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第14話:偽聖女の末路、至宝の「修復」という名の絶望

北の帝国の謁見の間は、今日も荘厳な静寂に包まれていた。

 壁一面を飾る、四国の王たちから献上された「贖罪の宝石」が、セレスティーヌの美しさを引き立てるための淡い光を放っている。


 そこへ、衛兵に引きずられるようにして「それ」が運び込まれた。


「……離して! 私は聖女よ! アステリアの太陽、エレノア・ド・ラ・ヴァリエールよ!」


 かつての愛らしさは微塵もない。

 桃色だった髪は汚れ、魔力の暴走によって肌にはどす黒い痣が浮き出ている。やつれ果てた姿は、まるで地獄から這い出してきた亡者のようだった。


 セレスティーヌは、アルスターの膝の上で、静かにその惨状を見つめていた。

 アルスターは彼女の腰に腕を回し、不快そうに眉を潜める。


「……臭うな。不浄な魂の腐敗臭が、ここまで届くようだ。セレスティーヌ、やはりこんなものは今すぐ塵にするべきだ」


「陛下、お待ちくださいませ。……彼女が何を望んでいるのか、聞いて差し上げたいのです」


 セレスティーヌがアルスターの頬にそっと触れると、皇帝の殺気は一瞬で凪いだ。

 彼女はゆっくりと玉座を降り、エレノアの前へと歩み寄る。その足音は、静かな湖面を渡る風のように穏やかだった。


「お、お姉様……! ああ、お姉様! 助けて……助けてくださいませ!」


 エレノアが、必死にセレスティーヌのドレスの裾に縋り付こうとする。

 だが、その手が触れるよりも早く、セレスティーヌの周囲に展開された「聖域」の光が、エレノアの汚れた指先を優しく、しかし峻烈に弾き返した。


「……貴方は、どなたでしたかしら?」


 セレスティーヌが首を傾げ、記憶の底を辿るように囁いた。

 その瞳には、恨みも、怒りも、復讐心さえない。

 ただ、道端に転がる石ころを見るような、徹底した「無関心」が宿っていた。


「な、何を……! エレノアよ! 貴女の可愛い妹のエレノアよ! お姉様、お願い……私の魔力が、お父様の命が、もうすぐ消えてしまうの! 貴女のその力で、私たちの家を、アステリアを、元通りに『修復』して!」


 エレノアの絶叫が広間に響く。

 セレスティーヌを「無能」と呼び、国外に叩き出した張本人が、今やその「無能」の慈悲を乞うている。この上なく滑稽で、最高に甘美な光景。


「……『元通り』、ですか」


 セレスティーヌは、エレノアの痣だらけの額に、そっと指先を添えた。


「わかりましたわ。貴方の望み通り、貴方の魂を『本来あるべき姿』に修復して差し上げます」


「ああ……っ! ありがとう、お姉様! これで私は再び聖女に——」


「【概念修復リ・ジェネシス】」


 セレスティーヌが唱えた瞬間、銀色の奔流がエレノアを包み込んだ。

 だが、起きたのはエレノアの期待した「奇跡」ではなかった。


「ぎ、ぎゃあああああああああああっ!?」


 凄まじい絶叫。

 セレスティーヌの力は、嘘で塗り固められたエレノアの「現在の姿」を剥ぎ取り、彼女の魂の原点へと巻き戻していく。


 奪い取った魔力は、本来の持ち主(死者や精霊)のもとへ。

 虚飾の美貌は、内面の醜さに相応しい老いへと。

 そして、彼女が踏み躙ってきた数多の人生の重みが、すべて「本来の報い」として彼女の肩にのしかかる。


 数秒後、光が収まった時。

 そこにいたのは、聖女でも令嬢でもない。

 魔力を一切持たず、自らの罪の重さに耐えかねて腰を抜かした、ただの「醜い老婆」のような女だった。


「……これが、貴方の『本来の姿』ですわ。エレノア」


「あ、あ……あう……」


 エレノアは声も出せず、震える手で自分の顔を触り、絶望に白目を剥いた。

 彼女の魂は「修復」された。しかし、その根源が空っぽで醜悪だったため、修復された結果がこれだったのだ。


「……終わったな。衛兵、この塵を片付けろ。二度と日の光が当たらぬ場所へ」


 アルスターの冷酷な声。

 エレノアは、自分がかつてセレスティーヌを追い出した「奈落」よりも深い絶望へと、無様に引きずられていった。


 セレスティーヌが玉座へ戻ると、アルスターは彼女を逃がさないように抱きしめた。


「……お疲れ様。私の優しい女神。……だが、あんなもののためにその尊い力を使ったことが、私は気に入らない」


「陛下……。これで、すべてが『本来の場所』に戻ったのです。……私の過去も、あの方々の未来も」


「ああ、そうだ。そして、君が私の腕の中にいることも、この世界の最も正しい『修復』だ」


 アルスターは、セレスティーヌの唇に、執着の滲む熱い口づけを落とした。

 外では、アステリアの最期を見届けた民たちが、新たな平和を祝う歌を歌っている。


 かつてすべてを失った少女は、今。

 復讐さえも「修復」という慈悲に変え、愛する皇帝と共に、永遠の楽園を築き上げようとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


第14話。ついにエレノアへの「最終断罪」を執行いたしました。

「本来あるべき姿に戻す」というセレスティーヌ様の力が、

虚飾で生きてきたエレノアにとって最大の毒になる……。

これぞ、西園寺ミオ流の「知的なざまぁ」でございます。


復讐のために手を汚すのではなく、ただ「正しく直す」だけで敵が自滅していく。

この圧倒的な格の差こそ、至宝に相応しい結末だと思いませんか?


「エレノアの末路が最高にスカッとした!」「陛下の独占欲、もっと浴びせて!」

そんな風に思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をお願いいたします。

皆様の応援という「光」が、セレスティーヌ様の聖域をさらに広げますの。


次話、ついに第一部最終回。

世界中の「呪われた土地」を一気に修復し、セレスティーヌ様が真の「世界の母」へ。

そしてアルスター陛下との、呼吸さえ忘れるほど甘い「永遠の誓い」……。

どうぞ、その輝かしいフィナーレをお見逃しなく!

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