01
感じる浮遊感の中……
声が聴こえる…
ー自由に生きなさいー
そこで意識が途絶えた…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ん?んーあれ?確か木が光っててそれで……
え?なんで森の中?どこだよここ!」
彼の目の前には鬱蒼とした森、まるで人を飲み込むかのような不気味な様相の森が広がっていた。
「訳わかんねぇけどとりあえず人を探す……前に川を探すか…」
(んー?なんでこんなに落ち着いてられるんだ?普通ならパニックになってもおかしくないけど……やっぱりじいさんのせいかな?寝てる間に山に放り込まれたこともあるし……だが死んだはず…まぁ、考えててもわかんねぇか!)
彼は祖父からサバイバルの知識と言うより着の身着のまま山に放り込まれて必死に手に入れた生きる術なのだが…
そして数分探したところで水の音が聴こえてくる……
「あっちか?ラッキー♪意外と早く見つかったな!」
そして音がする方へ歩きだそうとしたとき…
「グルルルルゥ」
「なっ…!?」
背後から獣のような鳴き声がして振り向き
彼は驚きの声を上げることになる…
3mはあろうかという黒い狼を視界に捉えて。
「うそだろ……!?」
(なんだこりゃ夢か?なわけないよな……これはあれか異世界ってやつか……最近はやってるし……
ってなわけないよな?)
もちろん日本はおろか外国でもこんな巨大な狼がでるなどときいたこともない。
「グルァァァァ!!!」
黒い狼が桜花に跳びかかる!
(速い!?けどじいさんの方がもっと速い!ってうちのじいさん化物だったのか?まぁ、化物だったよな…普通素手で熊なんて仕留めてこねぇし)
黒い狼……黒狼の攻撃を躱して距離を取る…
そして…
「逃げる!」
(武器もねぇのにあんなのと戦えるかよ!じいさんじゃあるまいし!あんなのと殴りあっても勝てねぇだろ!)
走る、走る!木々を上手く躱しながらひたすら走る!だが黒狼も獲物を逃がそうとはしない!
「グルァァァァ!!!」
「あれ?意外と遅い?いや、俺が速い!?」
(おかしい、確かにかなり鍛えてたはずだが流石にこれは…まさかチートか?)
思考の海に潜っている彼は気付かない、目の前のまるで小さな山のような岩に。
「ゴォォォォン!!」
そして岩に激突した…
「いってぇぇぇぇえ!!!」
その隙を逃すはずもなく黒狼が襲いかかる…
しかし……
「GUoooooooooooou!!!」
岩……いや岩に見えていたのは巨大な亀のような生き物…
桜花が激突した衝撃で目を覚ました巨大な亀は怒りを顕に眠りを妨げた愚か者を薙ぎ払おうと巨大な尻尾を振り回す、そして愚か者……
ではなく愚か者に襲いかかろうとしていた黒狼にその巨大な尻尾が直撃する、
「ガルゥゥゥァァ!?」
黒狼は悲鳴を上げながら吹き飛びものいわぬ骸になった…
「マジかよ……勘弁してくれ!」
桜花はその光景を見て一目散に逃げる、幸い亀の速度は遅いようで1時間ほど逃げ回るとようやく逃げ切ることができた。
「ハァハァ……」
(いきなり化け物だらけの人外魔境とかハードモードすぎだろ…)
桜花はとりあえず周囲に何もいないか確認してから腰を下ろした。
(にしても、こりゃマジで異世界来ちまったみたいだな…たしかこういう時魔法とか使えないか試してみるのがいいんだよな)
昔見た小説を思い出しながらさっきから感じていた体の中のモヤモヤを掌に集中させようと試行錯誤する…
(たしかこういうのはイメージが大切なんだよな…とりあえず水が飲みたい…)
頭の中で水をイメージして掌に集中する、
「うわっ!?水がマジで出た!?てかとまんねぇ!?」
彼がイメージしたのは水道から流れる水…
そのイメージ通り水が掌から溢れ出す…
そこまでは良かったのだが水が止まらない!
(やばい!止めなきゃ!水を止めるイメージ!!!)
そして、確かに水は止まったのだが…
「ヤベェ、飲むの忘れてた…」
それから試行錯誤の末、水を飲むことができたのは30分後だった……