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第12話:跪く四国王と、冷酷なる選別

北の帝国の謁見の間は、今や「世界の中心」と化していた。

 かつては「呪われた地」と忌み嫌われたこの場所が、今や大陸中の王たちが命を懸けて拝謁を願う聖域へと修復されたのだ。


 広間の中央。そこには、先日まで数千の艦隊を率いていた四国の王たちが、泥に汚れた正装のまま、額を床に擦り付けていた。

 彼らが踏みしめているのは、磨き抜かれた黒大理石。その上を、セレスティーヌが静かに、優雅に歩み寄る。


「……顔を上げなさい。貴方方の『資材』は、すべて海に返しましたわ」


 セレスティーヌの声は、天界の鈴が鳴るように清らかだった。

 だが、王たちにとっては、それはどんな雷鳴よりも恐ろしく響いた。彼らが見上げた先——そこには、アルスターの腕に抱かれ、この世の美しさをすべて凝縮したような皇后の姿があった。


「せ、セレスティーヌ皇后陛下……っ! どうか、我が国に慈悲を! 我が国の艦隊を失い、経済は破綻寸前です! どうか、その『修復』の力で、我が国の枯れた鉱山を、崩れた港を直してはいただけないでしょうか!」


 一国の王が、涙を流して縋り付く。

 だが、その手がセレスティーヌのドレスの裾に触れようとした瞬間——。


「——汚い手で、私の妻を呼ぶな」


 アルスターの冷酷な声が、広間の空気を一瞬で凍土へと変えた。

 彼が指先を僅かに動かすと、王の周囲に鋭い「氷の檻」が突き立ち、その動きを完全に封じ込める。


「君たちは、彼女を『兵器』として奪おうとした。……その罪が、金や言葉で購えるとでも思っているのか?」


「ひ、ひぃっ……! 皇帝陛下、我らは……我らはただ……っ」


「セレスティーヌは、君たちの所有物ではない。……そして、君たちの崩壊した国を直す理由も、彼女には一欠片もないのだ」


 アルスターはセレスティーヌの腰を抱き寄せ、その首筋に顔を埋めた。

 数万の兵を殺すよりも残酷な、圧倒的な「拒絶」。

 セレスティーヌは、震える王たちを悲しげに見つめたが、その瞳に「迷い」はなかった。


「……私の力は、愛する方々を守るためにあります。……私を『道具』としてしか見ない方々のために、この力を振るうことは、陛下への不忠となりますわ」


 セレスティーヌの、凛とした宣言。

 アルスターは歓喜に瞳を濡らし、彼女の耳たぶを甘く噛んだ。


「……聞いたか。これが、私の神の審判だ」


 アルスターは王たちを見下ろし、最後にして最悪の通告を突きつけた。


「どうしても彼女の『修復』を願うというのなら、条件がある。……今日から一年間、君たちの国にあるすべての黄金、宝石、美術品を、彼女の足元に敷き詰める絨毯として献上しろ。……彼女が歩く道が、君たちの絶望で輝くのなら……一箇所くらいは、直してやらんこともない」


「全財産を……絨毯に……!?」


 王たちは絶句した。

 それは、国としての誇りも富もすべて捨て、セレスティーヌ一人の「踏み台」になれという、究極の屈辱だった。

 だが、彼らに拒否権などない。セレスティーヌという「楔」を失った世界は、彼女なしでは維持できないほどに崩壊を始めているのだ。


「……下がれ。これ以上、私の視界に彼女以外の不純物を入れるな」


 アルスターが手を振ると、王たちは衛兵によって、ゴミのように広間から引きずり出されていった。


 静寂が戻った広間で、アルスターはセレスティーヌを横抱きにし、玉座へと座った。

 彼女を膝の上に乗せ、その銀髪に何度も何度も熱い口づけを落とす。


「……よく言った、セレスティーヌ。……君が、私だけの修復者であると言ってくれた時、私の心臓は狂いそうだった」


「陛下……。ですが、あの方々、本当にお国中の宝を持ってくるつもりでしょうか」


「持ってこさせる。……君の歩く道は、常に世界一高価でなければならないからな。……そして、その道を歩く君の脚を、今夜は一歩も動かせないほどに愛してやる……」


 アルスターの独占欲は、もはや「崇拝」へと昇華していた。

 セレスティーヌは、彼の重すぎる愛の重圧に溜息をつきながらも、その温もりがもたらす「修復不能なほどの幸福」に、身を委ねるのだった。


 一方、王宮の門の外では。

 アステリアの残党として、物乞いの列に並んでいたエドワードが、宮殿から引きずり出される王たちの姿を見て、狂ったように笑い声を上げていた。

 「あんな神のような存在を、自分はかつて『無能』と呼んだのだ」という、あまりにも巨大すぎる現実。

 彼の正気は、その瞬間に、修復不能なほどに砕け散ったのである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


第12話、ついに列強諸国の王たちが「踏み台」にまで成り下がりましたわ。

「全財産を絨毯にしろ」という陛下の台詞、これぞ独占欲と権力の究極の融合です。

そして、エドワードの完全なる精神崩壊……。

自業自得とはいえ、至宝を捨てた報いは、これほどまでに重いのです。


「陛下の過保護が止まらない!」「エドワードの壊れっぷりが最高!」

そんな風に感じていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をお願いいたします。

皆様の評価という「至宝」が、わたくしの筆をさらに輝かせますの。


次話、ついにセレスティーヌ様を「女神」として祀り上げる、

世界規模の「聖教団」が誕生。

それに嫉妬したアルスター陛下が、なんと「教祖」に宣戦布告……!?

どうぞお楽しみに!


明日からは1日1話の投稿予定です。

ブックマークしてお待ちください。

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