもう大丈夫ですミュウハさ、ん・・・。前世の記憶がまた少し思い出されただけですので。」


ちょっと錯乱してしまったが、意識はしっかりしている。今回思い出したのは特撮ヒーローものの記憶全般らしい。前世では好んで観ていたのだろう。そういえばこの世界に映像媒体や、それがなくても演劇系の娯楽はあるのだろうか。あればいいな。


「そっかー。急に頭抱えて具合悪いのかなーって思ったら叫びだすんだもんー。まーでも全部思い出せたわけじゃないなら記憶喪失ってのはそのままだね。おぉー。いっぱい知識が流れ込んでくるー。太陽・・・あー。光源星様みたいなものだねー。なるほどなるほどー。光源星様に関しては森を抜ければ見えると思うよー?キミはそのかけらなんだねー?よくわかんないけどー。」


どうやらこの世界にも太陽と似た星はあるようだ。


「いえ、それはただの歌の一部分です。俺がどうこうとかじゃないです。」


「なるほどねー。じゃぁー。わたしたちの公称設定も決まったことだしー。村に入る準備をしようー。」


すぐ森の出口ってわけではなさそうだが。


「ここで、ですか?」


「あんまり村に近いと見つかっちゃうかもだしねー?着替えとレベルアップだけだからすぐだよー。」


なるほど。了承の返事を出すとミュウハ様はリュックをひっくり返し始めた。


「安全策で金属鎧を着てもらってたけどー、あんまりいい鎧だから目立つんだよねー。というわけでー。金属鎧は倉庫にー。でー。代わりの革鎧を倉庫から出すねー?」


そしてそう言うとリュックの底の魔法陣を俺の着ている鎧に押し付け、鎧は姿を消した。

そのあとで魔方陣にミュウハ様が右手を突っ込み、革鎧と最初に使わせてもらった剣を引っ張り出した。


「その魔法陣はなんでも転送できるのですか?」


と問うと、


「基本的に生き物はダメだよー。例外はわたしの腕だけかなー。所有権?装備?そういうのは関係ないよー?あーでもわたしより上の魔力で保護されてるとだめだったりするよねー。」


なんて軽く返ってきた。返事をしながらレイピアも転送している。


しかしそんなに便利なリュックが一般流通してるとは考えづらいな。していたら盗賊山賊の天下じゃないか。そうすると人前では使いづらそうだ。



革鎧を着込み、剣を腰に差すと


「じゃーお待ちかね、レベルアップに行ってみようー。」


と言われた。


「まーでも別に難しいことはないよー?魔法使うために自分の魔力の流れを見てもらったんだけどー。そのときに自分が発生源じゃない、全く動いていない魔力がどこかに集まってたはずなんだよー。それを自分の核にえいやって投げ込んでやればいいだけー。必要分だけ消費されて残りは元の場所に戻るからねー。さーやってみてー?」


ミュウハ様の説明にしたがって、腰の辺りにあったなぞの魔力を胸の中心へ移動させる。すると核が3回ほど蠢き、体中に力がみなぎってきた。


「どうー?どれくらい上がったー?」


「3回、でしょうか。レベルアップはすごいですね。今なら何でもできる気がしますよ。」


「それは気がするだけだねー。」

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