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Gotcha Majesty  作者: MstaR☆
1/3

1話 グッバイ日常

そこそこ発展、人口そこそこ、なんの変哲もない町、御茶混(おさま)市。特筆事項があるとすれば、周りの地域よりも異様に家賃が安いことと……人口のほとんどが地球人のコスプレを楽しむ宇宙人ってことくらい。


 そんな御茶混(おさま)市にやって来た1人の地球生まれの(自称)美少女、円谷円香(つぶらやまどか)は念願の自由な一人暮らしを謳歌……するはずが、御茶混(おさま)市で繰り広げられる日常はどうやら平穏とは程遠いようで……。

ここは御茶混(おさま)市。


そこそこ発展、人口そこそこ、なんの変哲もない町。特筆事項があるとすれば、周りの地域よりも異様に家賃が安いことと……人口のほとんどが地球人のコスプレを楽しむ宇宙人ってことくらい。




そんな御茶混(おさま)市のこじんまりとした小路に、肩に届かない短めの小豆色が奥ゆかしいポニーテールと小さめのバックパックを揺らして歩く少女の姿が1つ。




「……ふぅ。」




年季の入りまくったアパートの前まで歩いて来ると、足を止める。


自分の人生の何倍も先輩そうな外観に目を輝かせるもの好き、地球生まれの美少女こそがこの私……!




「来たぞ御茶混(おさま)市〜〜〜!」




円谷円香(つぶらやまどか)




窮屈な実家に辟易した私は、色んな人に出会って外の世界を見てくるという名目のもと、中学校卒業を機に半ば家出に近い形で実家を飛び出した。


高校生で一人暮らしっていうと親御さんから反対されそうなものだけど、私の場合は親に嫌われていたので向こうも快く送り出してくれた。


私が嫌われている理由は、おばーちゃん……正確にはひいおばあちゃんがかなり変わった人で家族からは腫れ物扱いからのほぼ絶縁状態なんだけど、そのひいおばあちゃんの特徴を色々と受け継いでいるからだ。


この小豆色の髪とか……あとは片目だけだけど、動画の再生マークみたいに見える変わった形の瞳とか。私はおばーちゃんのこと大好きだから、結構気に入ってるんだけど♪


ここだけの話、私が御茶混(おさま)市を選んだのもおばーちゃんが住んでいるからだったりする。


……とまあ、ここまで長々と身の上話をしてきたわけだが要は、




「ふっふっふ……、」




私、円谷円香(つぶらやまどか)はこの春よりめでたく、大好きな『シュガー』に囲まれてバラ色のおひとり様ライフを謳歌します……ッ!




「自由だ〜〜〜〜〜!!」




思いっきりその場で跳び上がり上半身を反って両手を空に掲げ、最高潮の開放感で自由を叫んだ。






「ふぅ〜。」




吐き出した側から溢れんばかりに湧いてくる開放感にいったん蓋をして、ポケットに入っていた鍵を取り出す。


……鍵につけた『シュガー』のストラップと目が合い思わず頬がゆるゆるになる。



「にへへ♪」




鍵を握りしめたまま敷地へ、階段へと歩みを進める。


『シュガー』は『バトルシエ』という作品の主人公であり、フルネームは『シュガー・パティシエール』。『最強最高の菓子職人』を(うた)い、食材と死闘を繰り広げみんなにお菓子を振る舞い笑顔にしてくれる、強くて可愛い女の子!作中でもリアルでも『シュガー』の愛称で親しまれている。


ここだけの話、私の終生の推しである……ッ!




