本編第14話〜真実〜
ものすごく期間開きまして、すみません。今回は話が多いです。
ではどうぞ
泡沫鎗鬼の助けにより、窮地を脱した龍達は、市長オルウェーダの屋敷へと来ていた。市長に会いたい、と言っただけで、6人は屋敷の客室に通され、来客用の椅子に腰掛けて待っている状態。
これから会うのは、首都に名を使われる程の人物。
「一体どんな奴なんだ?市長とやらは」
大虎がメビウスに疑問を投げ掛けるが、メビウスの答えはこうだ。
「さぁ?」
「「「「はぁ!?」」」」
メビウス以外の4人が素っ頓狂な声を上げ、席から立ち上がりメビウスを凝視する。しかし、凜だけは、意味ありげな笑みを浮かべて座っている。
「おいおい…前に来たことがあるって言ってただろう?現にそれで入国させてくれたんだぜ?そのお前が知らねえってどういう事だ?」
大虎は正論を言っている。確かに知りもしない輩を通す程、此処の市長は馬鹿では無い……筈。いや、4人は気付いていないのだろう。
「何を聞いていたのかな?僕は、さぁ?とは言ったけど、知らないなんて言ってないよ?」
「な、何?」
「言葉遊びは止めなさい、メビウス。あなたは何時もそうやって屁理屈を言うわよね?」
そう言って現れたのは、長い銀髪に碧眼の女性。外見は麗裟に似ていなくもない。
「これはこれは市長。だって、仕方無いでしょう?何て言えば良いか分からないんですから。」
「私が変人か何かと言っている様に聞こえるのだけど?」
「それはすみません」
「この子達が、あなたのお友達ね?初めてまして。市長のオルウェーダ・シルヴェニカよ」
「え…」
その声に反応したのか、市長は龍を振り返る。
「どうしたの?」
「いえ、話を聞く限りでは男と思ってたんですが」
「私の父ねそれ。父が引退したから、私が現市長ってわけ」
龍の疑問も解けたところで、この国に伝わる五元の竜の伝承が、市長によって皆に伝えられた。
「五元の竜は、全てを支配できる存在。その余りに強力な力故に、天、地、水、破、創の力を持つ5体の竜によって封じられていたの。けれど、7年前破壊の竜が消え去ってから封印が緩んでいるの。ソードハンターは其処を狙っているのね」
「…………」
相変わらず龍は目線を落とし、俯いたままである。自分が原因で招いた事態なのだから当然と言えば当然なのかもしれない。
「それともう1つ。ハンターは“名刀を狩る”って言ってる様だけど、封印を解くのに必要な刀は、たった5本だけで良いの」
「!まさか…」
龍の眼がこの上なく見開かれ、市長を見つめる。
「そう。あなたの持つ蒼龍もその1つ。後、破壊の“轟龍”、空の“天龍”水の“青龍”地の“震龍”が必要になるわ。これらは五元竜シリーズと呼ばれているの。ハンターは名刀を狩る事によって本当の目的が五元竜シリーズだというのを隠していたのね」
「待て…水が青龍なら、蒼龍の属性は何だってんだよ?」
「創造。総てを作り出す力よ」
オルウェーダとメビウスだけが平然としており、後の4人は顔を見合わせた。
「それなら、その五元竜シリーズを守れば良いんじゃないですか?」
「誰が持ってっか分かってんのか?」
麗裟や凜はともかく、龍とサクヤには、大虎の問いに思い当たる節がある。
「俺の父さんは轟龍を持っていた」
「私の兄が天龍を……あ!」
サクヤの突然の大声に、皆が振り返りサクヤに視線を注がせる。何時もの暴走が始まらなければ良いのだが。
「どうしたんだよ」
「震龍を持ってる人の名前、思い出しました。その人の名前は…」
「天帝だろ?」
更なる別声が響き、客室の窓枠に寄りかかる1人の人物が目に留まる。
「に、兄様!?」
この声はサクヤのものだ。サクヤも兄、斬風終夜の突然の登場に驚いたらしく、狼狽率が著しく上昇している。
「ぃよう、久しぶりサクヤ。1年ぶりか?」
斬風終夜。サクヤの兄にして史上最年少23歳の[伝説の剣士]だ。しかし、サクヤの知る終夜とは幾らか雰囲気が違っている。去年までは生真面目だったのだが、何というか…その…サバサバした性格になっていた。
「兄様、どうして此処に?」
「決まってるだろ……愛しの妹を見に来たんだよ」
「ふぇ!?」
こんなシスコンみたいな事も言わなかっただろう。赤面するサクヤを見る終夜の顔が真剣なのを見ると、冗談を言っている訳では無い様で、どうやら本物のシスコンになったらしい。
「…………」
