第七話 特訓
「発揮直後だからかしら。あまり力が……」
セルギスの前で使うルリア。
その手からはちょぼちょぼとしか、水が出ない。
聖女として前に出たのはいいのだが、まだ完全には覚醒していないようだ。
「ここから私個人で魔法を鍛えなければいけないのね」
「そうだな」
セルギスはそう呟く。
「だけど、天才的な魔法使いを呼ぶから大丈夫だ」
「天才的な魔法使い?」
ルリアは思わず訊き返した。
「ああ、とは言っても聖女には及ばないが、今のルリアならいい師になるだろう」
いい師。
確かにルリアはそもそも誰かから魔法なんて習ったことはない。
すべて独学で魔法を発揮しようとしていた。
だからこそ人に習うという発想が無かったのだ。
そもそもあの国では聖女は特別なものという意識が強かった。聖女に対して物を教えるなど、不敬でしかなかったのだ。
「分かりました。習う事にします」
この国をルリアの魔法で豊かにし、その一方で、自分を捨てた国に対する復讐となすのだ。
永遠にゼロから動き出さなかったルリアの魔法が段々と力を発揮しようとしだしている。
そんな状況楽しくないわけがない。
ルリアはそっと手を出して水をちょろちょろと出す。
そう、花壇に向けて。
水とは貴重なものだ。大体的に水不足になっているわけではないが、水が沢山あれば、出来る事が増える。
水をたくさん生み出し、それを保管するだけでかなりの富を生み出すことが出来るのだ。
「ふふ」
ルリアは誰にも聞こえない程度の笑みを浮かべた。
その中である可能性に気が付いた。
あくまでも魔力とは与えるだけではない。奪う事も出来るのだ。
ミルセンのことは今も許せない。
そんな彼の国をじわじわと弱体化してあげれば。
力を使えればそんなことも可能かもしれない。
過去には聖女と言えど、魔力で戦争の女神となった人物もいるのだ。
そして早速支障となる人物のもとに案内された。
そこにいたのは、三十代半ばだろうか、紫の髪の毛を持つおじさんだった。
「ほう、聖女様か」
渋い声で言うおじさん――タレール・ルウェリエル――は興味深そうにルリアを見る。
「まだ未発達という事だな」
「ええ」
セルギスはそう言うと、
「面白い。この俺の手で最強の聖女にしてやる」
そう微笑む彼の姿が少し怖いものと感じたのは言うまでもないだろう。
その日から訓練は始まった。
ルリアはその訓練に対して意欲的に取り組んだ。
決してタレールの言う言葉には決してNOとは言わずに、全て「はいっ」と答えた。
その理由は一つしかない。
早く魔法がもっと使えるようになりたい。その気持ちが大きかったからだ。
扱えるだけではだめなのだ。
その甲斐があったからか、ルリアの力は日に日に増していった。
そして数日のうちに、聖女としての力を完全に開眼されて行った。
「やってみろ」
タレールが言う。
それに合わせてルリアは水を放出する。
すると、大量の水が勢い強く壁に当たり、部屋中にあふれていく。
今ルリアのいる場所は、完全に密封された空間だ。
その水が部屋中を覆い、どんどんと水があふれていく。
ルリアはそれに押し流されるように上へと向かって行く。
そしてルリアはいったん水の放出を利用し上に上がって行く。
そして、天井へとたどりついた。
部屋の天井は解放されている。
「すごい力だな。これだけの水量をこんなにも長い時間扱えるとは」
セルギスが言う。
この部屋の中の水量。少なくとも500リットルはある。
これだけあれば、なんだってできる。
ルリアは水を手ですくう。
そして水を飲んだ。
ゴクッゴクッ。
「美味しいです」
ルリアはそう呟いた。
「これを保管できれば、水にはもう悩まされないな」
「ええ、それに」
ルリアは遠くを見る。
その先にあるのは海だ。
「左官も帰るかもしれませんし」
「まさかのそこか」
そして、ルリアの聖女としての活動はそれから続いて行った。
回復魔法で民を回復させたり、水を放出し、田んぼを支えたり、建物の腐食を回復させまた使えるようにしたり、病原菌を死滅させたりなど様々だ。
そんな時に、二人の来客が見えた。
それこそまさに、ミルセンだ。
「ルリアの件について話がある」
そう言ってミルセンはルリアを睨む。
「下がっておいてくれ」
皇太子はそう言ってルリアを下げる。




