第82話ダンジョンの宝箱は盗られるもの
「うーん……これはまずいな」
1階で作ったばかりの無人即売所の様子を見に行ってみるとアイテムはすっかりなくなっていた。
繁盛するのはいいのだが……残念ながら支払い用に設置していた宝箱の中身も綺麗さっぱりなくなっていたのはいただけない。
「宝箱だからかー……ダンジョンにデザインはあってるかと思ったんだけど。中身取られたかぁ。まぁ……宝箱だもんな、そりゃ盗るかぁ」
気持ちはわかるけど、それはさすがにやめて欲しい。
「ダンジョンという特殊環境が、宝箱からお金を回収することへの抵抗感を弱めているとそう言う事か……やっぱり店員いるかなぁ?」
僕は眉間にしわを寄せて、この事態に頭を悩ませた。
第一候補は自分で店員をやる事。ただ、並べる商品の出所を面と向かって説明しなければならないのは、素直に面倒だ。
理想を言えばワンクッション置きたい。
なら1階層だし、危険も少ないから人を雇うのもありだろうか?
いや、幸いアイテムで懐は温かいが、入り口が学校にある以上は雇う人間もこの学校の人間という事になる。
生徒が僕の話に乗って来るとは思えないし、外部の人間を雇い入れるなんていうのは基本的にまずいことにしかならない。
「……どれもいい考えではなさそうだなぁ」
『いるじゃないか。ちょうどいい店員が』
すると唐突に攻略君は語る。
こういう時、攻略君は前もって攻略を先取りしていた。
そして僕はなんとなく攻略君の意図を理解出来た。
「……まさか、この間の天使の階層は……織り込み済み?」
『必要な攻略情報だったと自負している』
いや、確かにドンピシャハマりそうだけれども……中々そそられるものはあるなぁ。
先日テイムした天使達なら防犯という意味なら無敵である。
なにせ70階クラスのモンスターは伊達ではない。
天使達の聖なる光はやましい心ごと、盗人野郎を焼き尽くすに違いなかった。
「……死人が出るのもアレだから、蘇生薬も常備しておこうか。なに、自家生産だから惜しくもないよね?」
『いやいや、手加減を命じておけばいいんじゃないか? 1階じゃ大した効き目もないしね』
「それはもうやってるけど……咄嗟の荒事なんてうちの天使達がもしケガをしたりしたら大変じゃないか」
『……』
まぁ、試しにやってみよう。
天使が待機出来るように店の増設は授業時間にでもちまちまやれそうだけど、売り場が広がった分の売り物の調達は骨が折れそうだった。
「何か売る物も考えないとなぁ……。売店に置くか迷ってたんだけど一つとっておきのアイディアがあるんだ。……店員がいるなら、説明付きでいけそうな気がする」
『おや? 何か売りたいものがあるのかな? 珍しいじゃないか』
「うん。まぁ見てみてよ。オークションで買ったんだ」
『……オークションで買ったって、何かあったかな?』
「ああ、今出すよ。これが―――」
僕はリュックから、いつかやってみようと温めていたとっておき商品を引っ張り出す。
外側の機体は少し古いものだが、だからこそ味があると自負していた。
プラケースにくっついているガチャガチャ回す取っ手は、コインを入れると動き出す。
カプセルの中身はこだわりのあまり予想外に集めてしまったアレである。
「世界初。精霊封入ガチャガチャです」
『…………!』
あ、攻略君がすごく驚いてる。
こりゃあ珍しく、攻略君の予想を超えることが出来たのかもしれない。
『君って奴は……。正気かな?』
「正気ですが? 悪くなくない?」
ずっと死蔵してるのも、かわいそうじゃない?
それに同級生が死ににくくなるのは悪いことではないのでは?
ここに天使の店員まで加わると、結構な名物スポットになるんじゃないかと密かに目論んでいるけれでも?
ちなみに値段設定は1回500円。低級精霊をモリモリで追加したいところだった。