会場全体の静寂。龍や他の面々の“何だこのシスコン野郎”という顔を気にもせず、終夜は涼しい顔をしている。この空気を打ち払ったのは、いつも通りに大虎の役目だった。
「って!こいつがサクヤの兄貴だぁ!?」
「斬風終夜だ。よろしくぅ!」
明るくなったのは良いが、人は1年こっきりでこれほどまでに変わるものだろうか。まぁ、其処はスルーといこう。
「天龍を持ってるって言ってたみたいだけど?」
「これか?」
麗裟の問いに天龍を抜いて見せる終夜。その刀は、1年前にサクヤが見た時と同じく、透き通る様な空色をしていた。
「で、誰なの?その天帝って」
麗裟の問いに答えたのは終夜だった。一度戦った事もあり、そして負けた相手の名前を、簡単に忘れる程終夜の記憶力は軽薄ではない。
「ハンターの幹部の1人さ。俺は彼奴に負けちまったから、良く覚えてる……あの金髪に紅い眼を思い出すと、悔しさが心の底から湧き上がって来んだよ」
静かに語る終夜だが、その拳は堅く握られ、今にも血が滲みそうな勢いである。
「なら今すぐにでも父さんに知らせないといけない、か…」
「そんなこっだろうと思って、剣聖には俺が通達しておいたから安心しな。それに、あの馬鹿強ぇおっさんがハンターなんかにやられっかっての」
それを聞いて、自分の心配は杞憂に終わった、と安心し、龍は心の中で胸を撫で下ろす。
だが肝心なのはこれからで、ハンターの目的が分かった事は良しとしよう。それをどうやって守るかだ。ただ一言に守ると言っても漠然とし過ぎているし、幹部クラスが出て来ればあっさりと崩されてしまうかもしれない。
「あの…兄様」
「どうした!愛しのサク……フガッ!」
サクヤの正拳が終夜の顔面に吸い込まれてめり込む。顔面陥没にでもなりそうなめり込み方であるというのを、この場に居る誰もが思ったのは言うまでもない。サクヤの額に浮かぶ血管マークを見れば、手加減なしということがお分かり頂けるだろう。
「会議の方は…どうしたのです?」
「ブホッ……あ〜、な〜んか俺らのリーダーが中止とか言って放り出したんよ。で、お開き。そん時たまたま剣聖と一緒だったから、この事を報告したってワケだ」
自分の顔からサクヤの拳を抜いた終夜は何事も無かった様に話す。これもシスコンの特徴と言って良いのか、妹がしたことを咎める事はしない。だが、人としての道を踏み外そうとすれば全力で怒る(という話)。
「じゃあ父さんは…」
「俺と別れた後<刀>に帰ってったよ」
「そうですか」
「さて、と…本題に入る前に…てやっ!」
終夜が持っていた天龍を、いきなりメビウスに向けて振り下ろした。
流石に驚いたらしいメビウスは、間一髪床を転がってかわす。
近くにあったテーブルと花瓶が2つに斬れ、床に落ちる。その花瓶から漏れ出た水が客室の真っ赤な絨毯を濡らし、天龍によって斬り裂かれた床の隙間に入っていく。
「な、何を!?」
龍だけではない。サクヤも大虎も麗裟も、オルウェーダや凜までもがそう思った。
「なぁ市長さんよ…この町に大狼が入るのって何回目だ?」
「え?何故そんな…」
「いいから早く答えろ……」
何を訳の分からない質問をするのかと問いたくなった市長だったが、終夜の有無を言わさない気迫を目の当たりにし、聞けなくなってしまう。
「に…2回目だけど」
「2回ともメビウス(こいつ)が来てた時じゃねぇか?」
「!」
ギクリと身を震わせたメビウスを振り返る終夜。
「なぁ?…メビウス・ザ・シュラーク。シリウスの奴と仲間になって何企んでやがったんだ?」
終夜の視線の先には、驚愕の顔で佇むメビウスの姿があった。
「な、何言ってるのさ。僕は龍の」
「友達のフリしてました〜、か?」
終夜に言いくるめられてしまい、何も喋れなくなってしまうメビウス。だが次の瞬間、
「フフフ…アッハハハ!良くできましたぁ〜。でも王手には後もう少し足りなかったみたいだね……火炎舞闘!」
「「まちやがれメビウス!」」
メビウスは客室を破壊して外へと飛び出して行き、終夜と大虎が後を追う。それを無言で見つめる龍の顔は、どこか寂しそうでもあった。
−メビウス…何故だ…何故お前がシリウスさんと……それは俺のせいでもあるのか?俺は…お前が裏切っていようが構わないし、それはお前の自由だ。但し道を間違えないでくれ。もし道を踏み外した時は、俺がお前を……−
メビウスが裏切っていました。どのタイミングで裏切らせようかと思いましたが、ちょうど良くシスコンになった終夜が出て来てくれたので助かりました。
ではまた次話で