「ここだ……。」




2階に上がり吹きっ晒しの廊下を数歩進むと、おニューの私の城の城門……鍵に掘られた番号の部屋のドアに辿り着いた。




「今日からここが、円谷円香(つぶらやまどか)の……、し




ギィ……




「ろ…………っ。」




ピッカピカの鍵をドアの鍵穴に差し込み半回転して景気よくドアを引くと、春の息吹も裸足で逃げていきそうな、なんとも哀しい年季の入った金属音に歓迎された。




「ハハ……ッ。」




これには思わず乾いた笑いが出た。




「ん"ん"……ッ!」




しけこんだ空気を咳払いで追っぱらい、スマホの待ち受け画面で時間を確認する。




「ちょい早かったか。」




引越し業者の搬入作業まであと1時間程といったところ。




「……にしても、」




待ち受けのシュガーが可愛い過ぎるぅッ!!




「はぁ……♪さすが最強最高の菓子職人……///」




オンボロアパートで沈んでいたテンションもシュガーの笑顔にかかればたちまちテイクミーハイヤー……ッ!!


(あで)やかなピンク髪が、白とピンクを基調としたポップでスイートなショートドレスが……!他ありとあらゆる『シュガー・パティシエール』の全てが私を狂わせる……ッ!?


もうシュガーが可愛すぎて、なんなら『バトルシエ』のロゴまで愛おしく見えてくる……ッ!




「ダメだ、アニメのキービジュが強すぎて鼻血出る……。待ち受け変えとこ。」




こなれた手つきでシュガー専用のアルバムを漁る。


笑顔、照れ、おこ、寝起き、涙目、太もも、後頭部……、ああダメだどれも刺激が強いッ!?




「……とりあえず『バトルシエ』ロゴだけのやつで。」




渦潮のように荒ぶった心に一段落つけて靴を脱ぎ、偉い人がするみたいに腕を後ろに組んでおニューの我が城を意味もなく歩き回る。


どこに何を置いてなんて、頭の中でルームメイクを楽しんでいるとだんだんお腹が空いてきた。




「コンビニでお昼買ってこよ〜っと!」




お財布以外の手荷物はぜ〜んぶ捨て置いて、軽装で新居から初めての外出……!




「……の前に。」




スマホのトークアプリPINE(パイン)を立ち上げ、おばーちゃんに到着のメッセージを打つ。


御年(おんとし)105歳のおばーちゃんだがひ孫とメッセージ送り合えるくらいには機械に強い……というかバリバリだし、お世辞抜きで若い。ざっと、孫である私の母より若々しい見た目で親戚一同から不気味がられるくらいには。




「……、よしっ♪」




メッセージを打ち終え、送信する。


既読はつかないけど、今頃おばーちゃんは寝てる頃だろうとサインアウトし、靴を履いた。




「いってきま〜す♪」




誰もいない我が城に外出を告げ、小躍りながら道路に繰り出し、1番近いコンビニを目指した。




「はぁ……♪///」




見上げれば青い空、白い雲……。


耳をすませば爽やかな鳥の(さえず)りに




「お義姉様(ねえさま)の、わからずやぁぁぁあ!!!」




女の子の叫び声……。




「……え」




円香が振り向くのとほぼ同時に、声がした方向からは土煙を伴った爆風が吹きつけ重機でも落としたかのような激しい衝撃音が轟いた。




「わからずやって言う方がわからずやなんです!!」

「バカバカバカバカバカバカバカバカーー!!」




「ぅ……、」




腕で風を避けながら目を細めて爆心地を見つめると、道路のど真ん中で2メートル弱程の恐竜のようなシルエットが土煙の中に(うごめ)いていた。




「なに……?」




だんだん土煙が晴れていくと、恐竜形のシルエットが鮮明に見えてきた。




「お義姉様(ねえさま)の……!!」




シルエットの正体は……中学生程の年齢の女の子だった。


男児向けのロボットアニメを彷彿とさせるような、深緑色の恐竜のような巨大な爪を持つ手足と顎に太い尻尾を武装したスカイブルーのツインテールが印象的な女の子。


この子の重厚な武装が中学生程の女の子のシルエットを2メートル弱にまで大きくしていたのだ。




「何、あれ……?」




怪獣?女の子……?っていうかどこから飛んできた……!?


