番外編〜『死の制裁事件』〜
番外編新しいの作りました。ではどうぞ
−こんにちは。前話で亡くなりました、メビウス・ザ・シュラークです。皆さんにはあの事件を、『死の制裁事件』の事をあまり詳しく話していませんでしたね。
これからお話するのは、『死の制裁事件』の全貌と、その裏に隠された真実です−
−7年前−
「魔物など一掃すれば良いではないか!」
両手でテーブルを叩き、立ち上がる人物が1人。メビウスの父、シリウス・ザ・シュラークだ。当時は37歳。
メビウスの故郷<ワーミスト>には[伝説の剣士]が集結し、これから起こり得る『死の制裁事件』についての会議が開かれていた。
因みに、『死の制裁事件』という名前はこの戦いが終戦した後につけられたら名のため、今のところは戦争と称させて頂こう。
「シリウス」
「何だ剣聖」
隣の席に座る覇道剣聖がシリウスに声をかける。
この2人は昔からの親友、いや戦友で、様々な戦場を共に戦い抜いて来た猛者だ。
「魔物側には不死鳥と竜、2つの最上級種族と上級種族がついている。ましてや、此方は人間のみな上に、戦える者は私達[伝説の剣士]だけときた。この状況をどうやって覆し、魔物を掃討しようというのだ?」
「そ、それは…」
シリウスは言葉に詰まってしまう。
魔物の序列において、最上級種族と上級種族の存在は絶対である。それらを敵に回すていうことは、世界そのものを相手にする様なもの。
終夜が[伝説の剣士]入りを果たす6年前のため、この時は4人。
「で?結局どうすんだよ?」
テーブルに足を乗せて面倒くさそうに言うのは、泡沫鎗鬼。
元々の性格上もあるのだろうが、鎗鬼はあまりこういう事が好きではない。早く終わってくれ、といつも心の中で呟いている。
「どうするのだネフィル。お前がリーダーなのだぞ?決めるのはお前だ」
剣聖の視線の先には、短い金髪をした少女(!?)が静かに座っていた。飛び出たアホ毛が触覚の様に見えなくもない。
歳は剣聖やシリウスよりもずっと若々しく、此処だけの話、6歳だ。……今、嘘だと思った人、これは真の真実である。
[伝説の剣士]主席、ネフィル・ミラ・ルインベルト。
女性、しかも年端もいかない子どもでありながら、[伝説の剣士]に就いており、さらにはリーダーという大役まで担っている。
しかも、ネフィルは表に出ては来ないために、その存在は同じ[伝説の剣士]しか知らない秘密。
そもそも、[伝説の剣士]を作ったのがネフィルなのだ。(わお!マジかよ!)
故に、終夜が最年少で[伝説の剣士]“入り”を果たしたという事は、嘘ではない。
そのネフィルがゆっくりと口を開いた。
「先ずはあっちのリーダーと話し合う事が先決でしょ?っというわけでぇ……」
ネフィルはシリウスへと視線を移す。
「シリウスちゃんが行ってきてね」
「ネフィル!それは…」
剣聖が何か言おうとするのを、ネフィルが制した。意味ありげな笑みを、その顔に浮かべたまま。
「剣聖ちゃん、いいから……頼んだよ?シリウスちゃん」
「分かった」
扉をゆっくりと開け、シリウスは会議室を後にした。残ったのは、ネフィル、剣聖、鎗鬼の3人。
「ネフィル、何故シリウスを行かせた?あやつが魔物を毛嫌いしているのを知っていながら」
「そこだよ」
「何?」
「シリウスちゃんは魔物が嫌い。
敵のリーダーを倒せばこの戦いが終わると思ってる筈でしょ?
ならば間違い無く、シリウスちゃんはリーダーを叩き潰しにかかるだろうね……でも、シリウスちゃんじゃ魔物達を統べる、竜王バハムートには勝てない、それを分からせるためだよ。
どうせ、魔物との対決は避けられそうにないしね」
「…………」
沈黙する剣聖。明らかに顔が強ばっている。
何時もの事ながら、ネフィルの思慮深さには驚嘆すべき点が沢山多数存在しているのだ。
全く、何処にこんな思慮深い子どもが居るというのか。
世界中探しても、ネフィルだけ……いや、もう1人居る。7歳にして天才軍師と呼ばれている規格外の傑物が。
化け物が。
その話はまたの機会にするとしよう。
しばしの静寂の後、突然立ちあがるネフィル。
「さぁて、シリウスちゃんは今回の戦いで何を悟るのかな?楽しみっ!じゃあね、剣聖ちゃん、鎗鬼ちゃん。また今度、生きてたら会おう!」
ネフィルは意気揚々と、会議室から“消えていった”。そう、“消えた”のだ。それも、一瞬にして。
ここで、彼女が“消えた”からくりについて説明しよう。
これは、もう気付いたかもしれないが“不規則な力”である。『存在意義』という彼女の“不規則な力”は、“自分の存在を周りに認識させたり、させなかったりする”能力。
つまり、好きな時に、自分の存在を点けたり消したり出来るわけだ。
系統は身体強化系である。
「はぁ…やっと終わったぜ…剣聖、ちと手合わせしねぇか?最近戦ってねぇから腕が鈍っちまってそうでよ」
「うむ、私も丁度同じ事を考えていたところだ。付き合おう」
