初めてのボス戦
・14
俺と白ゴブリンはお互いに様子を見ながら間合いをつめる。こちらのリーチの方が長いので先手を取らせてもらおう。
「ふっ!」
足と剣に強化魔法を使い、高速で大剣を突き出す。それは盾でいなされ、反撃に剣を振るわれる。いなされるままに駆け抜けて、剣の範囲から抜け出す。仕切りなおしだ。
今度は白ゴブリンが盾を構えて突撃してくる。ぎりぎりまでひきつけてサイドステップ。横薙ぎで背中を狙うがゴブリンも横っ飛びで距離を取りかわす。そして向きを変えて、真正面に盾を構えながら飛び込んで突いてくる。大剣を立て、側面で逸らしてに受け流す。思ったより攻撃が重いので体勢を整えられない。
再び仕切りなおし。いつの間にか白ゴブリンの持っている武器が、剣と盾から大型の突撃槍に変わっている。これでリーチは向こうの方が上になったか。
白ゴブリンが滑るように移動して、高速で突撃槍の連続突きを放ってくる。よく見ると地面から少し浮いているようだ。魔法か?魔法も使えるのか。かわせる分はかわし、かわせなさそうな分は大剣を突撃槍の側面に叩きつけて逸らす。そのまま踏み込み、斬り上げる。が、またしても滑るような後方への移動で攻撃範囲から抜け出されてしまう。
三度仕切りなおし。白ゴブリンから何かが飛んでくる。これは空気の塊か?よくあるエアハンマーとか言うやつだろうか。感知は出来るのでかわす。かわした隙を狙い、滑るように近づいて槍を突き出してくるが、それは予想の範疇だ。
「ここだ!ふんっ!」
槍を掠めて踏み込み、大剣を振り下ろす。この戦闘で初めてのクリーンヒット。白ゴブリンが後ろへ吹き飛んでいく。手ごたえ以上に吹き飛んだので、自分で後ろに飛んで衝撃を逃したのだろうか。
その後も戦闘は続いていく。白ゴブリンの風の魔法と突撃槍をかわしながら、一撃を積み重ねていく。向こうもこちらの動きに対応し、いくらかの攻撃は当たるようになってくる。すぐにミュウハ様の回復魔法が飛んでくるが、当たった瞬間はやはり辛い。今着ているのは軍の正式鎧らしいが、ゴブリンの槍はそれを易々と貫通するので気を抜けない。
そして。4時間ほど戦っただろうか。
戦っているうちに風の魔法のコツをつかみ、白ゴブリンの滑るような移動を習得できた。分類的には飛行魔法か浮遊移動魔法になるのだろうか。ついでに空気を固めて壁にする魔法も使えるようになった。
「これで!終われ!」
大剣の斬り上げが白ゴブリンの槍を綺麗に弾き飛ばし、無防備になったところに斬り下ろしが綺麗に入る。後ろに飛ばれないように白ゴブリンの少しだけ後ろの空気は風の魔法で固めてある。
右肩から左腰までのラインで切断された白ゴブリンは、突撃槍を残して消える。これでカナちゃんの鎧の分に足りるのかは微妙だ。
「ブラックさんおつかれさまー。けっこう剣の腕上がったねー?じゃー脱出がてら空間魔法をレクチャーするよー。カナちゃん、起きてー。」
カナちゃんは本当にやることがないので寝ていたらしい。それでも斥候兵かと言いたいが、ボス部屋の扉はしまっているので大丈夫なのか。死闘だったのに締まらないな。