怪獣の子が口から黄金色の炎をこぼして足下に捲し立てている。


突然すぎる非日常を前に、円香はただ立ち尽くすことしかできなかった。




「ぐっ……!」




怪獣の子の足下から声がもう一つ聞こえた。


視線を下ろすと、怪獣の子の足下にもう1人いた。


もう1人は円香と同い年くらいの容姿の、怪獣の子と同じ髪色をした野球のユニフォーム姿の少女だった。


踏みつけられていた方の、野球の少女は持っていたバットを自分を踏みつけている足に叩きつけたがビクともしない。




「お義姉様の……!!!」




怪獣の子の巨大な爪を武装した腕にバットが弾き飛ばされた。




「……え、」




弾かれたバットがバウンドし、足元に転がって来た。




「……、」




転がって来たバットが足にコツンと当たり、唖然としていた円香は我に帰った。




「助けなきゃ……ッ!」




あの子らが何者で、なんで取っ組み合ってるとか、どっちが良いやつで悪いやつかなんてわからないけど……!




「お義姉様のぉ……ッ!!!!」




さっきから怪獣の子が叫んでる『おねえさま』という言葉から、取っ組み合ってる2人はおそらく姉妹。


しかも怪獣の子は『おねえさま』と呼ぶくらいには野球の少女を慕っているんだ。そんな家族が殺し合うなんて……哀しすぎるッ!


円香は転がっていたバッドを掴み取り、強く握った。




「……ッ!!」




円香は今すぐにでも飛び込んで助けに入りたい衝動に駆られたが、グッと堪えて状況把握に努めた。




「あの怪獣の子の炎を受けたら、凡人の私はひとたまりもない……。」




だから、無策に飛び込むのは絶対NG……!


考えろ……ッ!!




遠目でもわかるほどに怪獣の子の口から溢れる黄金色の炎と、怪獣の子が爆風の反動や反撃を顧みずわざわざ相手を踏みつけている状況から円香は1つの結論を導き出した。




炎はあの子自身の視界を奪ってる……!




