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本編第8話〜新たなる道〜

ハンターの目的が判明し、新キャラ登場します。


では、どうぞ

「蒼龍……」


龍はベッドから起き上がり、自分の刀の事を考えていた。ここは<アミラス>。ソルディアスに敗れた龍と大虎が休養の為に留まっている大国である。


「ごめんな……俺にもっと力があれば、お前をこんな目に遭わせずに済んだ筈なのに…」


あの日……7年前、唯一の友だった雷光が死んだあの日から相棒としてどんな時も共にあった蒼龍に謝罪を述べ、折れた刀身を力一杯握り締めた。まるで、自分を戒めるかのように……。


「うっ……」


龍の手から鮮血が流れ、床にポタポタと音を立てながら広がっていく。


「この痛みより、お前の方が余程痛かった筈だよな…」その後、部屋に入ってきたサクヤに無理矢理手を包帯で巻かれ、出血多量になるところを免れた。


「どうして刀身を掴む(あんな)事をしたんですか?一歩間違えれば…」


「分かっている。でも、蒼龍に申し訳が立たなくてな」


その言葉を聞き、サクヤが不意に立ち上がる。そして龍に真剣な眼差しを向けた。


「そんなので蒼龍が喜ぶと思いますか?」


「!」


「今の龍さんに必要なのは、前を向いて歩き続ける事、今を生きる事じゃないんですか!?」


「サクヤ……」


「償いは何時でも出来ますが、命には代えられないでしょう?蒼龍だって、龍さんに生きてほしい筈です……」


「……」


「あ、ごめんなさい……ちょっと、口が過ぎました」


サクヤが慌てて口元を抑える。


「いや、良いんだ。おかげで目が覚めたよ……ありがとう、サクヤ」


「い、いえ……」


サクヤは照れ隠しをすることもなく、“照れていた”。


「話は(まと)まったのか?」


突然、ドアを開けて入ってきたのは大虎と麗裟。龍はそれに驚くことはしなかった。


「ああ…俺達は進む。前に、な」


「そうと決まれば、早速ハンターのアジトを探しましょう。この付近にも、いくつか在る筈だから」


「その必要は無いよ」


「!」


不意に聞こえた、龍でもサクヤでも大虎でも麗裟のものでもない声。振り向いた先には、少女が立っていた。歳は10代前半といったところだろうか。


「誰だい?君は」


「私はユーリ…ユーリ・ハドレシアって言うの。よろしくね」


「ユーリ!?」


麗裟が驚愕の色を露わにし、もう一度ユーリの名を呼ぶ。


「麗裟さん、知ってるのか?」


「彼女は……ユーリは、ハンターの幹部よ」


「何!?」


「一度だけ、話したことがあるわ…」


「久し振りね…麗裟」


「あまり表に出て来ない貴方が、何の用かしら?」


「あの人はまだ来ていないようね……“今は”あなた達を見に来ただけ…じゃあね」


「お、おい!」


大虎の呼び掛けを無視して、ユーリは寝室から姿を消した。


「幹部が出てくるとはな……しかもあんなに小さい子が幹部なんて」


「ユーリの強さは本物よ。あなた達が、いえ、正確には龍君が倒したゴルディール・ロルカノフより強いかも」


「かもじゃないよ。強いんだ……ユーリは」


「!」


またもや4人以外の声。茶髪の癖っ毛で、紫色をした瞳が印象的な青年が、寝室のドアの前に立っている。


「またお客さんか…で?お前は誰だ?」


大虎がうんざりしながら質問するが、青年は質問を無視して龍の方を向いた。


「やあ。去年以来かな…龍」


「メビウス…なのか?」


「他の誰かに見えるかい?」


「龍、知り合いか?」


「ああ…彼は」


「おっと、いいよ龍…自分でやるから。僕はメビウス・ザ・シュラーク。龍の友達だよ」


「え、ええぇぇ!シュラークって、まさか…」


サクヤが大声を上げる。が、場の空気を読まなかったせいか頬を赤らめ、静かになった。


「そう…メビウスは[伝説の剣士(ソードマスター)]の1人、シリウス・ザ・シュラークの息子で、俺が剣術学校を卒業してから初めての友達だ。」


「でも、そんな凄い人と、どうして龍君が知り合いなの?」


「麗裟、知らないのか?ソードハンターだったのに……龍の父親も[伝説の剣士(ソードマスター)]の1人なんだぜ?」


「え!?じゃあ覇道って」


「そうだ…龍の父親は、<刀>の現国王で[伝説の剣士(ソードマスター)]の、覇道剣聖。つまり、龍は[伝説の剣士(ソードマスター)]の息子兼<刀>の王子って事だ」


「初耳…ね(です)…」


「ハハハ、そういえば話してなかったな」


サクヤと麗裟の息の合いように思わず苦笑してしまう龍。


「状況が状況なら、話す事も出来ない相手ね」


