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『霊脈酔いの落ちこぼれ魔術師ですが、幼馴染を救いたいだけなんです』  作者: 果肉入り餃子


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第6話 「王都の片隅、二人の帰り道」

最近書き始めたのでこう書いてほしいとかあればコメントしてください

 夕方の授業が終わり、学院の門を出ると、アシルが待っていた。

 手を軽く上げて、いつものように笑う。


「リリア、お疲れ。今日は授業、どうだった?」


「え、えっと……普通、かな。計算式の課題はちょっと難しかったけど……」


「そっか。帰りながら話そっか」


 アシルはそう言って歩き出す。

 歩幅を自然とリリアに合わせてくれている。

 浅い夕日が降りてきて、王都の石畳が温かい色に変わり始めていた。


「アシルは? なんか、少し疲れてる?」


「ちょっとだけね。午前中に走り回ってただけだよ。大丈夫、大丈夫」


 笑いながら頭をかく仕草は普段と同じ。

 ただ、本当に少しだけ目の下に影が見える。

 それでも、無理をしているようには見えなかった。


 二人は学院通りを抜け、商店が多い通りへ入る。

 焼き菓子の香りや、金属を打つ音、客引きの声が混ざり合う。

 どの店も夕方の準備で忙しそうだ。


「ねぇリリア、あの店の新作パン食べた?」


「まだ。なんか行列すごくて……」


「今日は空いてそうだよ?」


 アシルが指した先を見ると、店の前には二、三人しか並んでいない。

 リリアは少し迷ってから、こくんと頷いた。


 短い列に並び、順番が来ると、アシルが迷わず二つ買う。


「はい、リリアの分」


「えっ、わ、私のまで……?」


「どうせ食べたかったでしょ?」


「う……うん。ありがと」


 一口かじると、ふわっとした甘さが口に広がった。

 柔らかくて、焼き立ての温度が指先に心地いい。


「おいしい?」


「おいしい!」


 リリアが素直に答えると、アシルが嬉しそうに笑う。

 その表情を見るだけで、リリアの胸が少しだけ温かくなる。


 王都の端のほうの静かな道へ入ると、賑やかさが少し引いて、風の音がはっきり聞こえるようになった。


「こうやって帰るの、なんか久しぶりだよね」


「最近、学院も街も忙しかったから……」


「うん。でも、たまにはこういうのがいいね」


 アシルの声は柔らかくて、疲れを見せないように気を使っている感じがした。

 リリアは気づかないふりをしつつ、歩調を少しだけゆっくりにする。


「そういえば、明日の実験ってどうするの? またセラ先輩に怒られないようにしないと……」


「怒られたくて怒られてるわけじゃないんだけどね……?」


「分かってるよ。でも、あの人、リリアにだけちょっと厳しいよね」


「ひぃ……気のせいじゃない……?」


「気のせいじゃない!」


 アシルは笑いながら言う。

 その笑い声につられて、リリアも小さく笑った。


 そんな風に笑い合うのは、実は数日ぶりだった。

 特別な出来事は何もなく、王都の端を歩いて帰るだけ。

 けれど、その時間がゆっくりで、心地よかった。


「今日はさ、なんかリリアとゆっくり話せてよかった」


 ふいにアシルが言う。

 リリアは一瞬だけ足を止めそうになった。


「えっ……あ、うん。私も、なんか……うれしい」


「よかった」


 アシルがふっと笑う。

 夕日の光が横から差し込んで、横顔の輪郭がはっきり見える。


 二人はそのまま並んで歩き続け、曲がり角まで来たところで、アシルが立ち止まった。


「じゃ、今日はこっち。リリア、また明日ね」


「うん。また明日」


 軽く手を振ると、アシルも同じように手を振り返した。

 その姿が角を曲がって見えなくなるまで見届けてから、リリアは自分の家へ歩き出す。


 街の喧騒はまだ続いていたが、胸の中は静かで温かかった。


(……明日も、一緒に帰れるといいな)


 リリアは小さく息を吸い、ゆっくりと夕方の道を歩いていった。

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