デメリット無しにあの溢れ出てる炎を吐き放題なら、私だったら絶対あんな愚直なインファイトは仕掛けない。


あの怪獣の子は『見えないから』わざわざ爆風や反撃を受けるリスクを負ってまで相手を踏みつけて、『見えなくても』当たる状況を作ってるんだ……。




「……!」




円香はバッドをいっそう強く握りしめると、限界まで姿勢を低くして自分の身体が炎で怪獣の子の視界から隠れるように、真正面から踏み込んだ。


怪獣の子の懐に飛び込んだ円香は、怪獣の子の顎めがけて、刀の突きの様にまっすぐバットを突き上げた。




「でぇぇやぁぁああッ!!」


「バ

「え




バットは巨大な爪のせいで小回りの効かない両腕のガードをすり抜けるとそのまま怪獣の子の顎を捉え、のけぞらせることに成功した。




「がっ……!?」




無理やり閉じられた怪獣の子の口で大爆発が起こり、3人とも盛大に吹っ飛ばされた。








「……ったぁ〜。」




どうやら爆発の勢いでT字路まで吹っ飛ばされたようだった。


円香は壁なり地面なりに叩きつけられることを覚悟していたが、それにしては痛みが浅かった。




「大丈夫ですか?」


「え……?」




不意に後ろから聞こえた声に振り向くと、野球の少女がいた。どうやら庇われていたようだ。




「アナタ……勇敢なんですね。ありがとうございます♪」


「いやいや!勇敢っていうか、あれ食らったら死んじゃうでしょ!?」


「死に……どうでしょう?」




野球の少女は腕を組んで考え込むような仕草をした。




「お義姉様と……、イチャつくなぁぁあ!!」




土煙の向こうから怒号が聞こえると、怪獣の子が土煙を切り裂いて2人目掛けて突進してきた。




「危なっ!?」

「ひいっ!?」




2人は横に飛び退いて避けると、怪獣の子は追撃をすることはなくそのままT字路を曲がり道なりに遠ざかっていった。




「『お義姉様』って……アレ、アナタの妹さん?」


「はい。私を連れ戻すってさっきからあの調子で……。」


「え、なに家出してるの?」


「はい!星ごと飛び出して来ちゃいました♪」




野球の少女は満面の笑みで答えた。


どうやらこの子も自分と似た境遇にあるようだ。それにしても、




「宇宙規模かぁ……。」


「我が妹ながら、もの凄い執念です♪」




誇るところじゃないし、命取られかねないのわかってるのかなあこの子は……。




「はぁ。色々言いたいことはあるけど……はいこれ。」




円香は持ちっぱなしだったバットを野球の少女に手渡した。




「あの子パワーはあるけど小回り効かないみたいだから、やるならさっきみたいな不意打ちが有効だよ。」


「ありがとうございます……。」


「……、」




円香がふと視界に入ったカーブミラーを見ると、先程駆け抜けていった怪獣の子が別の道からこちら目掛けて爆走している姿が小さく映っていた。




「げ……、」




2人が避けてからおしゃべりする時間があったのは怪獣の子が止まれずあらぬ方向に走り続けていたのではなく、回り込んで死角から2人にもう一度突進攻撃を仕掛けようとしていたからだと円香は悟った。




「あの、なんでアナタは


「向こうから来る避けてッ!!」


「うわっ!?」




円香は野球の少女を引っ張って死角から迫っていた怪獣の子の突進をまた避けた。




「ちょこまかと……ッ!」




怪獣の子はカーブミラーに身体を掠めて破壊すると、また道なりに駆け抜けて2人からどんどん離れていった。




カーブミラーを壊された……!あの子、この一瞬で私がカーブミラーを見て察知したことに気づいたの……!?




