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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第95話まずはドラゴンステーキを食べよう

 ドラゴンスレイヤーという称号は、ダンジョン探索者の間にもすでに存在する。


 それは現在確認されているダンジョンの中には確かにドラゴンのようなモンスターがいて、そういうドラゴンを倒した探索者も確かに存在したということを意味した。


 しかし低い階層では例えドラゴンがいたとしてもそう強力な個体ではない。


 基本的にモンスターは深い階層の方が強力なもので、僕らが戦ったドラゴンはまさにファンタジーに出てくる化け物のイメージにかなり近いものだった。


 まぁ当然―――味も気になるでしょう? 僕は気になる。


「よし……やるか」


 ひとまず僕らは肉を取る関係上、守護者のフロアでいったん調理をすることになった。


 せっかくだから焚き火のついでにカメラ君を用意して、この夢の光景を皆様にお届けしていきたい。


『ドラゴンの肉自体はむしろ体にいいんだが、呪いがとりわけ強力だ。食べるならいつも以上に念入りに解呪。後に精霊水で洗浄するのが望ましい』


「精霊水便利だねぇ」


『使い勝手はいいよ。まぁ今の君なら魔法も強力だし、どんな呪いも問題ないさ』


「胃薬もういらないかな? こんなことばっかりしてるからいつかとんでもない腹の下し方するんじゃないかってひやひやしてるんだけど……」


『君って奴は危機感は一応あったんだなぁ。それでも、食べ続けているんだから感服だよ』


 かなり危険な食材ではあるようなので、攻略君レシピに従って慎重にクッキングを始めよう。


 とりあえず外皮が死ぬほど固いので厚めに皮を剥いて、塩コショウ。


 そしてにんにくをたっぷり塗りこんでやる。


「体にいいっていうのが気になるな……ちなみにどれくらい?」


『知恵あるドラゴンともなると、血でもかぶったら無敵の身体が手に入るくらいかな? まぁ、そういうのは呪いの効果だったりはするから体にいいとは一概には言えないが』


「ヤベェ。……倒したドラゴンはまだドラゴンじゃなかったのかな?」


『ドラゴンには違いないが、色々と若すぎるとは感じるね』


「なんか出世魚みたいなこと言い出したなぁ」


『似たようなもんだよ。だいたい蛇みたいな龍だって、鯉が滝を上って変化するなんて聞くだろう?』


「……なるほど?」


 確かに僕もそんな伝説は聞いたことがある。


 なんとなくイコールで結んでしまうところだってあるし、ドラゴンだって似たような部分はあるのかもしれないなと僕はぼんやりそう思った。


「……ドラゴンって大きくなればなるほどおいしくなったりするのかな?」


『……君ってやつは。その考えは危険だと思うけどね』


「積極的に狩りに行ったりはしないから」


『どうだか? まぁ遭遇する機会があったら油断しないことだ。今回のやつはまだまだ獣っぽかっただろう? アレはまだマシな方だと思っておいた方がいいよ』


 攻略君の言う通り、戦ったドラゴンの攻め方を思い出すと野性味が強かったように思う。


 スペックに任せた力押しというか、そう感じたのは否定できなかった。


「じゃあ、もっと強いのはどうなる?」


『人間と一緒だよ。戦略を練り始めるのさ。手数もずっと多くなる。そして体も大きく、強靭だ』


「……なるほど」


 強靭の度合いは、戦車以上とか言い出すんだろうな。そして驚くような速さで空まで飛ぶと。


 それは考えるだけでも悪夢の様な化け物だ。


 だがその化け物をとりあえずは仕留めることが出来た。


 本来なら僕らが彼の胃の中に納まっていなければおかしいんだろうけど、逆に目の前の食卓にドラゴンを並べられているという幸運を噛みしめなければ、生き残った甲斐がないというものだった。


 今回は、もう完全に分厚いステーキで食べる。


 分厚いので中までじっくり火を通し、最後に強火でこんがり焦げ色を付ける作戦でいってみよう。


 フライパンの上で焼き上がったステーキに市販のステーキソースをガッツリかけると周囲からゴクリと喉を鳴らす音が聞こえて来た。


「よし、完成だ……」


「「おおおおおおお!」」


 ピューピュー!


