新しいからだの使い心地
・12
カナちゃんが加入してからは分岐で迷うことがなくなった。
「ちょっと待って・・・。ここの三択は右よ。左は行き止まりで、ゴブリンが20くらい。真ん中は何もないわね。」
彼女の魔法斥候という職業(職業として存在するみたいだ)は、風の魔法の応用で遠くを見たり、空間自体を感じ取ったりして状況を確認するらしい。
「じゃー右に封をして左にいこっかー。」
そしてミュウハ様が土魔法で通路をふさぐ。空気で壁を作って維持するよりは楽らしい。
「でー。どうー?体に違和感とか感じたら言ってねー。」
戦闘後、次の分岐の手前で、ミュウハ様がそうカナちゃんに話しかける。
「さっきも言ったけど特に悪いところはないわね。しいて言えば胸くらい?ミュウハあんた削ったでしょ。もともと大きくはなかったけどこんなに薄くもなかったわよ?」
削ったのか。
「気のせいだよー?」
「・・・まぁいいわ。で、悪いところはそれくらいだけど、逆に魔法が精密に操りやすくなってるわね。青の女神様の加護とか要らないんじゃないのってくらい。」
「転職しちゃうー?でもー、他の女神様に鞍替えも微妙でしょー?ていうかー。無職にならなかったら白の女神様くらいしか候補がないよねー?それかブラックさんとお揃いで赤系にするー?」
「無職は嫌だし、白も別に適正なさそうよ。んー。重装鎧に魔法を掛けて重さと音を消して運用する自称魔法盗賊が隊にいたわね。でもこの容姿だと金属鎧似合わなくない?」
「そこは似合う鎧を探そうー。きっと見つかるよー。」
「すいません、色々と質問していいですか?」
カナちゃんとミュウハさまで会話するとちょくちょくわからない単語が出るので、聞けるときは聞いておきたい。
「えっとねー。この世界には5人の女神様がいてねー。(中略)わかったー?」
「女神様の話はわかりました。」
「でー。女神様は全員他の女神様を意識しすぎててー、一度自分の加護を捨てて他の加護を貰ったらー、元の女神様の加護は受けられなくなるのー。同じ女神様のところなら何回転職してもいいんだけどねー。」
うん、なんか面倒だな。
「カナちゃんは今魔法斥候でー、直接攻撃力が0になってるんだけどー。それは折角の高スペックな体がもったいないかなーって。万一近づかれると抵抗手段がないしねー。」
「あれ?俺のときとデメリットが違いませんか?」
「職によって多少メリットデメリットが変わるんだよー。」
「私は純粋な魔法使いでもよかったんだけどね。魔法斥候は魔法使いのメリットに加えて、風の魔法が凄く扱いやすくなるってのが好みだったのよ。」
「で、そのメリットを捨ててもいいくらい今の体がいい感じなんですね。」
「そう。ってかブラック、敬語とかやめない?癪だけど立場としてあんた上になるんでしょ。砕けた喋り方の方がいいと思うわ。」
「いや、でも生まれてこの方この喋りだったもので。」
「いいから練習!ミュウハも何か言ってあげてよ。」
「丁寧さは尊重されるべきだけどー、時には気安さも必要だよー?んー。そうだねー。魔王っぽいしゃべり方を意識してみようかー。あーあと、必要なときは丁寧にしゃべっても良いよー」
「そうですか。いや、そう、か。これからは敬語で喋らないように努力するとしよう!。って感じだろうか。」
「おいおい慣れていけばいいよー。最悪カナちゃんにだけ尊大なしゃべり方、でもいいしー。」
「了解した!立派な魔王喋りができるよう努めるとするか。」
いや、これもおかしいとは思う。