円香は怪獣の子が思いの外に頭が回るタイプであることを察して脂汗をかいた。




「で?妹さんどうするの、宇宙の果てまで追って来てるけど、このままお手手繋いで仲良く帰る……!?」


「……そんなの、」




野球の少女はヘルメットのツバを摘み深く被ると、




「死んでも嫌です……ッ!」




白い歯を見せて笑った。




「……だよねっ!」




円香は迷いのない野球の少女の答えにシンパシーを覚えて、無自覚に同じ顔をしていた。




「じゃあまずここを切り抜けるよ……ッ!」


「はい!」




意気込む2人の周りで微弱な地響きが起こり地面や建物が細かく揺れ出した。




「次はどの道から……ッ!?」


「いーや、道じゃないね。」


「へ……?」


「妹さん、脳筋っぽい立ち回りしてるけど賢いみたい……!」


「そりゃあ自慢の


「今そういうのいいから。」


「はい……。」




周りの揺れがだんだん大きくなってくると、野球の少女はようやく振動に気づいて下を向いた。




「え……?まさか地中を掘って……、


「そのまさかだね。」


「いやいや、ここは砂浜じゃないんですよ!?」


「妹さんにとってはフカフカの砂浜みたいなもんでしょ。……掠めただけでこんなだし。」




円香はひしゃげて使い物にならなくなったカーブミラーに触れてみせた。




「そんなの、私たちでどうしようもなくないですか!?」


「しなきゃ里帰りだね。」


「う"……それも嫌です。」


「どうしたものか……。」




円香は腕を組んで唸ると、




「殴り合って勝ち目なんて無さそうだし……遠距離攻撃できる?」


「ボールなら♪」


「…………がんば。」




円香は諦め半分に野球のユニフォーム姿の少女の方に手を置くと、2人の足下の揺れが一段と大きくなった。




「うわわっ!?」


「真下から来るよ!よく見て避けてっ!」




足下の道路に亀裂が走ると、2人はそれぞれ大きく後ろに飛び退いて避けた。




「チッ……!」




2人が避けた直後、怪獣の子がカジキマグロの狩りの様に地面から飛び出してきたが、空振りしたことに苛立っている様子だった。




「浮いてる今なら踏ん張りが効かない……、チャンスだよ!」




野球の少女はどこからともなく出てきたグローブとボールで投球の構えを取ると、力強く頷いた。




海神(ウォーター)……!蛇行(スライダー)ーーッ!!」




野球の少女は、水流を纏ってめちゃくちゃに蛇行する豪速球を投げつけた。




「そんなの効か




怪獣の子は巨大な爪でボールをはたき落とそうとしたが、




「ガハッ!?」




めちゃくちゃな軌道で蛇行するボールはその手をすり抜けてボディに直撃し、怪獣の子を後退させた。




「やりましたっ!」


「今更だけど、妹さん攻撃しちゃっていいの……?」


「私、いっぺんこういう姉妹喧嘩やってみたかったんです♪」


「へ、へえ……。」




満面の笑みで答える野球のユニフォーム姿の少女を見た円香は反論する気になれなかった。




「お義姉様が……、喧嘩……?」




怪獣の子はさらに苛立ち、爬虫類のようにちっちゃくなった瞳孔をこちらに向け睨みつけた。




「天真爛漫で優しくて弱々なのがお義姉様の良いところなのに……。」


「弱々は余計ですッ!」


「へ、へぇ〜……。」




なんだか変なことに首突っ込んじゃったかなぁ……。




「……おいそこのっ!」


「私っ!?」




円香は思わず変な声が出た。




「貴様か、お義姉様を(たぶら)かしたゴミ虫は……?」


「こら!他人にそんな言葉使っちゃいけま


「お義姉様は黙ってて。」


「ヒィッ!?」




あ、弱々だ……。


まあでも乗りかかった船なので、野球の少女の味方をすることにした。




「誑かすとかわかんないし初対面だけど……、家出した子を無理やり連れ戻すのは逆効果なんだよ……ッ!?」


「知った口を


「知ってるもん!」


「「え?」」


「だって私も家出中だし♪」




円香、渾身のドヤ顔。




「……というわけで、この子連れ戻すってんなら私も加わって2対1だよ!」


「ほ、本当に良いんですか……?」




野球の少女が目をパチクリさせてこちらを見てきた。




「このままアナタを見殺しにしたら夢見が悪いし。」


「見殺しって……、私が一方的にやられると思ってるんですか!?」


「じゃあさっきの1人でどう切り抜けるつもりだったの?」


「それは




「だったら2人まとめて()じ伏せるッ!!」




怪獣の子が赤色の火球をこちらに吐き出してきた。




色が違う……?


さっきはもっとヤバそうな黄金色の炎だったのに……。




「忘れてませんか……?今のお姉ちゃんは、バッター




炎の色が違うことに違和感を覚えていると、怪獣の子の口角がニヤリと上がるのが目に入った。




「避けてっ!!」




円香はユニフォームを引っ張って野球の少女を無理矢理避けさせた。


「へ?」




火球はやがて遠くの電柱に着弾すると、中規模の爆発を起こし電柱を少し抉った。




「チッ……。」


「やっぱり細工してた……!」


「細工?」


「妹さん、炎を撃ち分けられる……!赤いのは触れたら爆発するから気をつけて!」


「もし、さっきのを打っていたら……。」


「なんで初見で対応してくるかなぁ……?しかもさっきからお義姉様にベタベタベタベタ……ほんっと邪魔だなぁそのゴミ虫……。」


「「ひいっ!?」」




妹さんの目がますますガンギまってるぅ!?




