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黄金の果実  作者: 丸大
第1章 リンド・アレクサンドロ
4/8

あれから

「お疲れ様です、リンドさん」


笑顔を向けながら僕に声をかけてくれるのはこのギルドの看板娘の1人であるルミエールさんだった。ルミエールさんは年は20代半ばらしいのだがかわいいという表現が似合う桃色のショートカットのふんわりとした女性だった。この人の笑顔を見るために僕は生まれたのだと錯覚してしまうくらいに素敵な女性だ。


ルミエールさんについてもっと語りたいところだが一度僕のことについて語ろうと思う。あれからどうなったのか。


僕は俺という言葉遣いをやめ偽名であるリンド・アレクサンドロと名乗っている。リンドは単に尊敬する父親のランドから一文字変えたただけだ。アレクサンドロは適当に浮かんできた言葉にした。偽名にして言葉遣いを変えたのはもちろん自分が生きていることを知られないためである。


とはいえこの国は前にいた所よりも遥かに西にある国なのだから知っている人がいるはずないのだが念には念をいれてだ。

誰もいなくなった家を飛び出したあと途方もなくさまよって僕はとある出会いをしてあるギルドにお世話になっている。ギルドは世界中に点在している。その理由は簡単、人々が生活するためだ。特殊な素材がほしくて依頼する人、伊藤のための護衛がほしくて依頼する人、はたまた普通はないが誰かを暗殺してほしくて依頼する人そんな人々が依頼をするところがギルドでお金がほしくてその依頼を受けるのがギルド員だ。ギルド員にはもちろんいろんな人がいる、得意とする分野がそれぞれにあるために多種多様な人が出入りしているのだ。フリーでいろんなギルドから依頼を受ける人もいれば僕のようにひとつのギルド専属で特定の依頼を受ける人もいる。ともかくギルドはこの世界には必要不可欠なのだ。


「ルミエールさん、ありがとうございます。」

そういって僕はルミエールさんが渡してくれるお金を受け取った。


「今回のお仕事はどうでしたか?」

「問題なく終わりました、ルミエールさんが僕に合う仕事を振り分けてくれているお陰ですね」

「そんなに謙遜しなくてもリンドさんはとても優秀なのですからもっと自信を持ってください」


そうやってルミエールさんを誉めたのになぜか誉め返してくれるというすばらしい女性の事をいつまでもお話ししたいのだが、他にも説明することがあるのでこの辺りにしておこう。


僕が今やっている仕事は案内人と呼ばれるものだ。案内人はギルド員以外の冒険者がこの地方の特定のものが欲しい時にその場所へ案内する係りだ。基本的に案内人がいるような特殊な物は普通には見つからなかったりする。そこでその土地に詳しい人が案内人をするのだ。


僕はこの土地に来て1年もたっていないがいろんな事に詳しくなっていた。それはもちろん〈観察〉のお陰だった。観察のスキルはパラメーターによって効果が変わるようで相手の能力を見るのが一般的なもので僕みたいに地形の先などを確認することはまず無理なのだ。とはいえど、できないこともないのだが観察を使ってじっくり時間をかけることでやっとできるのであってそれがほぼ一瞬でできる僕はたった一年程度でこの地方の事に詳しくなっても当然なのだった。


案内人の仕事を終えお金を受け取って帰ろうとした時、ふいに声をかけられる。


「相変わらず順調みたいで羨ましいぜ」


声をかけたのは僕と同業者の案内人をしている ラストだった。

ラストはライバルでありながら今の僕の一番の親友と呼べるやつだ。普通は同業者なのだから客の取り合いになるわけで仲良くなれるわけがないのだが彼はなぜか仲良くしてくれていた。知り合いがいない現状ですごくありがたい存在なのだ。


「ラストだって今日依頼を受けてたじゃないか」

「はっきり言ってわりに合わない仕事だったよ、案内人というか戦力の1人に数えられてほぼ戦いっぱなしだたんだぜ」


案内人の業務はもちろん探し物のところへ案内するのが基本だが、このご時世なのだから戦力としても数えられることもある。

ただし、控えの戦力であり表だって戦い続ける戦力として見られることはまずないのだが。そうなると最強の戦力を持った僕は普通に戦力の1人としてみられて当然なのだがそうはなっていないのだ。それには契約内容に記載されている特殊事項で僕を案内人として使うときには必ず戦力としないようにとなっている。普通はこんなこと書いたら依頼なんて受けられるはずもないのだが、あまりにも依頼に関しる事に詳しいため戦力を必要としない余裕のあるがパーティや時間に余裕がないパーティが僕を雇ってくれるのだ。


逆に時間はあるが戦力がなかったり、経験値を稼ぎながらゆっくり探し物をしたいときにはラストに依頼が入るのだ。同業者といったが意外と住み分けができているのが仲良しの理由のひとつなのかもしれない。ちなみにこのギルドには案内人がもう1人いるのだがその人に関しては登場したときに説明することにする。


そんなこんなでラストと仲良く話したあとは1人でギルド寮に帰る。ラストは自宅があるので寮には泊まっていないのだ。というか寮に泊まっている人は少ない。寮の人に関しても追々話すことにしよう。


そうして1人寂しく部屋に戻ると僕はいつもの行事を済ませる。それは貯金だった。貯金の理由はただひとつ、引っ越した家族を探すためだ。他人には僕の過去の一年間について説明するわけにはいかないが、家族なら僕が生きていることを喜んでくれて僕を黄金の果実を食べ尽くした罪人として突き出すことはしないからだ。今の僕の目的は「家族に再会する」ただそれだけだった。そのためにお世話になっているギルドで働いて少しずつ貯金をするのだった。


「家族に再会する」という僕の目的が変わるのはとある事件からだった。

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