07
「しっかし…森が見事に消えたなぁ、やったのは俺らだがマジで化物になったみたいだ…」
桜花とハクの激戦から1夜明け、元森を見渡しながら桜花は呟く。
((まさか、ここまでとは我も思わなかったよ…))
桜花の呟きにハクが答える。
「まぁ、どっちにしろ出ていくつもりだったんだが流石にやり過ぎたな…」
『死の森』消失、一人と一匹は知る由もないがこの時危険地域である『死の森』が消えたことにより周辺各国は大騒ぎになり、魔王の再来、神の怒り、など様々な憶測が飛び交っていた、ただ共通して『死の森』への調査に各国の精鋭が派遣されることになっていた。
「流石に拙いな、調査やらで人が派遣されると面倒になる、さっさと行くか…」
((そうだな、だが我は一緒には行けぬがな…))
ハクは神獣として『死の森』を住処にしていた、しかし『死の森』が消失したことにより新たな住処を探さねばならなくなっていた。
「まぁな、神獣なんてのが人里に出れば大騒ぎだしな」
((うむ、我は北にある『氷獄の大地』に行こうと思う、何かあればそこを尋ねると良い…あそこには仲の良い『氷獄龍』が住んでおるしな…))
事実数百年前にハクが人里に降りたとき火をつついたような騒ぎになり討伐軍が編成され大騒ぎになった。
「へぇーそんなところがあるのか…寒そうだな…」
((うむ、人間からすれば寒いかもしれぬな…))
『氷獄の大地』は一年中氷に閉ざされ危険な生物が住む『死の森』と同じく危険地域。
そこに住む『氷獄龍』は神獣ではないがこの世界にいる8匹の龍種のうちの1匹、その息は万物を凍らせ、羽ばたき1つで吹雪が吹き荒れると言う化物である。
((そうだ、貴様に餞別をやろう…))
そう言ってハクが取り出した袋を桜花に投げつける。
「うお!?これは袋?」
(つーか、これどっからだした?)
((うむ、それはアイテムバッグ…その口から入るものであればいくらでも入る優れものだ、ちなみに中にはこの世界の金が入っておる…昔ここに来て死んだ人間の物だがな…))
「へぇー、便利なものなんだな…金まで貰えるとはありがたい」
アイテムバッグ、今の時代『アーティファクト』と呼ばれ古代の遺跡などでしか発見されない貴重品である、がハクは自分で作れるので大したものではないとの認識であるが…
((では我はそろそろ行く…また会おう))
ハクはそう告げると身を翻し北に向かって走り出した。
「おぅ!またなぁ〜」
桜花は手を振りながら大声で叫んだ。
ハクはコチラをちらりと一瞥して去って行った。
「んー!行っちまったか…っと俺はどっちに行くかな?
う〜ん、東にいくか!」
桜花はなんとなく東に向かい走り出した。
そして1時間ほど進んだ頃、『ソナー』に人間らしき反応があった…
「ん?人間か?俺が言うのもなんだがこんなとこに来るってことは……あの森の調査にでも来たのか?反応も数十人だし……厄介そうだな避けていくか…」
桜花の予想の通り『死の森』が消失した原因を探りに来た調査団、『クラスト王国』と呼ばれる『死の森』を領地に持つ大国が派遣した調査団はまだ、消失してから一晩しか経っていないながらも迅速な調査が必要として『死の森』に向かっているのだ。
「うーん、行っても何もないんだがな、ご苦労なこった!」
そして桜花は東に向かいながらも気配を消して迅速かつ慎重に歩みを進めるのであった。