「何か妹さんを撃退できるような必殺技とかないの!?」


「いやぁ、色々試したけどパワー負けしてさっきの通りです……///」




野球の少女はバツが悪そうにはにかんだ。




「……逃げるかぁ。」


「宇宙の果てまで追って来てるのにですか!?」


「あ〜……それは逃げきれないわ。」




そういえばさっき、星を飛び出したとか言ってたな……。




「そういうこと。だからわたしと帰ろ?お義姉様♪」


「死んでも嫌です……ッ!」


「じゃあ妹さん追っ払う策を考えないとだね……!」


「そんな時間与えると思う……?」




怪獣の子が円香を狙って突進してきた。




さっきからこの子、パワーは凄いけど近接攻撃は単調だ……。頑張れば私でも囮くらいにはなれるか?




「危なっ!?」


「……チッ。」




怪獣の子は振り向き様に尻尾で薙ぎ払ってきた。




「ここは私が……うわあっ!?」


「ぐえっ!?」




攻撃を止めに割って入った野球の少女がパワー負けして、円香を巻き込んでふっ飛んだ。




「いたた……。」




円香が急いで怪獣の子を視認すると、痛がる野球の少女の遠く後ろで口から赤い炎をこぼし、こちらを狙っていた。




「さっさと、避ける……ッ!」


「え




円香は野球の少女が自分の真後ろに来るように腕を強く引っ張ると、火球は2人のやや手前に着弾して円香に爆風が直撃した。




「あぐっ!?」




してやられた……!さっきから散々紙一重で避けてたら、そりゃ対策してくるよな……。




「わたしだってただの脳筋じゃあない……。これでとどめッ!!」




地べたに転がされた円香に狙いを定めて怪獣の子が突進してきた。




「……っ!」




全身が痛い。……ああ、ダメだとても避けられないや……。




だんだん大きくなる怪獣の子の身体を見て円香が死を覚悟した。






「プロテクトッピング!」




後ろから野球の少女の呪文のような声が聞こえ、円香は一瞬視界が眩しくなったような感覚をおぼえた。




「え……?」

「なに……ッ!?」




直後に怪獣の子が円香に正面衝突してきたが、ぶっ飛ばされたのは怪獣の子の方だった。




「何、が……?」


「間に合ってよかったです♪」




円香が唖然としていると、白とピンクを基調としたポップでスイートなショートドレスという、いかにも魔法少女なコスチュームをしたスカイブルーの髪の少女が駆け寄って手を差し伸べてきた。




