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おじいちゃんち

作者: ××××

 おじいちゃんが死んだ。

 その知らせを電話で泣きながらの母に聞いた。葬儀は暫くしたらだが、葬儀が始まる前に一度おじいちゃんの家に行くことにした。


 おじいちゃんは母方のおじいちゃんで小さい時はいつもおじいちゃんの家にいた。おじいちゃんの家は田舎の小さな牧場でおじいちゃんの家にいる時は必ず牧場の手伝いをしていた。その頃いたのは牛のももこ、うめこ、さくらこ、まつだ、たけだ、うめだ…その他諸々にヤギ親子や羊、牧羊犬でシェパードのよしき…牛やヤギ、羊はどうなったかは知らないがよしきはまだおじいちゃんの家にいるだろう。彼は、おじいちゃんの良き友人であり、あの家の牧場番人ななのだから。


 就職して免許とり初めて買った小さい車に乗りおじいちゃんの家を目指す。会社には有給休暇をとった。いきなりで驚かれたが課長はすぐ受理してくれた。家に帰って必要な物をトランクに詰め込んで車に乗せ車を走らせる。

 高速道路に入る頃にはいくらか気分が落ち着き、おじいちゃんとの思い出を思い出す。


 私の実家はおじいちゃんの家から十分とかからない所で共働きの両親は私をよくおじいちゃんの家に預けた。

 おじいちゃんの家には物心着く前からおばあちゃんはいなかった。おばあちゃんはお母さんがちょうど二十歳の時に亡くなったらしい。私がおじいちゃんに無神経ながらもおばあちゃんの事を聞いた時のおじいちゃんの顔は忘れられないほど私が悲しくなった。


 おじいちゃんと一緒にいた中での思い出は沢山ある。よしきとの散歩、牛の乳を搾ったり、チーズ・バターを作ったり、近所へおじいちゃんと散歩へ行ったりと…だけど、一番はどんなにおじいちゃんと遊んだ記憶よりも私が東京へ上京するのが原因でした親子喧嘩の時だ。


 おっと、このままだと実家に行きそうになる。実家に行きそうになった車をUターンさせ車をおじいちゃんの家の近くに車を停める。


「ウォン!ウォンウォン!ウウゥォオオン!!!」

「よしき」


 車を降りるとまだまだ元気なおじいちゃん犬のよしきが出迎えてくれた。

 よしきは私が久々に来たのが嬉しいのか車を降りた私の周りを尻尾をふりながらうろちょろと走る。

 車に鍵をかけておじいちゃんの家を開けるが鍵がかかっている。玄関のドア近くにある植木鉢を前にしてしゃがみ植木鉢を横にどける。おじいちゃんはいつも合い鍵をここに隠す。その合い鍵を使い家の中へ入る。


 薄暗く少しだけ埃のにおいがするこの家は変わっていない。暖炉のある部屋へ行くと暖炉のうえに写真が置いてある。

 昔から私はこの暖炉が好きだった。胸ポケットにいつもあるライターと近くにある新聞紙を使って火をつける。薪を入れぼうぼうと燃えるそれを見ながらいつもおじいちゃんが座っていた椅子に座る。

 そして、一番の思い出である親子喧嘩を思い出した。


 お母さんとお父さんは共に私が東京へ上京するのを反対していた。私も反対する2人に対し汚い言葉を言って反論した。お母さんは泣き、お父さんには苦い顔で私の顔をひっぱたいた。私は泣きながらおじいちゃんの家に走った。おじいちゃんは今、私が座っているこの椅子に座りながら私を見て困ったように笑った。そんないつもと変わらないおじいちゃんに私は泣いておじいちゃん足元にいたよしきを抱いてもっと泣いた。


「お前はいい子だ。泣いているのはお母さんとお父さんに酷いことを言ったのを反省してるからだろう?」


「たしかにお前の道を反対する2人も悪いとは思うがお前も分かっているだろう?」


「それに、よしきも心配しているぞ」


 そんな私をおじいちゃんは分かっていたかのように笑って頭を撫でる。おじいちゃんはしわしわの顔でにっこり笑い私に言った。


「辛くなったらおじいちゃんちにおいで」





 パチパチと薪が燃える音が静かな部屋に響く。


 クゥンといつの間にか部屋に入ってきたよしきが鼻を鳴らす。


 ポタリポタリと今まで我慢してきた涙が流れる。



 おじいちゃん、おじいちゃん、おじいちゃん。








 おじいちゃんち




ご覧頂きありがとうございました。

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