本編第13話〜推参!泡沫鎗鬼!〜
13話です。少し短いですが、ご容赦ください。
−あらすじ−
蒼龍を直すことに成功した龍達は、五元の竜の伝説を知るため、<ヴェニキア>の首都<オルウェーダ>にある市長の屋敷へと向かっていた。その途中、大狼の大群に出くわすのだった。
龍、大虎、メビウスの3人が駆け出すと同時に、大狼達も駆け出す。徐々に距離が縮まっていき、そして大狼が刀の射程範囲に入る。
「蒼天波!」
「大獣爪!」
「火炎舞闘!」
3人の一斉攻撃による衝撃で街道を構成していた石がめくれあがり、粉々になる。これで勝負は決まったかに思えた。しかし、土煙の中から現れたのは、無傷の大狼だった。
「嘘でしょ!?」
「おいおいマジかよ……傷1つついてねぇぞ」
「当たる瞬間に俺達との距離をあけたんだ。優秀だな…あの3匹(しかし、なんて反応速度だ……それに3つの技を避ける程の脚力。凄まじいな)」
龍が感心していると、3匹の大狼は動揺している隙を狙い、一気に距離を詰めた。
「く……!」
襲いかかる爪を蒼龍で受け止めた龍はその爪を受け流しつつ姿勢をかがめ、受け流した勢いを利用し身体を入れ替えて大狼の懐へと入り、下から大狼の腹に狙いを定める。
「穿て!蒼き龍の牙よ!蒼穿龍牙!」
龍の力と蒼穿龍牙の威力を、その刀身に乗せた蒼龍の突きが大狼の腹を穿つ。しかも、その突きは的確に大狼の急所を捉えており、大狼は一瞬で楽になれたのだろう、もう息をしていないようだった。
「ごめんな……」
龍の、許しを請うような言葉が既に息絶えた大狼に届くはずもなかった。龍が大狼に踵を返して歩き出した、その時
「「龍!後ろだ!」」
突如として重なって聞こえてきた大虎とメビウスの声に振り返ると、1匹の大狼が龍の目の前まで迫っていた。龍は反射的に半歩かわしたが、大狼の爪は龍の胸を多少なりとも抉り、鮮血をしぶかせた。
「くぅ……!」
意識が吹っ飛びかけ、大きく体勢を崩した龍に、大狼の次なる攻撃を避けることは不可能に近かった。揺らぐ意識でふと周りを見回した龍は、3匹だった大狼の数が膨れ上がっている事に気付く。
「これじゃ、鉤爪悪魔の時とあまり変わらないな」
呟いていると、大狼がグォォンと一声鳴き、龍に飛びかかった。大虎とメビウスは他の大狼の相手をしていて、サクヤと麗裟は非戦闘員である凛を守っているため龍に手を貸せる筈も無い。動くこともままならない龍はこれから来るであろう痛みに眼を瞑った。しかし、
−ドカッ−
痛みの代わりに、鈍い音が龍の耳へと入り込む。恐る恐る眼を開いた龍の視線の先に在ったもの。それは、吹き飛ばされて床に叩きつけられた大狼と、それを行ったと思われる1人の男性だった。
「大丈夫か?坊主」
「あ…あなたは?」
その問いに、男性は龍へと向き直る。どこぞの屈強な戦士のような身体をした、それでいて細身な男。上半身には衣服を纏っておらず、寒くないのかと訊きたくなってしまう程だ。
「俺ぁ泡沫鎗鬼。其処にいる凛の……まぁ、馬鹿親父だよ」
「(この人が泡沫鎗鬼……[伝説の剣士]の…)」
「父さん!会議に出席しに行ったんじゃ……」
「行く途中に大狼が走ってくのが見えたんで追ってきたら、何だこの状況?ってなわけだ。それにしても、なんてやられ方しようとしてやがんだ?これじゃあ剣聖の野郎が悲しむぜ」
「……確かに、そうかもしれませんね」
「まともにとらえられると複雑なんだが…」
こうやって話している間にも、大狼の大群はじわじわと距離を詰めてくる。龍が立ち上がり、蒼龍を構えて前へ出ようとすると、鎗鬼が腕を挙げて制した。