「しゅ……がぁ……?」




その容姿は、『バトルシエ』の主人公であり円香の憧れである魔法少女、『シュガー・パティシエール』と瓜二つであった。




「ええっと、これはその……。」


「……じゃないかぁ。」




でも髪色がさっきまでの野球の少女のものであり、オリジナルとは違った。




「ま、まあそういうことです……っ!」




シュガーにそっくりな少女は顔も声もさっきまで野球の少女と同じものだった。




「どういう、こと……?」


「私、いろんな姿になって色々できるんです♪」




シュガー姿の少女は満面の笑みで答えた。




「じゃあ、さっきの『プロテクトッピング』は……、」


「私です♪」




『プロテクトッピング』は着弾した人や物を一度だけ危険から守ってくれるお守りのような技であり、シュガーが愛用する技の1つだ。


さっき突進してきた怪獣の子が吹っ飛ばされたのはこの『プロテクトッピング』の仕業だったようだ。




「だったら先に言ってよぉ!?」


「聞かれませんでしたので。」


「そりゃそうかぁ……。」




怪獣の子が遠くでヨロヨロと立ち上がった。




「今のわたしが、パワー負け……?ありえない……。」




怪獣の子はよほどパワーに自信があったのだろう。正面からぶつかってぶっ飛ばされた事実を飲み込めず動揺している様子だった。




「ってことは妹さんも……!?」


「はい、普段はもっと可愛らしい姿してますよ♪」




今の怪獣フォームでも厄介すぎるのに、時間を与えたらまた未知の能力を使って来る可能性があるってことか……参ったな。




「じゃあ、変わられる前にケリつけるよ……!」


「私、戦うのは苦手なので指示をお願いしますッ!」




シュガー姿の少女は円香の前に立ち怪獣の子と正対した。




「でしょうねッ!!」


「『でしょうね』って何ですか!?」


「まずはそのシボル……、絞り機みたいなヤツで牽制!」


「……はいッ!」




シュガー姿の少女は長めの傘程のサイズの絞り機みたいなヤツをバズーカ砲の様に構えると、ピンク色に輝く光弾で数発射撃した。


因みにこの光弾とか『プロテクトッピング』を出すクリームの絞り機型の銃の正式名称は『シボルバー』というが、作中で言及される機会なんてないのでファンの間では『絞り機みたいなヤツ』の愛称で親しまれている。