皆が話で盛り上がっていると、メビウスが場を制する。そして、


「龍、単刀直入に言う。僕も君達の仲間に加えてくれないか?」


「どういう事だ?」


「ソードハンターを倒して、あの馬鹿親父を止めたいんだ」


「まさか…ハンターのボスって」


「僕の父、シリウス・ザ・シュラーク。父を止めるために力を貸してほしい」


「しかし、俺の父さんは5年程前に[伝説の剣士(ソードマスター)]が滅ぼしたと言っていたが」


「最後の詰めをやったのは僕の父なんだ。倒した風を装い、残党を匿って復興の時を狙っていたらしい」


「そういう事だったのか……分かった、力を貸そう。俺達の目的もハンターを倒す事だしな。みんな良いか?」


「OKだ。戦力は多い方が良い」


「それにメビウス君が何らかの情報を持ってるかもしれないものね」


「ありがとう、これから宜しく……あぁそれと、みんなには僕の“不規則な(イレギュラー)”を紹介しておきますね」


そう言うとメビウスは一瞬で龍の姿へと“変わった”。


「コイツはすげぇ」


大虎が感心した様な声を上げて龍の姿に変身したメビウスへ歩み寄った。


「僕の“不規則な(イレギュラー)”は『突然変異(メタモルフォーゼ)』。身体強化系で、見たものになら何にでも変身する事が出来る」


「一度見たら良いのか?」


「まあね…なら、これはどうかな?」


「!ソルディアス…」


今度はソルディアスの姿へと変わるメビウス。それを見た龍の眼が怒りに燃えるが、今はどうすることも出来なかった。冷静さを取り戻し、


「メビウス……お前、ハンターの情報を持ってるよな?」


メビウスに情報提供を求める。


「そうだね……まずは奴らの目的から話そう。ソードハンターは名刀の力を使って五元の竜を呼び覚まそうとしてるんだ。」


「五元の竜?」


「地上、天空、海洋、冥界、そして天界を統べることの出来る最強の竜なんだけど、地、天、水、破壊、創造を司る5匹の竜の力によって封印されていたんだ。しかし7年前、破壊の竜が何者かに倒され、封印のパワーバランスが崩れかけている。ハンターはそこを狙っているみたいだね」


「!破壊の…竜…」


「何か知ってるね?龍」


「7年前にその竜を()ったのは……他でもない、この俺なんだ」


「おい龍、それは本当か?」


「ああ…親友を殺されて、何も見えなくなった俺は気付いたら、その竜の頭を吹き飛ばしていたんだ」


自分を凝視する大虎に、龍は目を合わせようとしなかった。


「仮にそうだとしても、可笑しいわね。最上級種族の竜が人里に出て来るなんて…」


麗裟が考え込んでいるが、その沈黙を破ったのはメビウスだった。


「誰かが差し向けた、としたらどうかな?」


「そんな事出来る奴が居るってのか?」


「まだ分からないけど、それ以外可能性が無いのも事実じゃないかな……竜が好んで人前に来るわけがないからね」


「確かに……そうだけどな」


「その話は後々考えれば良いさ…他に情報は無いのか?」


「幹部は全部で7人居るらしい。ゴルディール・ロルカノフ、ソルディアス・リブラスエード、ユーリ・ハドレシア……僕が知ってるのはこの3人。後の4人は見たことが無いんだ。その証拠に『突然変異(メタモルフォーゼ)』でも変身出来ない」


メビウスが一通り話し終わると、ユーリへと話題が移行していった。


「ところであのユーリって子、見に来ただけって言ってましたよね?」


「次は何か仕掛けてきそうだが、メビウス、お前はどう思う?」


「さぁね…あの子は近くに居ても全くと言って良い程何を考えてるか分からないんだ……!?みんな伏せろ!!」


メビウスの合図で全員が床に伏せる。その瞬間、何処から現れたのか、無数の刃が宿の壁を串刺しにした。


「!!!!」


「これは……間違いない、ユーリの刀『連刃(れんじん)』だ」


「当ったり〜、流石メビウスだね。まぁこのくらいは避けきれると思ってたけど」


穴だらけになり、崩れ落ちた壁の向こうから聞こえる少女の声。


先程寝室に来ていたユーリ・ハドレシアである。


「見に来ただけじゃなかったのか?」


「“今は”って言ったに聞こえなかったの?」


大虎の問いにユーリは淡々と答え、連刃を構えた。


「僕が引き受ける。だから、みんなは此処から離れて」


その言葉を聞いた瞬間、龍にはメビウスと雷光の姿が重なって見えてしまった。離れていくメビウスの背中を見つめながら、龍は思う。「また、俺を1人残して去っていくのではないか」、と……

次は、戦闘になります。

番外編もそろそろ新しいのを考えなければ…


感想あればお待ちしてます。

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