第8話本当の確信がそろそろ欲しい
「おわったー……」
『お疲れ様でした! いや、ホントにごめんね? でも強さを求めるなら最短だからここから本当に期待してて欲しい』
「気にするなよ攻略君。僕と君は成し遂げたじゃないか」
1階をひたすらグルグル回る日々も今日で終わりだ。
クラスメイトからはひたすら豚と蟹を狩ってる変な奴と奇異の目で見られ。
一時は豚と蟹を倒す業者になってしまうんじゃないかと思ったが、解放されると思うと感慨深い。
もはや何をやってるのか理解不能だと遠巻きにされるに至っていたが……僕はまだ元気だ。
「しかし、数だけは頑張って倒してるから結構強くなったんじゃないかな? 僕だって」
『…………他の子は、順当に下を目指してるからね。それでも高くてレベル5くらいじゃないかな?』
「あーそれは負けてるわぁ」
考えてみると今まで一回しかレベルが上がった記憶はなかった。残念。
ちなみに僕のレベルは、本日までで2である。
中々レベルというのも上がらないもののようだ。
『いや、でも間違いなく君は強いよ。パラメーター的にはたぶん圧倒してるね。中層でも攻撃力と生命力ならやっていける』
「……そんなことある?」
その辺、疑わしいところなのだが攻略君は断言した。
『あるとも。まぁ楽しみにしているといいよ。次のレベルアップで一番すごいのがドバッと来るから』
「……ドバッとねぇ。まぁ楽しみにしておくよ」
『ああ。そこは保証しよう。ともかく育成はようやくスタートラインに立った。これからは遅れを一気に取り戻せるよ』
「スタートラインかぁ……」
今までの罪悪感から解放されたのか攻略君は上機嫌だ。
僕もそれを楽しみに頑張ったんだから是非ともそうであってほしい。
しかし確かにコツコツ作業に変化があるのは喜ばしいけど、場所移動するなら他にも気になることはある。
「それもまぁ……楽しみにしておくけど、やっぱり一番は……この先の食べられるモンスターかなぁ」
『……えぇーそっちなの』
「そりゃそうでしょ? ようやく楽しみを見いだしてきたところなのに」
『……思わぬ弊害だなぁ。深い階層の方がモンスターはおいしいけどさ』
「本当に? ……流石攻略君。万能だなぁ」
『そうだろー? いや、そこ感動しちゃうのか』
まぁおいしいものは食べたいし? 結構ダンジョングルメにはハマりそうだよ僕。
しかし暢気なことを考えていた僕は、すぐに現実に引き戻された。
なぜならば続いて攻略君の提案する工程は控えめに言って狂気の沙汰だったからだ。
『ではとっておきの攻略情報だ。ダンジョンの地下10階に向かおう』
「……マジか」
攻略君がまず最初に提案したのは割と死への一本道だった。
「本気で言ってる? うちのクラスの優等生が今4階で苦戦してるのに?」
『最短ルートを案内するよ。なに、辿り着きさえすればいいからあっという間だ』
「……」
いきなりとんでもないことを言い始めた攻略君だが、それが彼なりの効率のいいレベル上げのプランニングで、冗談でも何でもないらしい。
僕としては今までとは違う抵抗がある。
いつかこういう日が来ると思っていたが、今こそ見極めが試される時だ。
普通に言う通りやったらまず死ぬ提案だ。
しかし、検証に時間をかけて信頼はしっかり溜まっていた。
……そろそろ本当の確証が欲しいのも確かである。
だから僕は攻略君の提案を受け入れた。
「……よし分かった。じゃあ、行ってみようか朝一番で」
『……言い出した私が言うことじゃないが。君、肝が座りすぎじゃないか?』
「本当に君が言うことじゃないなぁ……でも。悪い話じゃないんだろう?」
『もちろん。後悔はさせないよ』
本当にそう願いたい。僕が欲しい確証は君の情報にどれくらい僕は命を懸けられるのかということだ。
だが確かに入学した時より明らかに強く、自分の中にあふれる力が僕に命のチップを賭けさせた。