「……!」




怪獣の子は羽虫でも手で払う様に、巨大な爪で光弾を楽々と蹴散らした。




「おわ……っ、とぉっ!?」




それに比べてシュガー姿の少女の方は……光弾を1発撃つごとにのけぞって、戦い慣れていないのが丸わかりだった。




「ぜんぶ弾かれてますよ!?」


「うん。やっぱり妹さん……炎の攻撃は連発できないし、金色のヤバい炎は相当溜めないと出せないみたいだね。」


「そんなことまでわかるんですか……!?」


「だって、打ち放題ならわざわざ手で弾かないでしょ?」


「なるほど……!」


「チッ。……お義妹様を連れ戻したいだけなのに、ほんっっとうにめんどくさい……ッ!!」




怪獣の子が一瞬力をためる様な仕草をして空へ耳が裂けるような咆哮をすると、口から黄金色の炎が溢れだした。




「ヤバいやつ溜まってますよ!?」


「だろうね、温存してたんだもん!……大技来るよッ!?」


「どど、どうす


「その絞り機みたいなヤツ両手で上に構えて!」


「は、はいっ!」




シュガー姿の少女が両手で絞り機を高く掲げて気合いを入れると、絞り機は熟したリンゴのような赤色と爽やかでネイビーなクリーム色の眩い光で輝きだした。




「……掛け声はわかるよねッ!?」


「はいっ!でも、絞り機が暴れてっ、狙いが……!?」




シュガー姿の少女は、はち切れんばかりのエネルギーで輝き暴れる絞り機に振り回されて狙いを定められずにいた。




「狙わなくていいから備えるッ!」


「ええ!?」




円香には、小さくなった瞳で黄金色の炎の向こうに自分を見据える怪獣の子が見えていた。




「そこのゴミ虫……!」


「妹さん、どーせ私を狙ってここまで来るからっ!」




円香はシュガー姿の少女の真後ろに身を隠して怪獣の子が真正面に来るように誘導した。




「消し炭にしてやるぅッ!!」




怪獣の子は黄金色の炎を溢しながら、力強い踏み込みで2人の元に駆け出した。




「ほら来るよ!」


「は、はいっ!ホイッ……、プル……!!」




シュガー姿の少女はフラフラ震えながら、なんとかまっすぐ怪獣の子に絞り機を向けた。




「バスター


「そこだぁぁあッ!」




金色の炎を口に纏った怪獣の子がシュガー姿の少女に正面から激突する寸前、円香はシュガー姿の少女の膝裏目掛けて膝を突き立て、のけぞりながら跳び込んだ。




カクン……ッ




「な

「ドぉぁあ!?」




シュガー姿の少女は突然の膝カックンにより仰け反ると、ちょうど怪獣の子の真下に潜り込んで突進を回避する形になった。




「撃って!!」




円香は地面に背中をつけると、シュガー姿の少女の背後から絞り機に手を添えて掴み、2人がかりで絞り機みたいなヤツの銃口の狙いを怪獣の子の顎に定めた。




「はい……ッ!!」


「しまっ……!?」




絞り機からは2色の光が螺旋(らせん)を描き、極太のレーザーとなって真上にいる怪獣の子へと放たれた。




「「いっっけぇぇぇええッ!!!」」




光線は怪獣の子の顎に真下から直撃すると、溜め込まれていた金色の炎が今日1番の大爆発を起こした。










「…………うう、




どれくらい時間が経ったのだろう。


仰向けに倒れていたシュガー姿の少女が上半身を起こし辺りを見渡すと、さっきまで交戦していた怪獣の子の姿は無かった。




「……いない。」




シュガー姿の少女は怪獣の子を撃退したことを悟り、胸に詰まっていた息をストンと吐き出した。




「さっきの方…………不思議な子でしたけど、また会えるでしょうか……♪」




シュガー姿の少女は痛む全身を地面に投げ出し倒れ込んだ。




見上げれば青い空、白い雲……。


耳をすませば爽やかな鳥の(さえず)りに




「ぐえ……っ、」




女の子の苦悶の声……。




「わわっ!?すみません!?」




シュガー姿の少女は慌てて飛び起きた。




「へへ……よかったねまた会えて。」




シュガー姿の少女に潰されていた円香は、起きようともせず大の字になって空を仰いでいた。




「あの、助けてくれて……ありがとうございます。」


「うん。」


「……義妹は


「妹さんなら、今ごろ快適な空の旅を楽しんでるんじゃない?……さっきの爆発でぶっ飛んでったよ。」




大爆発の寸前、円香はうっすらと大空の彼方にぶっ飛んでいく怪獣の子の影を見ていた。




「そうですか……。あの!」


「なに?」


「なんで、助けてくださったんですか……?」


「……言わなかったっけ?私も家出中みたいなもんって。」


「そういえば言ってましたね。」




円香は老人のようにぎこちない動きで立ち上がると、パンパンと土を叩いた。




「へへ……、そーゆーこと☆」




円香は自分の顔の前で人差し指をまっすぐ立ててバッチバチのウインクをしてみせた。




「じゃあね♪」




円香はそのまま颯爽と立ち去




「ととっ!?」




……ろうとしたがよろけて足がもつれた。




「おっと。」




シュガー姿の少女が慌てて円香の肩を支えた。




「……面目ないや///」


「いえいえ、激しい戦いでしたので。お家まで送りましょうか?」


「…………お願いします///」




シュガー姿の少女に肩を借りて新しい自宅へと帰還した。








玄関まで運んでもらうと、私は靴も脱がずに仰向けに寝転がった。




「ありがとう、ここで大丈夫……。」


「ちょっと待っててください。」




シュガー姿の少女は私の前から去ると、ものの1分もしないうちに水の入ったペットボトルを持ってきた。


ちょっと遠くで鍵を開けるような音がしたのは気のせいだろう……。




「どーぞ♪」


「ありがと。」




円香は仰向けに寝そべったままペットボトルを受け取った。


キャップを回すと、パキッというプラスチックの音がしたのでどうやらこのボトルは未開封のようだ。




「……近くに自販機なんてあったっけ?」


「近いのだと……、ここから2、3分くらいでしょうか?」




ん?……妙に詳しいな?




「じゃあこれは


「引越しの挨拶……ってことでどうでしょう♪」


「……は?」




シュガー姿の少女が円香に見せた一本のカギには、円香の部屋の番号と1つ違いの番号が彫られていた。




「えぇぇ……。」




どうやらとんでもないのと隣人になってしまったようだ。






背景、おばーちゃん。


16回目の春。この度ひ孫は独り立ちしました!

春は出会いの季節と言いますが、16回目にして初めてひ孫は未知との遭遇を果たした次第です……。

おばーちゃんには素敵な出会いがありましたか?今頃は海の上でしょうか。もうすぐ帰って来る頃だと思いますが、しっかり寝て時差ボケしない様にしてください。


一足先に御茶混(おさま)市で待ってるよ♪

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