プロローグ2
鑑定紙に表示された内容はこうだった。
現在のレベル:3
攻撃力:120
防御力:85
魔力:98
魔法抵抗力:76
素早さ:66
取得スキル:なし
このパラメーターははっきり言って低い方だ。現在のレベルが3なら全体的に60ずつプラスされてるのが平均値だ。というか100を越えてるのが1つだけなんてめちゃくちゃ弱いと言っても良いくらいだ。強い人なら同じレベルで平均200越え、場合によってはどれかが300を越えてるくらいだ。自分の現在の弱さに愕然とするがそれ以上に落ち込む物が見えてしまった。
最高レベル:5
素質が5レベルなんて100を越える人を見つけるより難しいのではないか。そもそも素質が10を切る人間が珍しく5というのは確認されている素質で最低値だ。
パラメーターが低くても素質が高ければ問題ない、素質が低くてもパラメーターが高ければ一次試験は受かる。では、両方が低い人間はどうなのだろう。もちろん答えは決まっている。
「残念ですがあなたがガーランド学校に受かることはあり得ません。今年がダメでも年によっては平均値が低いときがあるので15歳から17歳までの3年間は試験に挑戦することができますが、あなたでは何度受けても無理です。冷たいことを言いますがあなたのためです。勇者になることは諦めてください。」
試験官である先生ははっきりと告げ、腕にガーランド学校を受験した証明の魔法印を押すのだった。魔法印を押された人間は一次試験が受かればその印が輝き、ダメならなにも反応しない。しかし試験を受けた記録は残り来年試験を受けるときに魔法印があるか確認されその魔法印の種類によって試験を受けられることになるのだ。もちろん俺が押された魔法印は来年以降も試験を受ける資格がないことを表す印だった。
そのあとのことはほとんど覚えていない。
気がついたときには雨が、冷たく重い雨が降っており俺の心の中を表しているようだった。
時間は15時、アルタとトーラスの二人と約束していた14時をすでに過ぎていた。
約束の時間を過ぎてもその場所にいくつもりがなくふらふら歩いていた俺は黄金の果実と呼ばれる貴重な実がなる草の前にいた。
前にいたと言ってもあまりにも貴重なものなのでその周囲は厳重に管理され王国の兵士が守っているので30mほど離れた場所だった。
「黄金の果実か……」
そう呟いた俺はその効果を思い出していた。
黄金の果実はあまりにも貴重で一年に一度実がなれば良い方だと言われている。その効果は素晴らしく食べたものの現在のレベルとパラメーターをあげると言われている。そしてレベルが最高まで達した人間が食べるとその素質を1あげることができる。最高レベルが5の俺が食べれば最高レベルが6になる。俺が食べても効果がもったいない。俺には一生縁が無いものだ。
黄金の果実はその貴重さから見つけた時はガーランド学校に渡すことになっている。もちろんタダではなく見つけた国には莫大なお金が渡されるという。恐らく普通に暮らしてたらお目にかかれないくらいの金貨になるのだろう。ガーランド学校がそれだけの金貨が払えるのは普段から勇者を育てているということで全世界の王国からお金を寄付という形でもらっているからだった。世界を救う勇者を育てる学校なのだからそれくらいしても当然といった感じでどこの王国からも批判はなかった。
ガーランド学校に渡された黄金の果実は学校側が考慮した勇者の手に渡ることになる。勇者とはガーランド学校の英雄科というなの勇者育成クラスを卒業した人間のことだ。英雄科に入学できるのは毎年20人程度で俺が受けた一次試験に合格するのは大体100人程度だ。一次試験からさらに厳選され入学した20人は最低3年間は通うこととなる。最低というのは毎年の卒業生が1人から2人、年によっては卒業生なしということもあるからだ。卒業試験に合格できなければ勇者と認められず受かるまで通うもの、卒業を諦めて退学するものが多数いる。
その結果勇者候補は全世界でも30人程度しかいない。候補といっているのは勇者とは魔王を倒す冒険に出ているもののことで、途中で力尽きたものはもちろん、魔王を倒すことを諦めてどこかでひっそりと暮らしている人も勇者とは呼ばれなくなるのだ。そのために実際の勇者と呼ばれる人間は現在8人程度らしい。それだけ勇者というのはなるのが難しく皆が憧れるものだった。
「勇者は特別なんだよな」
その勇者だけが食べる機会がある黄金の果実のなる草を見てさらにむなしくなってしまった俺は自分がどこにいるのかわからなかった。ただ途方もなく歩いているだけの俺は目の前の穴に気づかずにその穴に落ちてしまった。その穴はとても深いようで落ちている途中で意識を失ってしまっていた。
気がついたときには自分の体は泥だらけで、自分が落ちてきた穴を見上げると穴の先は見えなくなっていた。恐らく雨で地面が崩れて穴が埋まってしまったのだろう。ここがどこかもわからずに出る方法も知らない俺はこのよくわからない地下でこのまま死ぬのだろうと思った。
「夢がなくなったんだから死んでも後悔はないな」
そんなことを呟いて目を閉じたがまぶたの裏に家族や親友の姿が浮かんできた。待ち合わせに来ない俺を2人はきっと探しているだろう。日時がたって帰って来ない俺の事を3人はきっと心配するだろう。そんなことを思うと簡単に死ぬ気がなくなった。心配させたままは嫌だからこの薄暗い地下から出る方法を探そう。そう決意した俺は歩けるただ一本の道をまっすぐに行っていた。
「なんだこれ……」
ただ歩き続けた俺の目の前に現れたのはとても貴重な実がたくさんなっている大きな木だった。