 歓声には皿に盛ったステーキで応えて、いざ実食である。


「ではすべての命に感謝して……いただきます!」


「「いただきます!」」


 僕は魔物食のために様々なスパイスの類も持ってきている。


 それがドラゴンステーキともなれば、試してみたいものは沢山あった。


 何せあのドラゴンだ。更には肉ならいくらでもある。


 お腹も空きすぎるほど空いているし、試したい放題だった。


「ひとまずニンニク醤油のステーキソースはかけてるけど、ワサビもあるよ?」


「WASABI! あの有名なヤツですね!」


 おお、レイナさん食いついてくれるかい。ちょっと海外向けを意識していたから感謝である。


 ただしサプライズであることは否定しないが。


「おいしいよ……僕は柚子胡椒でいってみるかな」


「なんですそれ?」


「南伝来の秘伝のスパイスでござる」


「めちゃくちゃおいしそうじゃないですか!」


 うん。とってもおいしいよ。


 ただし色々試すまでもなく、味について僕は大いに満足していた。


 いや、ドラゴンステーキ本当においしい。


 サシの入ったお肉とは少し違うが、赤身の味が濃く、しっかりとした肉感は決して牛にも劣るモノではない。


 むしろ肉汁には牛肉以上に味にインパクトが存在する。


 濃い肉の味とでも表現すればいいのか、何より力が漲るような濃厚な魔力が一口で僕らに無限の活力をくれそうだった。


 いつしか僕らは満足するまで無言でドラゴン肉ステーキを楽しむと、焚火の前で一息ついていた。


「―――食べた。食べたな。ドラゴンを……うまかったぁ」


「そうでござるなぁ……この満足感はドラゴンスレイヤーの特権でござるなぁ」


「普通は食べたら死んじゃいそうですけどね! 世界中で全部丸ごと味わえる探索者はきっといないです!」


「えぇ? そう? 本物のプロはもっとすごいことしてるんじゃない?」


「かもしれませんけどねぇ……そう言えば、今回はドラゴンを狩りに潜ったんですか?」


 不意にレイナさんに訊ねられて、僕は今回のメインの目的を披露することになった。


「いや、あのアームに持たせる盾の材料を採集しにね」


「盾の材料ですか? ああ、そうか。ドラゴンって財宝をため込んでるから?」


「それと、この先の階層が鉱石の階層なんだよ」


「え! 本当でござるか!」


 桃山君が驚いているのは、鉱石階層がダンジョンの中でも有名な資源であるからだろう。


 鉱石が採掘できる階層が存在するダンジョンは一気に価値が跳ね上がると言われている。


 レイナさんもなるほどと手を叩いた。


「それはすごそうですね……鉱石の階層が上の方だと当たりダンジョンって言われるくらいですから」


「そういう意味じゃ、このダンジョンはやはりハズレでござるな。こんなに深いんじゃ、まともに入ってこられないでござる」


 確かにこんな深い階層まで潜れる探索者は稀だし、採掘できる量はとても資源として期待できるものにはなりそうもない。


 しかし、だからと言って僕らにとって価値がないかというとそんなことはもちろんなかった。


「でもさ。これだけ深いんだから質のいいダンジョン産の鉱石が取れるんじゃないかな?」


 階層が深くなると強力に魔力の影響を受けているのは、何もモンスターだけの話じゃない。


 それはドロップアイテムだったり、鉱石だったりもそうだと聞いたことはあった。


「……確かに。資源として採取は無理でも、拙者達が使う分くらいなら」


「まぁ余裕で手に入りますよねぇ……」


 ああ、仲間達が欲望にまみれた顔をしているよ。


 まぁたぶん僕も似たような顔をしているに違いないけど。


 何なら攻略君を駆使すれば、確実に上質なレア鉱石を手に入れることが出来る。


 ここまでくれば手に入ったも同然だった。


 いや、もうすでにドラゴンの宝物庫であるこの階層を攻略している時点で鉱石ならすでに手に入ったということになるだろう。


 そしてきっと、その金属を使えばより強力な装備が作り出せるはずだ。


 ドラゴン戦で攻略した部屋を確認すると、他にも様々なことが出来そうだと想像力を掻き立てられる。


 そして僕達もその例に漏れなかった。


「……まぁ。僕もさっきのドラゴン戦で、ちょっといいアイディアも閃いちゃって、どうしようかなって思うんだけど」


 しかしこの閃きはあまりにも突飛で、正直自分でやってもうまくいく気がしない。


「何を思いついたんですか?」


 もったいぶった僕にレイナさんが尋ねる。


 だから僕は、躊躇してはいるがほぼほぼやってみようと思っている案を口にした。


「いや、資金も十分っぽいし……特殊装備を外注してみようかなって」


 僕は楽しい想像をしてニヤリと笑う。


 まぁこれだけ財宝が手に入れば、どんなイベントだとしても過剰なくらい準備も出来るってことだ。


 特に目立つための演出は、思いつくだけやってみないと正直僕は初心者過ぎて、加減すらわからない。


 後は顧問の先生のスカウトを浦島先輩がうまくやってくれるかにかかっているが……僕は先輩に関してはそんなに心配はしていなかった。

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― 新着の感想 ―
経験も肉も報酬も美味い!! っぱドラゴンよ!
殺しといて全ての命に感謝はないwwwドラゴンからすればふざけるな!感謝するくらいなら殺すな!だろうし。ドラゴンだって主人公たちの糧になるために生きてたわけではない…こともないかそういう物語だし。
こうしてドラゴンは彼らの血となり肉となり、明日への糧となったのである。ちなみに比喩的表現ではないことをここに注記する。ドラゴン、乙。
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