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聖女失格と言われ、投獄された少女、隣国の王太子に拾われ聖女として覚醒する  作者: 有原優


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第5話 デート

 そして翌日、早速二人は王宮を出て、町へと繰り出した。


 セルギスは軽い変装を施している。

 髪の色を変える魔法で、銀から緑色に変えているのだ。


「それで今日はどこに行きたい?」

「そうね」


 ルリアが行きたいところはもう決まっている。午後は喫茶店でゆっくりするつもりではいるが、午前中は、美術館だ。

 ルリアは美術に興味があった。

 しかし、それは世間からあまりよく思われていない類の芸術だ。


 この国の新規的に生み出された美術だ。その特徴として、芸術性よりも内容に重きを置かれている。

 つまり、芸術性よりも、面白さ重視となっている。


 だからこそ、聖女として管理されてた時には行けなかった。

 聖女としてそのような場所へ赴いては、叩かれること間違いないのだから。


 しかし、アテルセスにいる今は自由に行ける。


「わあ、すごい」


 ルリアは絵を見て言う。

 そのには銀髪の美男子が描かれている。


 その顔を見てルリアは「ハンサム」と呟いた。

 その絵はその美少年が、花を持って佇んでいる様子が描かれているのだ。


 眼福に良い、とルリアは思った。

 身体的には、ともかく精神的にはまだ成熟しきっていないのだ。


 ルリアには普通の少女が送るべき青春だとか、そのようなものにかかっていない。

だからこそ、精神的には14歳ほどだろう。


それが、この絵に夢中になれる理由の一つだ。



「そんなにいいのか、この絵」

「ええ」


 セルギスにはその良さは良くは分からない。

 しかし、ルリアがいいというならばいいのだろうなと思い、セルギスもまた絵に見入る。


 しかし、セルギスはどちらかと言えばルリアの顔を見ている。


 その理由は至極明快だ。

 セルギスは絵に興味がモテなかったから、ルリアの方をじっと見ていたのだ。

 いや、絵に興味が持てなかったから、という訳ではない。

実の所、セルギスは前から、ルリアの事を気になっていた。


 それも一人の女性として。

 一目、ミルセンといるところを見てからずっと。



 

 数秒遅れで、ルリアもその視線に気づき、顔を赤らめる。


「何見ているの?」

「いいだろ別に」


 そういってセルギスはずんずんと先へと進んでいく。


「あら、初心なカップルね」


 そう、周りにいた人たちが言うのだから、さらに恥ずかしいという気持ちは膨らんでいく。


 ――だけどやっぱり


 絵を見るのは楽しい。そうルリアは思った。


 見られるのは恥ずかしい。しかし、その目は決してルリアに厳しいものではない。


 ルリアは怒涛の勢いですべての絵をじっくりと見た後、

 セルギスを連れて次の場所へと向かう。


(元気そうだな)


