悪魔なんだし魔法の使い方くらいわからないと
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斧を振るう。剣と違って扱いづらいな。そもそも突けない点でどうしても行動が遅れてしまう。そして重心が前にあるので思ったように振れない。使用武器から斧を外してもらう様にご主人様に伝えよう。
それにしてもご主人様のリュックサックは便利なものなのだな。そしてこの世界には空間系の魔法があるのがわかったのも収穫だ。個人で使えたりはしないものか。俺は“何でもできる”らしいし、機会があれば打診してみよう。だが空間系魔法というのはえてして上級だったりするみたいだ。前世の記憶にもそうある。まずは魔法を使うということに慣れなければならないだろう。
「ご主人様。斧は合わないようなので、次からはやめておきます。それと、魔法を使ってみたいのでおしえてください。」
そう言うとご主人様は
「いいよー。まずはどんな魔法を使ってみたいかを教えてー?熱を操る火の魔法ー、液体操作の水の魔法。気体操作の風の魔法にー、地形操作の土の魔法。光を閉ざす闇の魔法とかー闇を照らす光の魔法なんてのもあるよー。あとは難しいところで空間魔法ー、わたしが使えるから覚える必要のない回復魔法だねー。」
という軽い感じで承諾をくれた。
「ご主人様は全部扱えるのですか?」
「ううん、闇の魔法と光の魔法はダメだねー。体の適性がないって言われたの・・・。でもまー教えるくらいは大丈夫かなー?あ、キミは適正に関しては大丈夫だと思うよー?そうなるように体は作ったしねー。あーでも魂の適正はわからないからどうなんだろうねー。まーやるだけやってみよー?」
魂に苦手意識が刻まれていたら適性がなく、魂の適正があってもそれを扱える体でないとだめなのだとか。俺は別に苦手意識はないと思うのだが。
「では火の魔法からお願いします。」
「はーい。実は何選んでもわたしが教えることは変わらなかったりするんだー。大切なのはイメージ。まずは体に巡ってるエネルギー、魔力を感じて手のひらに集めてみよっかー。」
まりょ、く?
「うんー。まずは目を閉じてみよっかー。でー。自分の体の真ん中、胸の辺りに意識を集中ー。」
心臓?いや違うか。表面はそれっぽく見えても今の俺は人間じゃないはずだ。集中する。脈打ってはいないが、人間だったら心臓がある部分に何かを感じる。
「おー。その様子じゃ自分の核を感じれたみたいだねー。」
ご主人様の言葉に肯く。
「じゃーそこから体を巡る魔力を感じれるようにー、もうちょっと集中してみようー?」
集中する。集中する。集中する。ああ、わかった。なるほど。核?から放射状に何かが体の前面を流れ、背面から核?に戻っていく。これが魔力か。
「うんー。やっぱり色々とコツをつかむのが早いみたいだねー。重畳重畳ー。でー。魔法なんだけどー。魔力の流れを滞らせる感じー?今回は右の手のひらにしてみよっかー。滞らせて手のひらに集めてみてー?片手でいいよー。」
右腕に集中する。手のひらまで流れてくる魔力を、手の甲側までは流さないように集める。最初のうちはうまくいかなかったが、試し続けているとなんとなくわかってきた。
「これでいいのでしょうかご主人様?」
「うんー。初めてにしてはけっこういい感じだねー。ちょっと集める量が多いかもだけど、そこはまー仕方がないのかなー。持ってる魔力が多いのかもー。でー。あとはイメージ。今回は火の魔法だからー、集めた魔力を燃やす感じでやってみてー?」
燃やすイメージ。燃やすイメージ。この魔力は燃える。炎になる。炎になれ!
ぼぅっ!
念じていると本当に炎になった。熱っ・・・くはないが燃え続けている。成功だ!
「おぉー!いい感じだねー。後はそれを手早くできるようにしたりー、投げつけたりー。広げて色々燃やしたりー。練習あるのみだよー。ちなみにわたしは指の先に火をともすのが精一杯だからー。キミはもうわたしの先を行っているのだーなんてねー。」
悔しいとかそういう感情が感じられないのだが。ご主人様は攻撃能力をほしいとかは思われないんだろうか。質問してみたが、
「今は“職業につくと<いいこと>と<悪いこと>がセットでついてくる”ってのだけ覚えていてねー?あとでちゃんと説明するからー。多分ー。」
なんてはぐらかされた。職業か。俺も何かの職業に就かねばならないときがきて、そのときに説明をしてもらえばいいか。
とりあえずは魔法をうまく使えるようになろう。練習だ。