第52話お客さんが来た
動画をチェックし、僕はガクリと肩を落とした。
そこにはてんでピンぼけな吹雪の山が映っていて、鳥が起こす風に巻き込まれた後は雪で真っ白な画面のみだった。
後ヤキトリパーティ楽しかったよって感じの映像でフィニッシュである。
「うーん。この間の動画、全然まともに撮れてませんねぇ」
浦島先輩にも見せてみると、先輩はこりゃダメだと肩をすくめていた。
「動いてるだけ大したもんなんだけどねぇ。でもだからこそ欲も出るか。でも戦闘中にベストアングル探れる余裕なんてないし……やっぱ撮影専用のスタッフとか雇わないとダメなんじゃない?」
「興味ある人捜します?……いや、なんかそうだ。勝手に撮影する方法ありましたわ」
「ほーう。ちなみにどうすんの?」
「確か使い魔化とか。……カメラにモンスターを入れます。するとある程度こっちのいう事を聞く、無機物を作れるんですよ」
ちなみに何か物質に入れるなら、不定形のモンスターじゃないといけないとのことだ。
つまりその手のテイマーならより簡単に制作出来るという事になる。
「また面白い事言い出すね。それって桃山君のひょうたんの奴みたいなこと?」
「そうですそうです。まぁちょっと手は加えますけど、精霊を使ってカメラのモンスターを製作出来ます。まぁ精霊じゃなくても、ゴーストやら悪魔やらなんでもいいんですけどね。戦闘はしないんでもっと弱い奴でいいです。問題は50階より下に精霊が住んでる階層があるってことですよね」
「わぉ! そりゃあスリリングだねぇ」
浦島先輩はカラカラと笑うが、僕もそれはそう思う。
「でも、まぁあそこに拠点を作ったってことはやれるんでしょう?」
「……当然ですとも。カメラマン狩り―――行きましょう」
「……カメラの精霊とかいるかな?」
「鳥っぽい奴とかでいいんじゃないですかね? いい感じに飛んでくれればいいんですけど」
「そんなの精霊って言うならみんな飛んでそうじゃない? なんなら……そう、光の精霊とか探してみようよ。絶対ライティングとか調節出来るでしょう? ウィルオーウィスプ的な奴絶対いそうだし」
「……先輩、天才じゃないですか?」
「はっはっはっ。もっと早く気づきなさい」
それはとてもいいアイディアだ。
そうか。中に入れる精霊の特性も考えれば、より相性良く事が運ぶかもしれない。
うまくすればダンジョンの中で自在に動き、明るさを調節できるカメラマンが手に入るのならばやる価値はあった。
パソコンと睨めっこしつつ、浦島先輩との相談もいい感じに纏まってきた頃だった。
部室の扉が勢いよく開け放たれて、彼女はあまりにも突然元気に飛び込んで来た。
「失礼します! ここがサブカル同好会の部室ですか!」
「「!!!」」
めっちゃビックリした。
でも振り返った僕は、単純に怯んだ。
何せ部室に殴りこんできたのが、どう見ても外国人さんだったからだ。
金色の髪に青い目、小麦色の肌とくると……どのあたりの人なんだろう?
僕が小さいからか、それとも向こうが大きいからか、体格も日本人離れして見えて、ちょっとおっかない。
思わず人見知りフィールドを発生させそうになったが、ニッコニコの彼女は僕らにすかさず詰め寄って、完璧な日本語で話しかけて来た。
「サブカル同好会って……ゲームとかアニメとか好きな人の集まりで合ってますか?」
そしてその内容が、ものすごく僕達の琴線に触れるものだったから、張りかけのフィールドは秒速で溶けた。
「その通りです」
「アニメ、ゲーム、漫画、その他もろもろ様々な楽しみ方をこよなく愛する者達の同好会ですよ? ワタヌキ後輩! オタクシフトだ!」
「了解です!」
僕はすぐさまカモフラージュを解いて棚の布を取り去り、大型テレビを用意した。
そして棚から現れたのは各種様々な漫画小説。
全世代網羅していると謳われる、ゲーム機各種。
そして様々なジャンルが各世代順に並べられた映像媒体の数々。
ダンジョンマネーのすべてを駆使して収集された珠玉のコレクションは文芸部の頃からのもので、実質サブカル同好会の母体だと感じさせるものだった。
それは文芸部から降格の際も、そうそう整理できないと匙を投げられ、なし崩しに所有権を獲得できた、いわくつきの大荷物でもある。
「ワォ……アメージング……」
よしよしそして彼女はこの価値を瞬時に理解出来る同志でありましたか。
歓迎しましょう。ようこそサブカル同好会へ。