 その姿を見てセルギスは思った。

 恐らくルリアは今までに我慢してきたことが沢山あるのだ。

 そう、セルギスは見て取れた。

 はしゃぐその姿は、ミルセンと共にいたその時の姿を見たら、今の状態が素なんだろうなと思う。


「次は何に行きたい?」

「そうね」


 そして、ルリアは地図をそっと見て、次の目的地を探す。

 これは一日付き合わされるなと、セルギスは思ったが、別に構わない。

 ルリアが喜んでくれているのならば。


 それだけで十分だと思える。

 その次は、大きなドームだった。

 どこでは、馬を走らせ、どの馬が勝つかを予想するという競技だ。

 それにはお金も動く。


「私、こういうところも楽しみだったんですよね」

「おかねはどうする気だ?」

「賭けたいところですけど、今日は賭けをしないで、見ることにします」


 今はルリアはお金を持っていない。

 もし賭けをするとしたら、それはセルギスの持つお金ですることになる。

 それは流石に、いろいろと問題が生じることになるのだ。


 国費を賭け事に使うという問題が。


 そしてルリアはじっと見る。

 今まで興奮することなどなかった。自分を押し殺して生活してきたから。


「だから、私は楽しみなんですよ」


 そして、ルリアは、二番の馬を指さし、


「私はこの馬を応援します。セルギス様は?」

「俺は馬のことよく知らないんだが」

「私もよく知りませんよ。でも、単なる勘です」

「勘なのか……」


 そう呆れたかのように言うセルギス。


 でもそんなセルギスを見て、ルリアは一言。


「でも私人を見る目はあるの」

「馬だけどな」


 セルギスがそう言うと、ルリアは笑った。

 そして馬たちが走っていく。ちなみにセルギスは語の馬を選んだ。

 そして馬たちがぱっぱかと走っていく。その姿をじっと二人は見る。

 その馬たちは互いに競い合って、ルリアが応援していた馬が一着でついた。


「やったわ!!」


 ルリアは叫んだ。

 そして隣にいたセルギスとハイタッチする。


「これ、賭けてた方がよかったかもしれないわね」

「流石に、それは無茶な話だろ」


 当たるという保証もない。

 これは聖女の力でも何でもなく、ルリアの勘が見事に命中したのだ。

 屈託のない笑顔。それを見てセルギスは可愛いなと、幾度目か分からない再確認をした。

 そして、その後は、昼ご飯を食べに、レストランに向かった。


「ここも私が、美味しそうだなと」

「庶民的なんだな」

「だって、私は普通のご飯が食べたいんです」


 それを見て、セルギスはルリアが目指してたのは聖女の力などではなく、普通の暮らしなのではないか、そうセルギスは思った。


「こういう暮らしに憧れていたのか?」


セルギスがふと訊く。


すると、ルリアは静かにうなずいて見せた。


 そして、注文が届いた。

 その料理は焼肉だった。

 肉を焼いたもので、如何にも庶民的な、と言う感じの料理だ。


 ルリアはフォークを駆使してそれを食べていく。


「美味しいです」


 そう、ルリアは言う。


「私の夢がかなった気がするわ」


 そう、ルリアが言う。

 しかし、その次の瞬間、顔を曇らせる。


「でも、私にはまだ足りないものがあります」

「なんだ」

「それは、聖女の力を復活させることです」


 聖女の力。

 普通の暮らしを、平穏な暮らし、を夢見ていたルリアだが今は見返さないとやってられないという気持ちもある。

 そう、聖女の力だ。

 無能と言われっぱなしでは駄目だ。


「私は聖女の力を復活させたい」


 そう、ルリアが言った。その言葉にセルギスは頷く。


「早速色々と試していきたいの」


 そう、聖女の力を発芽させるための実験を。

 いくらでも。


「私の中には聖女の力を確実に宿してる。そんな感覚があるんです。だからこそ、私にもできるという事を示したいです」


 その言葉に、セルギスは頷く。


「分かった。じゃあ、早速試そう」

「はい。あ、この焼肉美味しいわ」


 そう言ってルリアは無邪気に肉をガツガツと食べていく。

 その光景を見て、セルギスは微笑んだ。


そして、デザートのケーキが届いた。如何にも美味しそうなものだ。


 そして、ルリアはケーキを切り分け、


「セルギス様もいりますか?」

 と言った。


 そのケーキを見て、セルギスはいただく。そう言った。


「じゃあ、あーん」


 そう言ってルリアはセルギスにケーキを与える。


 セルギスはドキドキしながら口にくわえる。


「美味しいな」


 ルリアは今間接キスをしあtことに気づいている。

 しかし、男女関係が関係するという説が本当ならば、こんな些細なことが、覚醒のカギになるかもしれない。


 ルリアはふうと、息を吐き、そのまま息をのんだ。

 覚醒など起こりえない。

 発芽はまだだというのだろうか。


 ルリア達はそのまま手を繫ぎ、そのまま城へÝと戻った。


「セルギス様」


 ルリアは告げた。


「あれをやってください」


 礼の儀式。つまりは一夜を共に過ごすという事だ。

 勿論、ルリアとしては嫌だ。しかしやってもらうのはセルギスしかいない。


 それ以外の人は絶対に嫌だ。


「本当にいいのか?」


 セルギスは訊く。

 もし仮成功しなければ、ただ望まぬ夜を過ごすだけだ。


「大丈夫です。もし失敗しても次の手を考えればいいだけですから。あと、避妊対策はちゃんとしてくださいね」

「もちろんだ」


 セルギスは頷いた。

 それなら安心した。


「じゃあ、今夜お願いします」


 ルリアはそう言った。

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