「そうこなくちゃな」
この後、2人の手合わせで<ワーミスト>の街が半壊したのは、言うまでもない。
−数日後−
『我と戦うと申すのか?』
威圧感のある声を響かせたのは、魔物を統べる竜王バハムート。
此度の戦いにおいて、魔物軍の大将を務める竜族の長である。
漆黒の身体に、紅き眼を持つ竜の中の竜。
通常、魔物は人語を話すことは出来ない。だが、バハムートは次元が違う。
「お前を此処で倒せば、実質[伝説の剣士]の勝ちは決まるようなもの。ならば、決着は早い方がよかろう?」
その言葉にバハムートは若干の怒りを覚えた様で、口から黒炎が烽火の様に上がっている。
え〜、それではここで一旦状況を整理しよう。
魔物側のリーダーと話し合うため(シリウスにとっては、殺り合うため)にシリウスがやって来たのは、バハムートの根城、<ワーミスト>から西、最果ての地『煉獄の門』である。
この現世と地獄を繋ぐ門で、バハムートはこの門を自在に開閉出来るというから驚きだ。
『人間風情が我に、竜王バハムートに勝てると思っているのか?』
「弱い犬程よく吠える、と言うぞ?」
『ほぅ…ならば、弱い犬たる我を葬ってみるが良い!』
挑発にあえて乗ったバハムートが、黒炎を吐き出す。標準は、シリウスだ。バハムートの吐き出したそれは、さながら地を這う大蛇の様にうねりながら、シリウスを目指して進む。
シリウスは物怖じ1つせずに、武器を手に取る。長い柄の先に付いた白刃。
攻撃範囲は刀や剣のそれよりも、圧倒的に長い。
シリウスの武器は、どうやら槍の様だ。
「行くぞ……神槍“グングニル”よ……我が槍術、受けるが良い!」
シリウスの槍はかつて主神オーディンが用いたとされる必殺の槍グングニル。
全てを貫くその攻撃力は、全武器の中でも随一。この槍をもって、シリウスは幾多の戦場を生き延びてきたのだ。
シリウスがグングニルを一振りすると、黒炎が跡形も無く消し飛ぶ。流石は主神の槍というだけのことはある様で、黒炎を浴びても傷1つ付いていない。
『フム……封印状態では、本来の黒炎の威力は出せぬ、か。それにしても、それが噂に名高いグングニル。全てを貫く槍とは……大きく出たものだ』
バハムートは何故かグングニルを知っている様な口振りで話すが、シリウスは気にもとめない。
今のシリウスにとっては、バハムートを倒す事が重要なのだから。
「貴様の黒鱗も貫いてみせよう」
『……やってみろ』
言ってバハムートはゆっくりと自分の腕を持ち上げた。
此処へ打ち込んでこいということらしい。
シリウスは迷わずグングニルの矛先をバハムートの腕へと向け、放り投げる。
「神の眼光!」
神々しい光をその身に纏い、グングニルはバハムートの腕へと一直線に空を斬る。
そして、見事にバハムートの腕を穿ち、穴を開けた。
「どうだ?これが神の槍の力だ」
勝利を確信したシリウスだったが、バハムートは高笑いをするだけで、その確信を不安へと変えてしまう。
『ハッハッハッ!確かに素晴らしい威力だ。だが、忘れたか?我が“何”であるかを』
「何?」
次の瞬間、グングニルによって穿たれた穴がみるみるうちに塞がっていき、元の腕へと形状を立て直した。
これにはシリウスも度肝を抜かれた様で、額から冷や汗が。
『我は五元の竜、竜族の長、竜王バハムート。
全てを支配する存在だ。今は封印でこの門に繋がれているがな……。
確かに主の槍は全てを貫く神の槍。
しかし、どんな神といえど、不死は貫けまい?』
“不死は貫けない”こればかりは動かしようの無い真実である。
グングニルは全てを貫く槍。
だが、貫くだけではバハムートには勝てない。
何せ不死。
再生してしまうのだから。
「貴様が五元の竜、だと?そんな馬鹿な事があるものか!五元の竜は門に閉じ込められていた筈……出てくるなど……有り得ない」
『誰か知らぬが、破壊を司る竜を退けたらしい。故に我は、この破壊の黒炎を吐けるのだ。
元々は我が創り出した5体の竜の1体なのだからな。
破壊の力が我に戻って来たに過ぎぬ』
確かによく見ると開いた『煉獄の門』から鎖が無数に伸び、バハムートの身体のいたるところに巻き付いている。
シリウスは絶望に打ちひしがれる結果となった。不死の、それもまだ未開封状態のバハムートに、グングニルは容易く打ち砕かれてしまった。
打ち砕かたというのは勿論比喩である。
ネフィルの言っていた事はこういう意味だったのだ。
敗れた。
適わないと分からせ、勝手な暴走を抑制するという、ネフィルの巧妙な心理戦に、シリウスは敗れたのだ。
『我は直接戦闘には参加せぬが、もしまた此処に来ることがあれば相手をしてやろう。せいぜい足掻くが良い。人間』
「勝てない……のか?」
冷たく閉じた『煉獄の門』の前にはシリウスが立ち尽くすのみであった。
何か結構色々なところから持ってきてますよね?(バハムートとか特に)
後半もありますので、お楽しみに。