「おっと、此処は俺様に任せてもらうぜ?」
「し、しかし…」
「市長のおっさんのとこへ行かなきゃなんねぇんだろ?さっさと行きやがれ!」
龍を遮る様に言葉を被せる鎗鬼。口調はきついものの、その顔には微笑が浮かんでいた。
「分かりました。此処は任せます。鎗鬼さん」
龍は大虎等を引き連れて、僅かに開いた大狼と大狼の間を抜け、屋敷へと走り去っていくのだった。それを追おうと走り出した大狼達の前に、鎗鬼が立ちはだかる。
「ったく……世話の焼ける奴らだ。これは貸しにしとくぞ?ソルディアス」
鎗鬼に行く手を阻まれた大狼は、機嫌を損ねたのかグルルルルと喉を鳴らしている。
「あん?やんのかコラ」
鎗鬼が自分の武器を手に取る。しかし、その武器は刀ではなく、鎚であった。短い持ち柄に鎖が付いており、鎖の先には棘の付いた鉄球。その鉄球からはパリパリと、雷が絶えず放出されている。
「これが俺様の武器……雷鎚“ミョルニル”。しっかし、[伝説の剣士]なのに武器が鎚ってどうよ?なーんで俺様が選ばれちまっ……最後まで言わせろよ」
1匹の大狼が鎗鬼に迫り爪を振り下ろすが、鎗鬼はそれを正面から片手で受け止める。そして、隙が生まれた大狼の顔を、渾身の力を込めた拳で殴り飛ばした。
「人様の台詞はちゃんと聞くもんだろ!」
力無く横たわる大狼には目もくれず、鎗鬼は大群の中へ飛び込みミョルニルを振るう。
「おらおらおらおらあぁぁぁぁ!」
激しく回転するミョルニルに、大狼は1匹、また1匹と、なす術も無く吹き飛ばされる。鉄球をまともに喰らうだけでも相当なダメージになるが、ミョルニルは雷というオマケがついてくる。
「そら、もう一丁!」
飛び上がった鎗鬼はミョルニルを地面へと叩きつけ、更に多くの大狼を蹴散らす。辺りの建物という建物が崩壊していくが、住民は既に避難した後だったため、気にする事もない。
「これで終めえだ!轟く雷鳴の衝撃!ライトニング・インパルス!」
鎗鬼が再度ミョルニルを地に叩きつけると、ミョルニルから放出されていた雷が衝撃波となって大狼へと襲いかかった。大狼は必死に逃げようと背中を向けて走り出すが、雷は即ち光。光の速度に適うはずもなく、その雷波へと呑まれていく。迸る稲妻。そして自分等を見下す様に佇む1人の男。それが大狼の見た最後の光景であった。
「格の違いを……思い知ったろ?だが済まねぇなぁ……本気出せなくてよ?」
大狼の死骸で溢れかえった街道を、鎗鬼はミョルニルを引きずりながらゆっくりとした足取りで去って行くのだった。これを『圧倒的』と言うのだろうか。この言葉がこれ程似合う男はそうそう居はしないだろう。
−???−
「ありがとう、助かりました。泡沫鎗鬼さん。大狼が入り込むとは予想外でしたが、あの方が……龍様が生きていらっしゃるならそれで良い」
どこぞとも分からない場所で呟いたのは、ソルディアスだった。
「おーい、ソルディアスゥー、何時まで俺っちの動物共を使うつもりだよ?」
「レヴンか……お前の操る動物共は監察役に適しているからな。もう少し使わせてもらう」
レヴンと呼ばれた人物は小さく笑うと
「ソルディアス……あんた、嬉しそうだな」
普段無表情なソルディアスを気遣ったのか、言葉をかける。
「そうか?」
ソルディアスは意外そうな表情でレヴンを見た。
「そう見えるぜ。じゃあ、終わったら返せよ」
レヴンは踵を返して立ち去った。その場には、ソルディアスが1人残されているだけだった。
泡沫鎗鬼……FFを知っている人は気付いたかもしれませんが、この人はFFⅩのジェクトを元にしてあります。
では次回をお楽しみに




